英国人時計師ジョン・アーノルドの名前を冠した「アーノルド&サン」は、ハイエンドな伝統的時計作りを続けるシチズン傘下のウォッチメーカーだ。今回はこのラ・ショー・ド・フォンに居を構えるブランドが2018年に発表した、巨大な地球儀を搭載する印象的なワールドタイムタイマー「グローブトロッター」をレビューしよう。
アーノルド&サン「グローブトロッター」
グローブトロッターを手首に留めつけるのはソフトなカーフスキンのレザーストラップだ。自動巻き(Cal.A&S6022)。29石。2万8800 振動/時。パワーリザーブ約45時間。SS(直径45mm、厚さ17.2mm)。3気圧防水。178万円。
Text by Mark Bernardo
巨大地球儀が目を引くワールドタイマー
アーノルド&サンが「現代のナビゲーターとなるべきタイムピース」と表現するワールドタイマー、「グローブトロッター」を発表したのは2018年のバーゼルワールドのことだった。そして筆者はこの時計を現地でひと目見て、ぜひ着用レビューを書きたいと思った。今回幸運にもその機会を得たため、ニューヨークシティのオフィスから私を連れ出してくれる海外出張にこのグローブトロッターを連れ出し、同モデルのマルチタイムゾーン機構が素晴らしいものだと言うことを実感したのだった。
アーノルド&サンのグローブトロッターでは、北極点からみた地球を文字盤上で表現して見せた。この地球儀はドーム型のディスクで、文字盤中央に配され、きらりと輝くカーブしたブリッジによって固定されている。だが冒頭で述べたように、この回転する小さな地球は非常に実用的な意味合いも持っているのだ。
外観から始めよう。グローブトロッターは直径45 mmのポリッシュ仕上げのステンレススティール製ケースを採用している。ケースはシャープなファセットを持ち、流れるようになだらかにカーブするラグへと続く。
3時位置の細かい刻みをつけたリュウズは、引き出しやすい玉ねぎ型で、表面にはアーノルド&サンの王冠と錨のブランドロゴがエングレービングされている。6本のネジによって留められているケースバックでは、サファイアクリスタルがムーブメント鑑賞を可能にしている。
非常に薄いスロープになったベゼルは広がりを持った文字盤を囲み、その上にある高いドーム型サファイアクリスタル製風防のためにケース厚が17.23mmと比較的厚みを持たされている。ドーム型風防はご推察のように、文字盤中央にある写実的な地球儀の為に必要だったもので、末端が二股の大きな中央で固定されたブリッジがこの地球儀を軸で吊り下げている。
北極点から見た地球
次にダイアルを見ていこう。外周部分に現れるのはブラックでプリントされたミニッツマーカーだ。そのうち15分と45分部分は例外的にネジが配され、センターのブリッジを固定している。ミニッツマーカーの内側はオパーリンのディスクにブラックでローマンインデックスが配されている。
そしてその内側には最も目を引く、巨大な地球儀が鎮座しているのだ。この半球儀はアーノルド&サンによると、大陸部分がエッチング、海部分が3層にわたるハンドラッカーによって表現されている。その後地球儀全体にクリアラッカーを施し、最後にポリッシュ仕上げを掛けるのだ。
地球儀の外周にあるのは1から24の数字がついたサファイアクリスタル製ディスクで、これと地球儀を組み合わせることで各国の時刻を大まかに知ることができる。
このセンター表示の下に差し込まれているのが時分針だ。コントラストの効いた青焼きのスティールに、レッドのラッカーを流し込むことで作られたふたつの針は、ホワイトの文字盤と地球儀のブルーと対比を成している。
地球儀の北極点からの眺めを阻害しないように地球儀の下から覗くこれらの針は、それぞれが(控えめにではあるが)長さによって見分けられるようになっている。時針は少し幅が広く短くなっており、ローマンインデックスの下半分をなめるように運針する。一方、分針は細く、長くなっており、ミニッツトラックの縁にかかるようになっている。
信じるかどうかは別として、この独特で控えめなローカルタイム表示の読み取りにすぐ慣れたとしても、この時計を使う上で不可能なことがある。例えば、針がセンターのブリッジを横切る、3時、15分、または9時、45分などの時間表示である。見る角度によって、3時45分や9時15分は完全に文字盤から消失してしまうのである。そして秒針がなく、さらに時分針にもインデックスにも蓄光塗料が塗布されていないため、アーノルド&サンはこのタイムピースを常に正確な時間を知る必要がある人に向けて設計していないのは明らかである。