ミステリークロックを腕時計に
ミステリークロック誕生から約100年後となる2013年、カルティエはこの精巧なメカニズムを腕時計サイズに縮小したミステリー機構を開発している。
腕時計のダイアルに浮かぶ針
カルティエは2013年、S.I.H.H.(国際高級時計展/通称ジュネーブサロン)にてミステリークロックのメカニズムを腕時計サイズに凝縮した「ロトンド ドゥ カルティエ ミステリアス アワー スケルトン」を発表した。9時位置にある時分針は表から見ても裏から見ても、完全に宙に浮いているように見える。
またスケルトン仕様とすることで、メカニカルウォッチの魅力を存分に楽しむことができる。ファンならずとも気になるモデルといえよう。
ロトンドに加え、ミステリー機構は「クレ ドゥ カルティエ ミステリアス アワー」にも搭載されており、それぞれに違った魅力を見せている。
ミステリー機構と複雑機構の融合
ケースとリューズ素材にパラジウム950を採用。この素材はプラチナ同様に希少で、プラチナより軽量で変色に強く、硬いという特性を持つ。手巻き(Cal.9462 MC)。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。パラジウム(直径43.5mm、厚さ12mm)。日常生活防水。1224万円(税別)。問/カルティエ カスタマー サービスセンター Tel.0120-301-757
2016年、カルティエはミステリー機構とトゥールビヨン機構を融合させたコンプリケーションモデルを発表する。それが「ロトンド ドゥ カルティエ アストロ ミステリアス」だ。
中央に浮かぶのは脱進機や調速機、香箱(ぜんまいを収納している部品)、そして輪列機構だ。このメカニズムは4枚のサファイアクリスタル製のディスクを使い、1時間に1回転する。機構の素晴らしさ、パーツを絶妙なバランスから生まれた造形の美しさ、そしてつねに違った表情を見せる点もまた魅力となっている。
2017年、このミステリー機構とトゥールビヨン機構を融合させたさらに革新的なメカニズムの開発にも成功している。
トゥールビヨンとは、ガンギ車、アンクル、テンプから構成される調速機構“脱進機”を回転させることにより、時計にかかる重力の影響を小さくする仕組みだ。一般的に、脱進機はケージ(キャリッジ)と呼ばれる小さなカゴの中に収められ、それぞれが支柱で支えられている。
しかし、カルティエが開発した「ロトンド ドゥ カルティエ ミステリアス ダブルトゥールビヨン」では、本来あるべきケージを支える支柱が見えず、ミステリー機構により宙に浮いているかのようだ。
“ダブル”の名前は、1分間に1回転する脱進機と5分間で1回転する脱進機を収めたケージのふたつの回転に由来する。手巻き(Cal.9454 MC)。2万1600振動/時。パワーリザーブ約52時間。Pt(直径45mm、厚さ12.45mm)。日常生活防水。1272万円(税別)。問/カルティエ カスタマー サービスセンター Tel.0120-301-757
そして2020年、「ミステリアス ダブルトゥールビヨン」と、機械式時計の複雑機構最高峰とされる「ミニッツリピーター」機構を融合させた「ロトンド ドゥ カルティエ ミニッツリピーター ミステリアス ダブルトゥールビヨン」を発表している。
カルティエはこのミニッツリピーター機構にも、最新の音響解析技術を駆使した革新的な技術を加えており、これまでにない美しく豊かな響きを実現している。
このモデルでは両面スケルトン仕様とし、精緻を極めたムーブメントとその動作を存分に堪能できる。
またミニッツリピーターとしては画期的な日常生活レベルの防水性を備えたうえ、これだけの機構を搭載しながら、一般的な腕時計よりも薄い11.15mm厚を実現している点にも驚かされる。
トゥールビヨン機構とミニッツリピーターを搭載した超技巧派モデル「ロトンド ドゥ カルティエ ミニッツリピーター ミステリアス ダブル トゥールビヨン」。ミニッツリピーターの音を奏でるゴングとハンマーはダイアル側に装備されているので、その動作をじっくり見ることができる。手巻き(Cal.9407 MC)。2万1600振動/時。パワーリザーブ約84時間。18KPG(直径45mm、厚さ11.15mm)。日常生活防水。世界限定20本。5820万円。問/カルティエ カスタマー サービスセンター Tel.0120-301-757
完全な透明な時計を開発
1993年、ニューシャテル近郊のサン・ブレーズで創業したクインティング ウォッチ。“完全に透明な腕時計”開発に情熱を傾け、5人の技術者により、1500万ドルの投資と7年の開発期間を経て、自社ムーブメント「クインティング テック1」を誕生させている。
このムーブメントを搭載するのが「クインティング ミステリアス・クロノグラフ」だ。11枚のサファイアディスクを積み重ねて構成しており、間隔は最大でも0.1mmという。ムーブメントのパーツは230個から成り、駆動部分はベゼル下にドーナツ状に配置されている。独自構造を持つこのムーブメントは、1995年に特許を取得している。
間近で見てみたいミステリー時計
ミステリークロックは、針が空中に浮きながら動いているような印象を与える時計だ。置き時計は希少性が高く、歴史的な価値を備えた芸術品として扱われている。
2013年にはカルティエによって、腕時計サイズの製品にもミステリー機構が搭載された。ミステリー時計は、腕時計ファンならぜひ一度は間近で見てみたいアイテムだ。
https://www.webchronos.net/features/40278
https://www.webchronos.net/features/37047
https://www.webchronos.net/features/37042