海外ジャーナリスト的「上半期に発表された時計」ベスト5 ブルガリ、シャネルなど/エリザベス・ドーア編

2020.09.03

ドーアが大規模国際時計見本市を問う

このまま終わらず時代に相応しいフェアへの変化を望む

 バーゼルワールドは1世紀にわたってグローバルな合流地であり、業界人が集まり、情報交換し、トレンドやニュースについて議論し、その年の新製品の展示だけでなく舞台裏の意見交換の場として、重要な機能を果たし続けてきた時計業界初の毎年の恒例行事であった。

 やがてバーゼルワールドは私が毎年楽しみにしていた非常に貴重で専門的に興味深い時間になった。バーゼルワールドがまったく異なるタイプのイベントへと変化し、年が経つにつれ、市場やクライアント、物流スタイルの現状からかけ離れたものになり、私はフェアの主催者が、ウォッチビジネスに真剣に取り組む者にとってなぜこのフェアが見逃せない機会であったのかを見失いつつあると確信している。

 しかし心からの深い反省をもってすれば、フェアの主催者とバーゼル市および州政府はこのイベントを救い上げ、新しいもの、ことによると我々の住むこの時代にとってより適切で優れているものへと変化させることができるだろう。しかしバーゼルワールドにとって、転換点や過去の過ち、そして業界が必要としていることを認識することは非常に重要である。そう、フェアはまさにこの目的のために必要とされているのだ。私はバーゼルワールドが、とても残念なまま終わってしまわないことを願うばかりである。


選者のプロフィール

エリザベス・ドーア

Elizabeth Doerr/エリザベス・ドーア

オンラインマガジン「Quill & Pad」編集長。2012~18年までFHH(高級時計財団)の文化委員会に参加。「ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ」の19年の審査員でもある。