ツールウォッチとしての作り込みが光る“カシオーク”ことG-SHOCK「GA-2110ET-8AJF」/気ままにインプレッション

2020.12.20

優れた装着感を実現するラグ付近の細やかな配慮

 装着感に関わる部分について、初代G-SHOCKの直系モデルであるDW-5600と比較した際、明らかに優れていると言えるのはストラップのラグ付近の可動域(角度)だ。DW-5600ではラグ付近のストラップ裏にリブがあり、ケースバックに対して開いてしまう。

DW-5600

5000シリーズの直系モデルであるDW-5600。ラグ部分が膨らんでいるのが見える。装着感は決して悪くないが、GA-2110を着けた後だと袖との干渉を感じる。

 対して、GA-2110はケースバックとストラップが直角に近い角度まで曲がる。これにより、ラグが短いのと同等の効果が得られて腕への密着度が上がった。DW-5600で気になっていた、ケース縦方向の長さの割にラグ付近が浮いてしまう現象を改善している。GA-2100シリーズの装着感が良いのは、薄型化よりもむしろ、この部分の改良によるところが大きいのではないか。地道な改良であるが大きな進化である。装着感の良さに軽量さが相まって軽快そのものだ。

 腕の細い友人に試してもらったところ、時計およびストラップの腕への密着度が高く、ヘッドがあるべき場所に収まっていた。これは、DW-5600よりストラップがわずかに薄く、柔らかく仕立てられた点も関係している。

GA-2110,カシオーク

GA-2110なら、袖口幅が広く、芯の柔らかなカジュアルシャツならば袖口に収まってしまうほどだ。色味も相まってジャケットスタイルとの相性も悪くない。

 尾錠はケースと同系色の樹脂製である。個人的に金属製の方が耐久性の観点から好ましいと考えるが、G-SHOCKブランドを冠しているのだから耐久性には問題ないのだろう。

 全体を通して気になる点は、太い針が液晶付近にある場合はストップウォッチなどの各種表示が見えなくなってしまうことぐらいだ。しかしこれにも対策が打たれていて、針が液晶画面を隠している時に、液晶の情報が必要な場合は針が邪魔にならない位置に移動させる針退避機能(「LIGHT」と「MODE」を同時押しする)が備わっている。

 ただ、少し手間を感じるのも事実である。液晶表示を必要とする機能を多用する人は他の選択肢も視野に入れた方が良さそうだ。なお、針退避機能は液晶画面状に針がある時にだけ機能し、ボタン同時押しの際には「LIGHT」を押してから「MODE」を押す方が有効化しやすかった。

GA-2110,カシオーク

少しだけ青味のあるグレーで、色の抜けたフォリッジグリーンを想起させる。カジュアルからミリタリーテイストまで対応範囲の広い、使いやすいカラーだ。


ツールウォッチとして必要な要件はほぼ満たしている

 筆者は良い時計とはどういうものだろうか? と考えることが多い。これは単一の物差しでは測れないものであり、満たすべき要件はジャンルによって変わるべきだ。ここで今、ツールウォッチに必要な要件“のみ”を抽出して冷酷な星取表を作ったならば、GA-2100やG-SHOCKに並ぶものを探すことは難しいかもしれない。

 しかもツールウォッチとしてこれだけ優れた時計が、1万5000円程度で購入できてしまうのである。文字盤のディティールの良さも含めて、カシオにしか作れない時計であると言って良いだろう。GA-2100シリーズは長く支持される定番に成長していくのは間違いない。手元のGA-2110が「良い時計とはかくあるべし」という信念を語っているような気がしてならない。

 と、非常に好印象だったGA-2110だが、最後に1点だけ。冒頭でカシオークというニックネームは「双方に敬意が欠けている」と偉そうな事を言っておきながら、型番だけでは読者にどのモデルか伝わりにくいため、記事タイトルやリードにあえてカシオークという表現を使用させていただいた。カシオさん、公式で良いペットネーム付けませんか?


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