ナノ加工技術が裏打ちする、強く華やかなディテールの説得力
甲冑は強さを示す一方で、特に江戸時代以降は見た目の豪華さも重視された武具である。“勝色”モデルではこうした甲冑の作り込みに倣い、さらには山形カシオで製造される──いわば“ジャパンメイド”の価値を前面に押し出すべく、前作の“赤備え”以上に和のモチーフを取り入れて、華やかさも感じられるモデルに仕上げている。
まず目に留まるのが、代表的な和柄のひとつである“鱗紋(うろこもん)”を施したダイアル。“勝色”モデルでは三角形を連ねたこのパターンをプリントで表現しているが、濃淡を付けることで立体的かつ奥行きを感じさせる仕上がりに。その外周には扇/屏風を彷彿とさせるカット面を施してダイアルにコントラストを設け、さらにインデックスには刀の反りをイメージした、上面が緩やかなカーブを描く独特の形状を取り入れている。
(右上)7-8時位置のインダイアル外周には勝色が施され、ゴールドと組み合わせることで時計に力強いアクセントを添えている。
(左下)刀の反りをイメージした緩やかなカーブを描くインデックス。素材は樹脂だが、挽き目加工やエッジを強調するために山形カシオのナノ加工技術が使われ、金属のような質感を実現した。
(右下)ダイアル外周には扇や屏風をモチーフとしたパターンを施しており、こちらの成型にもナノ加工技術が使われたという。
これらの強くて華やかなディテールを生み出すために不可欠だったのが、山形カシオの有するナノ加工技術だ。“勝色”モデルでは、万が一時計が落下した際の衝撃で文字盤に取り付けたインデックスが脱落しないよう、樹脂製のインデックスを採用している。だが、一般的な成型で使われる金型ではこのインデックスの金属のようなシャープなエッジは出せないという。
※写真はMR-Gの金型ではありません。
そこでカシオは、まずナノ加工技術の微細な切削加工を使用してマスターモデルを製作。インデックス表面カーブ形状の稜線のエッジ感と美しい鏡面、ダイアルの扇状カット面が放つ光沢と微細な形状は、ナノ加工技術なくしては完成し得なかったという。さらにこのマスターモデルにメッキのように金属を積層させる電鋳技術を用いて金型を製作し、マスターモデルが表現していたシャープな形状を正確に写し取れるようにしたことで、ダイアルやインデックスの高い質感を実現した。
(下段)フォールディングバックルにはロック機構が備わり、矢印方向にスライドさせることで万が一の脱落を防止する。
一方では前作から踏襲した機能もあり、なかでも特徴的なのがリュウズとプッシュボタンに採用されたクラッドガード構造だ。MR-Gは外装を金属にしているので、ムーブメントも落下時衝撃に耐えられるようになっているが、唯一リュウズは内部と直結しているので、ここに外圧が加わってしまうとムーブメントが破損する可能性は高い。そこで、リュウズユニットの内部にαGELをセットし、その上にリュウズカバーを被せる構造にすることで外側からの衝撃を緩和。プッシュボタンにも外側にカバーを付けて直に衝撃が加わらないようにするなど、万全の耐衝撃構造を付与している。
“赤備え”モデルから引き続き採用されたのが、リュウズとプッシュボタンのクラッドガード構造。リュウズユニットにαGELとリュウズカバーを装備することで外部からの衝撃を緩和するとともに、プッシュボタンにもカバーを被せて衝撃が内部に伝わらないようにしている。
タフネス=甲冑の基本コンセプトを追求し、優れた耐衝撃性と耐傷性、さらには強靭なルックスをも実現した「MRG-B2000B」だが、このモデルにさらなる魅力を与えたのは、甲冑から導き出された“勝色”のデザインコンセプトである。単純に青を加えて見た目のアクセントとするのではなく、その色にテーマを持たせることで、色以外のディテールや性能にもストーリーが感じられるようにした。企画を担当した石坂真吾氏は次のように話す。「なぜその色を使うのか。色の意味を作り込むほどに時計は深みを増し、結果的に時計の価値=魅力が高められる」。
かつて多くの武士に好まれ、彼らを鼓舞した“勝色”。それはまさにG-SHOCKの最高峰であるMR-Gにふさわしい色合いであり、「MRG-B2000B」が持つ性能をより引き立たせる重要なエレメントである。
文字盤に和のモチーフを施した「MRG-B2000」をベースモデルに、ダイアルとその外周には新たに鱗紋と扇/屏風をイメージしたパターンを取り入れることで和の雰囲気を強調。ケース、バンドともに深層硬化処理+DLC処理を施したチタンを採用。勝色、金色との組み合わせで力強いルックスに仕上げている。タフソーラー。フル充電時約26カ月(パワーセーブ時)。Tiケース(縦54.7×横49.8mm)。20気圧防水。33万円。
手首に収まりやすいケースサイズが特徴の「MRG-B1000」をベースに、左のモデルよりもシンプルなダイアルデザインにすることで、より日常で着けやすいルックスに。もちろん、ロゴやベゼル内側、9時位置のインダイアル外周には勝色を用いており、同シリーズならではの精悍な表情も堪能できる。タフソーラー。フル充電時約18カ月(パワーセーブ時)。Tiケース(縦52.2×横46.2mm)。20気圧防水。30万8000円。
https://gshock.casio.com/jp/products/mr-g/mrg-b2000b-1a/
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