グッチの〝体重計〟を本気でインプレッション/グッチ「グリップ」

2020.12.12

1970年代風のデザインを持つグッチの「グリップ」。個性の強いグリップをひもといていくと、同作を手掛けるアレッサンドロ・ミケーレの70年代ヴィンテージウォッチへの強い情熱と、深い造詣が見えてくる。

細田雄人(クロノス日本版):文・写真
Text & Photographs by Yuto Hosoda (Chronos-Japan)


グッチ「グリップ」

 スウォッチ グループが撤退し、例年以上に小粒な印象が強かったとの声が多く聞かれた2019年のバーゼルワールドにおいて、ひと際異彩を放っていた時計がある。グッチの「グリップ」だ。1970年代風のデザインは、言うまでもなく同社のクリエイティブディレクターであるアレッサンドロ・ミケーレによるものである。そんな強烈な個性を放つグリップを1週間ほど着用する機会を得たため、今回は簡単ながらインプレッションをしていきたい。

グリップ

グッチ「グリップ」
クォーツ。SS+PVD(直径35mm)。3気圧防水。21万5000円(税別)。


やはり目を引くのは1970年代風デザイン

 グッチのグリップを手に取るのは2019年のバーゼルワールド以来だ。古くからの時計愛好家であれば、この“鉄仮面”デザインに1970年代の空気を感じるかもしれない。しかし当時を知らない者からすると、久々に見たグリップは相変わらず新鮮。鉄仮面というよりも……なんというか健康を意識したくなるような、そんな時計に見えてくる。

 世代によって感じ方が異なるというのは、70年代風デザインを持つ時計の特徴だ。これまで腕時計においてレトロデザインと言えば、機械式時計が幅を利かせていた60年代の時計に範を取ったものが主流だった。対して70年代デザインは、奇抜なカラーやスタイルのものが多く、悪く言えばこれまで“キワモノ”扱いをされることが多かった。

グリップ

グリップのヘッドは文字盤上にサテン、ケース側面にポリッシュと2種類の仕上げを与えている。直径は35mmと小ぶりで、グッチではユニセックスをうたっている。実際、シェアウォッチとしての使用も可能だ。

 しかしトレンドは繰り返されるものだ。筆者を含む、いわゆるミレニアル世代にとって、この時代の洗練され切っていないデザインはむしろ目新しいのである。そして近年のグッチはそんな70年代風デザインを「G-タイムレス」コレクションに与えることで、これまで腕時計を購入してこなかった若者から支持を集めてきた。そんなレトロデザインを得意とするグッチの中でも、グリップは70年代風デザインウォッチの集大成的な存在だ。

 グリップを最も70年代風ウォッチたらしめているのが、ギュブランなどがかつて手掛けていたトラベルウォッチに見られる、時と分が分かれたデジタル式の時刻表示である。12時位置外周部に配された小窓によって時表示を、より文字盤の内側に置かれた小窓によって分表示を行う。さらに6時位置上、ロゴの横にある丸い小窓が日付を表示する。



グリップ

6時位置には日付表示用の丸い小窓を配する。ディスクが奥まったところにあるため、手首の角度によっては若干読み取りづらい時がある。

 グリップのデジタル表示は読み取りに慣れが必要だが、しばらく着用すれば直感的に扱うことができるようになる。時、分、日付用の3枚のディスクを回すのはロンダ製のクォーツ式ムーブメントだ。

 ディスク3枚を駆動させることを考慮すれば、機械式ムーブメントを選択することがベターという考え方もあるかもしれない。しかし、グリップに関してはクォーツ式を採用したことは正解だろう。何よりケースが薄く、そして軽いのだ。