スピードマスターの特徴
「スピードマスター」は機能性、視認性、デザイン面で、通常のクロノグラフとは異なる特徴がある。スピードマスターの魅力をさらに掘り下げて見ていこう。
タキメーター搭載ベゼル
1957年に登場したスピードマスターは、タキメーターをダイアル外周ではなくベゼル上に配した世界初のクロノグラフとしても知られる。
タキメーターは、クロノグラフの計時機能と組み合わせ、時速や単位時間あたりに実行できるタスク数を計測するためのメーターだ。
「1kmを走行する」ことや「1回のタスクを実行する」ことといった任意の単位を設定してタイム測定を行うと、クロノグラフ秒針がタキメーター上に示す数字から「時速120km」や「120回のタスクが繰り返せる」といった情報が読み取れる。
ベゼル上のタキメーターはレーサーやビジネスパーソンにとって有用性が高い一方、メカニカルなデザイン要素としても魅力的だ。
インデックスによる視認性
スピードマスターは初代モデルから純然たるクロノグラフのコレクションであり、プロフェッショナルユースにふさわしい、高い視認性を実現している。
12時間積算計や60分積算計といったインダイアルによって表示要素は多いものの、軍用時計の伝統であるブラックダイアルを基調としているため、光の反射を抑えた良好な視認性を確保している。
インデックスには極力数字を用いず、バーインデックスと刻みの多いミニッツサークルで時刻表示する点も、実用的なクロノグラフに向いた仕様だ。
また、12時位置のバーインデックスの左右にはドットインデックスを配しているが、これはシンプルな表示要素によって、腕時計が傾いていても瞬時に時刻を読み取れるようにするための配慮である。
さまざまなブレスレット素材
スピードマスターは金属製のブレスレットを基本とするが、レーシング仕様のパンチング仕上げのストラップ、またはドレッシーなレザーストラップもラインナップしている。
さらに、豊富なカラーバリエーションの「NATOストラップ」と組み合わせて個性を演出できる点も、オメガの腕時計ならではの魅力だ。
NATOストラップは、第2次世界大戦中の英国軍用腕時計に採用していた引き通し式のストラップを原型とし、数度の規格変更を経てNATO(北大西洋条約機構)の承認を得た、通称「G10 NATOストラップ」の民生用である。
多くのNATOストラップは軽くしなやかなポリアミド製で、長さの調整が自在である上、水洗いもできる。特にスピードマスターは人気の高いモデルなので、人との被りを回避するためにも有用なストラップと言えるだろう。
スピードマスターが選ばれる理由
レーシングモデルとして誕生した「スピードマスター」が、その後、有人宇宙飛行に携行された経歴はあまりに偉大だ。その復刻版と最新のマスター クロノメーターもまた、圧倒的な魅力を携えている。
語り継がれるエピソード
スピードマスターの名声を一躍高めたのは、NASAの有人宇宙飛行に関するエピソードだ。
1969年、NASAのアポロ11号が人類史上初の月面着陸を果たすが、搭乗したニール・アームストロング船長とバズ・オルドリン月着陸船操縦士の2人は、ともに「スピードマスター プロフェッショナル」を携行していた。
また、1970年に有人月飛行を行ったアポロ13号は、打ち上げから2日後に酸素タンクの爆発を起こし、3人の宇宙飛行士たちは電気と水が致命的に不足するという危機的状況に陥った。
宇宙飛行士たちはコンピューターが使えない状況下で地球帰還のための軌道修正を行い、無事に生還を果たしたが、軌道修正するための14秒間のエンジン噴射時間を正確に計測したのが「スピードマスター プロフェッショナル」である。
優れた機能性と伝統的デザイン
スピードマスターは1965年にNASAの公式装備品に採用されて以降、55年に渡ってさまざまな有人宇宙ミッションに携行されてきた。
NASAの求める要件を初めてクリアしたのが市販品だったという事実も、オメガの腕時計の驚くべき性能を示している。
やがて、オメガは1999年に低摩擦の「コーアクシャル脱進機」を開発し、2013年には非磁性の素材を用いて1万5000ガウスもの磁場に耐える技術も確立。
さらに2015年以降は精度だけでなく耐磁性も厳格に検査し、このテストをクリアした腕時計には比類なき高性能の証明として「マスター クロノメーター」の称号を付与するようにした。
プロフェッショナル仕様のムーンウォッチは、微小重力環境でも巻き上げ効率のよい手巻き式を採用し、風防は割れても宇宙船内に飛び散らない強化プラスチック製にするなど、伝統的な設計を踏襲している点も特徴だ。
多彩なラインナップ
スピードマスターは抜群の精度や耐磁性を備え、機能的かつスタイリッシュなデザインも秀逸。そして、歴史や人気が生むステータス性も格別だ。
スピードマスターのラインナップにはスイス高級腕時計の先端をゆく高性能モデルも豊富だが、価格は50万円台から用意されており、いずれのモデルもコストパフォーマンスは高い。
また、売れ筋のエントリーモデルでも、カラフルなNATOストラップと組み合わせることで個性を演出できるのも魅力だ。