新しいエクスプローラーは、ケースサイズ36mm!
2010年に発表されたエクスプローラー(214270)は、重さと頑強さ、質感と装着感のギリギリを攻めた時計だった。114270の軽快な装着感は失われたが、プロフェッショナルモデルに相応しい頑強さを歓迎した人は少なくなかった。また、前作よりも重くなったブレスレットは、結果として、ヘッドとの良好なバランスを保つことになった。仮に、これ以上時計が大きかったならば、時計としてのバランスは崩れただろう。
加えて2006年頃のマイナーチェンジにより、214270は魅力を増した。長針が長くなり、アラビックインデックスにも夜光塗料のクロマライトを施すことで、より実用時計らしくなったのである。筆者の知る限り、すべてのインデックスが光るエクスプローラーは、1016以降初ではないか。
214270の良さを受け継ぎつつも、ケースを36mmに縮小したのが、2021年の124270である。そのたたずまいは、ミニ214270というよりも、114270の進化版と呼んだ方がよさそうだ。変更点は以下の通り。
・ケースサイズが36mmに縮小
・ムーブメントが3130から3230に進化
・クロマライトが改良
冒頭から述べてきたとおり、最大の変化はケースサイズだ。2000年以降、ケースを拡大することにより、ロレックスは頑強さと視認性を高めてきた。しかし、重くなりがちなケース構造を考えると、サイズの拡大には自ずと限界がある。対して124270は、あえてケースを縮小することで、相対的に軽い着け心地を取り戻したのである。14270や114270のような「ヒラヒラ感」には乏しいものの、高級時計らしい重厚さと軽快な装着感の両立は、今のロレックスにしかなしえないものだろう。
時針・秒針の長さもちょうど良い
個人的に歓迎したいのは、時針と秒針の改良である。発表当初の214270は秒針こそインデックスに届いていたが、時針は明らかに寸足らずだった。マイナーチェンジで時針と秒針は伸ばされたものの、結果として、長くなり過ぎた。これだけ長い針をきちんと動かす3100系というムーブメントには感心させられたが、インデックスから飛び出るほど針が長いと、ツールウォッチ感がなくなってしまう。
見た限りでいうと、214270の時針と秒針は、インデックスを超えない長さに揃えられた。このバランスは114270にまったく同じ。針にうるさい時計好きも、本作の針は許容するのではないか。また、「EXPLORER」のロゴも、114270同様、6時位置から12時位置に戻された。
パワーリザーブの延びたCal.3230
キャリバー3230の搭載により、性能も向上した。最も分かりやすい違いはパワーリザーブ。3100系の約48時間に対して、3200系は約70時間に延びた。香箱を薄くして長い主ゼンマイを詰めるという手法は、他社にも見られるもの。加えて巻き上げ効率の改善を図ったのは、いかにもロレックスだ。ローターは抵抗の少ないボールベアリング保持となり(ようやくの改良だ)、自動巻き機構に使われるリバーサーも、慣性を下げるためか大胆に肉抜きされた。
リバーサーは軽くするほど効率が上がる反面、摩耗しやすいといわれている。リバーサーで経験を積んだロレックスは、いよいよ高い耐久性と低い慣性の両立に成功したようだ。実際にテストした訳ではないが、3100系同様、巻き上げ効率は優れているに違いない。
知られざる改良点が、夜光塗料のクロマライト ルミネッセンスである。ロレックスの説明によると、新しいエクスプローラーとエクスプローラー IIには、さらに改良されたクロマライトを採用したとのこと。詳細なスペックは不明だが、以前に比べて残光時間が長くなっているようだ。また、針やインデックスの「縁」を絞ることで、針やインデックスに充填されるクロマライトの体積は明らかに増えた。
外装もわずかに変更された。新しいロレックスの常で、前作の214270は張り出した太いラグを持っていた。対して124270のラグは、114270ほどではないが、側面が絞られた。こういったモディファイは、2020年に発表された「サブマリーナー」に同じ。2000年以降ケースを太らせてきたロレックスは、スリムさを考えるようになった、と言えそうだ。
文句なしに優れた時計だが……
さて結論である。114270に熱狂してきた筆者にとって、124270は「神機」になり得る存在だ。堅牢でコンパクトなケースに加えて、高精度なムーブメントと際だった視認性。加えて、価格も3万円も安いのである。じゃあめでたしめでたしとならないのが、ロレックスの困った点だ。優れた時計なのは間違いないが、手に入れるのは極めて難しいだろう。どうせ買えないからいいんだけどさぁ。。。
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