時計は、生活と切り離せない重要なアイテムであり、正確に時を刻むことで、私たちに役立ってくれる。しかし、時計の種類によって正確さが異なるという点も知っておきたい。ここで時刻の基本的な知識や時計の種類、特徴などについて解説する。
時間と時刻についての基礎知識
時計の正確さを語る前提として、時間に関する概念を正確に理解することが大切だ。いわゆる時間は「何時何分」と言われ、"時間"という単語には他の概念も含まれる。そのためここでは「何時何分」に示すことを時刻という。時刻を決めるために用いられるものに、いくつかの標準時がある。その標準となる時間をもとにして、世界各国でそれぞれの時刻が決定される。では世界には、どのような標準時があるのだろうか。
グリニッジ標準時
「グリニッジ標準時(GMT / Greenwich Mean Time)」とは、イギリスのロンドン郊外にあるグリニッジ天文台を通るグリニッジ子午線(経度0度)を基準とした時刻のことだ。
かつてはグリニッジ標準時は国際的な基準時刻として採用されてきたが、これは天体観測から得られたデータを元に定められていたため、現在ではより正確な時刻を求められる「協定世界時」を基準として用いている。協定世界時については後述する。
国際原子時
「原子時(AT)」は、セシウム原子を用いた原子時計に基づく時刻である。
世界各地に原子時計を配置して、そこから集めた原子時を統合し、フランスのパリにある国際度量衡局(こくさいどりょうきょく)が最終的な原子時を定めている。これを「国際原子時(TAI)」という。国際原子時は、1958年1月1日の0時0分0秒から時を刻み始めている。
協定世界時と日本標準時
地球の自転速度にはふらつきがあり、厳密には1日の長さにゆらぎが生じている。その結果、グリニッジ標準時よりも正確な国際原子時であっても多少の誤差が生じるため、調整が必要になる。
生じた誤差を、±0.9秒を超えないように調整した時刻のことを、「協定世界時(UTC)」という。協定世界時は、1972年1月1日の0時0分0秒から運用がスタートした。
協定世界時を頭文字表記にすると言語により差異が生じ、混記する。ゆえに国際電気通信連合が"UTC"と定めている。
一方、「日本標準時(JST / Japan Standard Time)」とは、兵庫県明石市を通る東経135度の経線を基準とした、日本の時間の基準である。協定世界時とは9時間の時差があることから、日本標準時は「UTC+9」と表記されることが多い。
日本標準時は日本放送協会(NHK)などの放送局、NTTの時報に用いられている。
腕時計の主な種類と正確さ
時計には主に、「メカウォッチ」と「クォーツウォッチ」のふたつの種類があり、一般的にはクォーツウォッチの方がメカウォッチよりも時間が正確である。
一方、メカウォッチはクォーツウォッチと比較すると資産価値が高くなる傾向があり、手作業により組み立てられた時計は、とくに愛好家たちに注目される。
ここでは、メカウォッチとクォーツウォッチについて、それぞれの特徴を解説する。
メカウォッチ
メカウォッチは「機械式時計」や「ゼンマイ式時計」とも呼ばれ、巻き上げたゼンマイがほどける力を利用して駆動している。
メカウォッチの特徴として、その精度はゼンマイの巻き上げ状態や時計の傾きだけでなく、周囲の温度や湿度、衝撃などの外的環境に左右されやすい。このため、クォーツウォッチと比較するとやや精度が劣るといわざるを得ない。
ただ、機械による大量生産が可能となったクォーツウォッチとは違い、メカウォッチは、その多くが職人のだ作業ににより生み出される。また使用されるパーツも多く、複雑な機構ともなればその数は膨大になり、その資産価値は遥かに高くなるのだ。
クォーツウォッチ
電池で動くクォーツウォッチが時間の基準としているのは「水晶振動子」だ。これは、メカウォッチの時間の基準である「テンプ」と比べて、先に挙げた外的影響を受けにくい特徴がある。
メカウォッチの時間精度は日差数秒であるのに対し、クォーツウォッチは月差15〜30秒で、明らかにクォーツウォッチの方が時間精度が高い。