ブルガリの2020年新作
ブルガリがメインに押し出したのは、2018年に発表した「セルペンティ セドゥットゥーリ」のエクステンションである。アイコニックなセルペンティの造形はそのままに、標準的なブレスレットを組み合わせた本作は、2019年の大ヒットとなった。2020年に加わったのはコンビモデルである。また、「オクト フィニッシモ」には、待望のステンレススティール製モデルが追加された。これは、サテン仕上げをやめて、今風の“ラグジュアリースポーツ感”を強調したモデルだ。
セルペンティ セドゥットゥーリ
クォーツ。SS×18KPG(直径33mm、厚さ6.85mm)。30m防水。38 個(最大0.38カラット)のダイヤモンドをセッティングしたモデルは125万円(税別)。ダイヤモンドなしのモデルは84万円(税別)。いずれも2020年9月発売予定。
バネ性を持たせたユニークなブレスレットの代わりに、標準的なネジ留め式のブレスレットを与えられたセドゥットゥーリ。新しいコンビモデルは、相変わらず良く出来たブレスレットを持つ腕時計であった。ブレスレットの左右の遊びは適切で、ヘッドとテールの重さのバランスも良好。少し遊びを持たせてあるのは、女性が使うためだろう。インデックスはおそらくアプリック(接着による固定)だが、面の歪みはなく、立体的な造型を持つ高級時計に相応しいものだった。文字盤はホワイトシルバーオパーリン、つまりはブルガリお得意のポリラッカーである。リュウズにあしらわれているのはピンクルベライト。
セルペンティ セドゥットゥーリ トゥールビヨン
手巻き(Cal.BVL 150)。23石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約40時間。18KWG(直径34mm、厚さ8.90mm)。299 個 (最大2.88カラット)のダイヤモンドをセッティング。30m防水。予価未定。2020年6月発売予定。
新規設計のトゥールビヨンを搭載したモデル。ブルガリ曰く、現行では最小級のトゥールビヨンとのこと。ケースにはパヴェセッティング、文字盤にはスノーセッティングのダイヤモンドがあしらわれている。非常に小ぶりな時計だが、現行品らしくリュウズのガタもよく抑えられているほか、針合わせのトルクも適切であった。ただし、リュウズの形状がクォーツモデルと同じであり、巻き上げるのがやや難しい。この点は要改善だろう。フライングトゥールビヨンのように見えるが、受けは分厚いサファイアクリスタルで支えられている。
オクト フィニッシモ オートマティック サテンポリッシュド スチール
自動巻き(Cal.BVL 138)。36石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約60時間。SS(直径40mm、厚さ5.15mm)。100m防水。129万円(税別)。2020年7月発売予定。
レギュラーモデルとしてはオクト初のステンレススティールモデル。既存モデルの素材を置き換えただけと思いきや、外装はポリッシュとサテンが混在した仕上げに変更された。薄いフィニッシモは、複数の仕上げを混ぜるのが難しいが、ブルガリはよりラグジュアリーな見た目をもたらすべく、部分的にポリッシュを加えた。また、鏡面仕上げだったポリラッカー文字盤も、IWC風のツヤを落としたものに変更された。結果として、ダイヤモンドカットインデックスとのコントラストが強調され、視認性も向上している。素材の変更にもかかわらず、極めて優れた装着感も不変だ。ただし、突起だけで押さえるビルトイン式のバックルは、長期の使用で摩耗しないのかやや疑問が起こる。なお、ねじ込み式リュウズにより、防水性は大幅に向上した。中身を考えると、価格は非常に魅力的だ。
オクト フィニッシモ オートマティック ブラック サンドブラストポリッシュ セラミック
自動巻き(Cal.BVL 138)。36石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約60時間。セラミックス(直径40mm、厚さ5.50mm)。30m防水。167万9000円(税別)。2020年4月発売予定。
2019年に発表されたモデルの仕上げ違い。基本スペックは「オクト フィニッシモ オートマティック セラミック」に同じだが、ケースやブレスレットに強い筋目仕上げが施された。チタンモデルに比べてケース厚がわずかに増えたが、それでも極薄であることに変わりはない。なお、リュウズはねじ込みではないため、防水性能は30mである。前作同様、バックルのプレートはわずかに厚く、セラミックスのベアリングで固定される。個人的にはこのタイプのバックルがステンレススティールモデルに転用されることを期待したい。ブレスレットのエッジはやや立ちすぎているように思えるが許容範囲か。