機械式液体制御時計を着用してみた/HYT「H0 ゴールド ブルー」

FEATUREWatchTime
2020.10.29

着用すれば気持ちが高ぶること間違いなし

HYTの通常輪列+ふいごという特殊な構成を持つムーブメントは、ケースバックから楽しむことが可能だ。ブリッジの形からもHYTという時計の特異性が見て取れる。

 もちろん、ケースバックを見ると時計愛好家ならば思わず気持ちが高ぶるような機械式ムーブメントがその全貌を誇らかに表している。過去にはWatch Timeで、HYTのムーブメントに採用されている技術をつまびらかに紹介し、それが時計をより魅力的なものとしていることも述べている。HYTのムーブメントはそれだけ語るべき点が多いのである。

 このムーブメントのスペックにも触れておこう。振動数は2万8800振動/時で石数が35石。カーブしたシャープなアングルのブリッジには装飾と手仕上げによる面取りが施されている。

H0 ゴールド ブルー

前衛的な形のブリッジながら、伝統的な高級機よろしく面取りはしっかりと施されている。

 HYTが特許を取得しているマイクロ液体モジュールを動かすふたつのふいごのうちひとつには、「サーマルコンペンセイター」と呼ばれる温度補正器が設けられている。この補正器に封入されている液体によって、チューブ中の液体の温度が変化した際は、その温度変化が及ぼす影響を調整し、時間計測の精度を保つようになっている。

 このような細かな機構が、たった数週間にしか及ばないH0 ゴールド ブルーのインプレッション期間ですらも、素晴らしい役割を担っていることは明らかであった。独特な時間視認の方法に慣れると、自分の予定表にはよくある休暇前の忙しい時期であっても、時計への信頼が色あせることはなかった。

H0 ゴールド ブルー

テスト機には商品に装備されるアリゲーターストラップではなく、ブルーのラバーストラップが付けられていた。ラグジュアリー感がスポイルされる半面、スポーティーさが増すほか、装着感の向上にも期待が持てる。

 心地よく着用するには、H0 ゴールド ブルーのテスト機に装備されていた、ブルーのラバーストラップをお勧めしたい。H0 ゴールド ブルーに標準で取り付けられているマットブルーのアリゲーターストラップよりも、確実にスポーティーなため、ラグジュアリー感は減るかもしれない。しかし一般的なラバーストラップがそうであるように、カラーの遊び心が文字盤のブルーの液体をよく引き立てている。

 そしてまるでケースと一体化されているように見える、4本のネジで留められたストラップは非常に着用感が良いため、全体的な厚みやゴールドケースから来る重量感を軽減してくれる。HYTのロゴがエングレービングされたフォールディングバックルは、おそらくレザーストラップに合わせられたものと同じであろうが、サテン仕上げの18KYGとチタンのコンビとなっており、ブルーのストラップを安全に留めることができる。

H0 ゴールド ブルー

バックルは18KYGとチタンのコンビが採用されている。ヘッドが重いためすべて18KYGとせずに、軽量なチタンを一部に使用したのは正解。

 HYTはH0 ゴールド ブルーを777万円で販売している。使用されているゴールドの重量と独自の時間計測技術を考慮すると、個人的には適切な価格だと思う。既存モデル同様、控えめなタイムピースではないが、どうしてもそうする必要がある場などでは、甘んじてカフの内に納まっていることができるであろう。このモデルは、人の目を引き、注目を集めるが、着用をすればするだけ、中に詰まっている魅力に気付かされるタイムピースである。


Contact info: HYT JAPAN / G&Rジャパン (オフィス麦野) Tel.03-5422-8087