ムーブメントの自社開発と内製化を強力に推し進める現在のスピーク・マリン。2012年の新CEO着任からの約8年で、その成果は着実に根付きつつある。若い感性を持ったコレクター層に向けた「ワン&ツー」のラインナップも増え、来たる2020年に向けたリブランディングの準備も着々と進められている。
鈴木裕之:文 Text by Hiroyuki Suzuki
ブランド初となるトラベルウォッチ。シリンダー調のケースに帝政風のラグを組み合わせた“ニューピカデリーケース”が、スピーク・マリンのアイデンティティを受け継ぐ。自動巻き(Cal.SMA02)。33石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約52時間。Ti(直径42mm、厚さ10.5mm)。3気圧防水。284万円。
2012年に新CEOとしてクリステル・ヌルブレが着任し、ムーブメントの内製化を積極的に推し進めてきたスピーク・マリン。彼女のファミリービジネスであるムーブメントサプライヤーを介した製造内製化が改革の主眼だが、創業者であるピーター・スピーク・マリンが社を去ったことで、いよいよ変革の岐路に立たされているようだ。事実、同社は2020年を目処に大規模なリブランディングを計画中だという。
とはいえ、熱心な時計コレクターとしても知られるヌルブレのこと、スピーク・マリンのアイデンティティとして親しまれてきた、英国調のピカデリーケースやスペードシェイプの時分針はそのまま残されるようだ。改革の主眼はさらなるムーブメント内製化と、新たな顧客ニーズに合わせたラインナップの二極化だ。もちろんハイエンド側には、従来通りのユニークピースやハイコンプリケーションが位置する。
一方、現在のスピーク・マリンが最も注力しているのが、より若い感性を持ったコレクター層への訴求だ。その尖兵となるコレクションが「ワン&ツー」。19年には同社初のトラベルウォッチとして、プチコンプリケーションとも呼ぶべきデュアルタイムを投入している。オープンワークが施された前衛的なムーブメントデザインにもかかわらず機構そのものは堅実だ。9時位置に24時間表示を備え、12時間表示の副時針がリュウズ操作で単独調整可能。スモールセコンドを取り囲むクイックコレクトデイト表示は、レトログラード式とされている。リュウズの2段引きで副時針の単独調整を行うが、リュウズを戻す際にやや時針飛びが起こりやすい傾向があるようだ。ムーブメント内製化を成し遂げた次のステップでは操作感覚のさらなる向上を期待したい。
こちらはより小ぶりな38mmケース。ベゼルからケース側面にかけての凝縮感が、さらに強調されている。8時位置のコレクターは、レトログラードデイトの早送り用。自動巻き(Cal.SMA02)。33石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約52時間。Ti(直径38mm、厚さ10.5mm)。3気圧防水。430万円。