コレクション初のインターチェンジャブルストラップ
今作で改良が加えられたのは、ケースだけではない。MT-Gコレクションで初めてとなる、インターチェンジャブル機構を採用した。これにより、ラバーストラップとステンレススティール製のブレスレット、どちらにも付け替えが可能となっている。従来のモデルでは、メタルパーツとボルトでストラップの接続部分を固定して強度を確保していた。そのため付け替えを容易に行えるインターチェンジャブル機構を搭載するのは、不可能だったのである。
しかし前作のMTG-B1000では、ストラップとブレスレットを付け替えたいという要望が多く寄せられたという。その要望に答えたいと、今回ケース構造の刷新とともにインターチェンジャブル機構の搭載に踏み切った。簡単に取り外し、取り付けができ、それでいて落下時の衝撃にも耐えうるよう、バネ棒は約2mmと通常の時計よりも太く設計されている。
ストラップの着脱はケース裏のスライドレバーで行う。接続部分の強度を得るため、マイナスドライバーを使って付け替えを行うという案も出されたが、最終的には簡単かつ作業のしやすいスライドレバー方式が選ばれた。また、これまでのインターチェンジャブル仕様モデルに多かった片側のみのスライドレバーでは、どうしても接続部分にがたつきが出てしまっていた。それではハイエンドラインにふさわしくないと、今作はスライドレバーを両側につけることでがたつきを最小限に抑えている。
がたつきを抑えるためのダブルスライドレバーだが、指で両方同時に操作するのは難しい。そこでブレスレットの付け替えでも邪魔にならない、手の中に収まるサイズのピンセットが作られた。G-SHOCKのデザイナーがデザインした専用のピンセットは、単体で販売されるブレスレットに付属する。
改良した「レイヤーコンポジットバンド」で軽量化を実現
ステンレススティールと異素材の融合をコンセプトに掲げるMT-Gコレクションの特徴のひとつが、ステンレススティールブレスレットの裏側に樹脂製のパネルを取り付けた「レイヤーコンポジットバンド」だ。初代のMTG-S1000から採用されており、メタルブレスレットにありがちな装着時の冷たい感触が軽減される。今作では、ブレスレットのコマを鍛造からMIM(金属粉末射出成形)に変更。中空にすることで従来から約15%の軽量化を実現した。
MIMとは、金属の粉末とバインダー(プラスティックとワックスを合わせたもの)を混ぜ合わせたペレットを金型に射出、成形されたパーツを加熱・焼成することでバインダーを取り除き、金属の部品を製作する部品製造方法。自由度の高い成形が可能なことが特色だが、以前のMIMはそこまで精度の高いものではなかった。そのためカシオでは一旦使用を停止していたという。近年精度と品質が向上したことから、今回MIMでの部品製造に踏み切った。鍛造に比べエッジを出しやすいことから、外装のメタル感向上にもひと役買うこととなった。なお現在、MIMでブレスレットのコマを製造しているG-SHOCKは、MTG-B2000のみである。
スマートフォンと接続してさらなる利便性を追求
モジュールにも随所に改良が加えられている。2015年のオシアナス「OCW-G1100」で採用された「デュアルコイルモーター」を搭載。このデュアルコイルモーターは、インダイアルの針の動きに緩急をつけるために開発された、従来より高速で回転するモーターだ。OCW-G1100では針の高速回転と低速回転の差を大きくすることで、緩急の表現を可能とした。従来のシングルコイルモーターでは針が逆転(反時計回りに回転)する際、正転(時計回りに回転)の3分の1程度の速度しか出せなかった。しかしデュアルコイルモーターの搭載により、逆転でも正転と同じ速度で針を動かせるようになったのだ。
この改良は、前作からの機能である「スマートフォンリンク」に大きく影響する。スマートフォンリンクとは、Bluetoothでスマートフォンと接続し専用アプリ「G-SHOCK CONNECTED」を使用して、時計本体のボタンを操作せず時刻を修正できる機能のこと。ホームタイムとワールドタイムの入れ替えも、アプリで行うことができる。デュアルコイルモーターを搭載することで、スマートフォンリンクによる時刻補正がストレスフリーに行えるのだ。
なおスマートフォンリンク機能も進化を遂げている。以前は作業ごとに一回一回接続が切れてしまっていたが、今作では可能な限り時計とスマートフォンの接続が持続するよう、システムが変更された。例えば飛行機に乗って異なるタイムゾーンへ移動した場合、スマートフォンの機内モードを解除すれば、時計とスマートフォンが自動で接続して現在地の情報をもとに時刻が修正される。タイムゾーンやサマータイムルールに変更が生じた際の更新や、時刻補正の回数やソーラー発電量といったステータスの集計も自動で行われる。記録されたデータはアプリから確認することも可能だ。時計の充電残量が少ない時には、スマートフォンにアラートが表示される便利な機能もついている。
新たな選択肢を提示するG-SHOCK
MTG-B2000で目指したのは、より“機械式時計”らしいG-SHOCKを作り出すことだったという。「これまでG-SHOCKの購買層ではなかった、機械式時計好きの方にも手にとってもらいたい。第2、第3の選択肢として提示できるようなモデルを作りたかったんです」。
牛山氏は続けてこう語る。「限界に挑んでいくのがG-SHOCKです。新しいモデルを出す以上、それは前作より進化していなければなりません。私たちは前進し続ける必要があるのです」。
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