『クロノス日本版』編集長の広田雅将と副編集長の鈴木幸也、ほそやんこと細田雄人の3人が、話題のモデルのインプレッションを語り合う鼎談連載。第5回は、2020年に刷新されたA.ランゲ&ゾーネ「ランゲ1・タイムゾーン」を好き勝手に論評する。
「ランゲ1」のレイアウトはそのままに、5時位置のインダイアルを第2時間帯表示としたワールドタイマーで、8時位置のプッシャーで都市リングを送る。10時位置のプッシャーで日送りをするのは他モデルと同様。手巻き(Cal.L141.1)。38石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。18KPGケース(直径41.9mm、厚さ10.9mm)。643万5000円(税込み)。
Photographs by Masanori Yoshie
阿形美子:文
Text by Yoshiko Agata
2021年4月4日公開記事
15年を経てフルリニューアルした「ランゲ1・タイムゾーン」
細田「今回は、2005年に発売されたランゲ1・タイムゾーンの後継機です! ダイアルのレイアウトが微妙に変更されていて、一番顕著なのは、5時位置の矢印にサマータイム表示がついたことかと。サマータイム採用地域であることを矢印が赤くなって知らせてくれるため、適応時期の場合は自分で1時間計算して時刻を読みます。写真だとシドニーの現在時刻が午前2時51分、サマータイム時期であれば午前3時51分ですね」
鈴木「あと、昼夜表示が変わった。以前はダイアル脇にあったのが、センターに一体化した。個人的には旧モデルの方がパッと見わかりやすいかななんて思うけど、でも新しい方が整然とした印象だね」
鈴木「それと、8時位置プッシャーがすごく重くて驚いた! ガチッ、ガチッ、っていう手応えでね」
広田「この重さは着用時の誤操作を起こさないための工夫でしょう。普通の都市リングはプッシャーを押した時に表示が変わるけど、これは押してプッシャーが戻ったときに変わる」
細田「なるほど。一方で、10時位置のカレンダーのプッシャーは押した瞬間にシャキシャキっと変わって、この感触は気持ち良い。カレンダーの方が触る頻度が多いから感触を分けているんですね」
新規開発されたムーブメントCal.141.1は好感触
鈴木「それから、絶対話さなきゃいけないのは、新規開発のムーブメントCal.L141.1のこと!」
広田「そうそう。最初はグランド・ランゲ1に搭載しているCal.L095.1の改良版かと思ったけど、全く新しいもの。2015年にランゲ1のムーブメントがL121.1に刷新された時に、『秀逸だけど拡張性がないから複雑系を載せられないんじゃないか』と聞いたら『策はある』といっていたのはコレのことだったんだな、と。全く新しいものを作ってくるとは予想外だったなぁ。しかも出来が良い」
鈴木「わざわざ手を入れた意味をちゃんと感じられますよね。それと、携帯精度も良い。マイナス傾向だけど、24時間で−5秒、48時間でも−1ケタ秒代。しかも、秒針の止まり方を確認したくて止まるまでそのままにしておいたら、フル巻きで91時間まで動いていました」
広田「おお! ランゲ1だと秒針が0位置で止まる仕様になってますからね。どうでした?」
鈴木「残念ながら普通に止まってました」
広田「うーん、まぁ針を強制的に止めるのは大変だから、今回はやらなかったんでしょう。それと一点惜しいと思ったのは、フルで巻き上げる時に巻き上げ回数がめちゃ多くなること」
鈴木「確かに、巻き上げるのキツかったですね(笑)。リュウズも小さめだから指が疲れるし」
広田「設計上、丸穴車を小さくしているから、巻く回数が増えるのは仕方ないんですよねぇ。リュウズを巻くのが好きな人にとってはうれしいと思いますけど。でもね、複数のギアが噛んでいるのに針合わせの感触は滑らかですごく良いのよ。これは金かかってる」
細田「新規ムーブメントはケースのサイズにビタッと詰めてきてますけど、それって感触にも関係するんですか?」
鈴木「巻き芯が長くなると不安定になるから、無駄な隙間がないことは関係していると思う」
細田「ムーブメントの詰まり具合にうるさいマニアも納得の出来ってことですね」