洗練度を上げたApple Watch series 7が次のステップへの準備

変化する佇まい

 Apple Watch series 7の従来機との違いを”ディスプレイの大きさしか”違いがないと考えるのは、少しばかり早計だと思う。いわゆるコンピュータとしてのスペックで言えば、CPUやGPUは同じでディスプレイだけ良くなったということだが、腕時計というスタイルの商品にとって情報を表示する窓は重要だ。

 ほぼ限界まで表示エリアが広げられたことで、風防がラウンドした領域にまで有効表示領域が広がっている。そしてラウンドした部分にまで表示領域が広がっていることで、レンズ効果によってこれまでとは違う見え味になっているからだ。

Apple Watch Series 7

左からSeries 7(直径45mm)、先代のSeries 6(直径44mm)、そして並行して販売されるSeries 3(直径42mm)。それぞれのケースサイズ差以上にディスプレイ面積が拡大していることがよく分かる。

 新しいApple Watch series 7向けのウォッチフェイスは、このラウンドした部分をうまく使ってインデックスを立体的に見せるなどの工夫がなされている。より大きな表示領域と、ラウンドした風防の光学特性を生かしたウォッチフェイスが織りなす佇まいは、とかく平面的になりがちだったスマートウォッチの盤面表示に新たな表現の方法をもたらすだろう。

 新しいスタート地点として、ここでApple Watchのベースラインを定義づけていこうということだ。この極大化されたディスプレイと、それがもたらす高級感は、今後の(おそらくは)3年を過ごすにふさわしいものになりそうだ。

 さらに今回のディスプレイでは風防の端から端までディスプレイを配置しているため、ラウンドした形状そのもの(+α)が風防の厚みになっている。実に従来モデルの2倍であり、これによってタフネスまで備えることとなった。

Apple Watch Series 7

 ただし、装飾品としての腕時計に近づこうと、その佇まいを洗練させている一方で、”やりすぎ”てはいない。これもコンピュータメーカーをオリジンとするアップルが、わきまえているところだと感じた。


所有感と買い替えサイクルのバランスの中で

 Apple Watchといえども電子機器である。そして小型電子機器の宿命として、内蔵するバッテリーや採用する電子部品にはメンテナンスだけではカバーしきれない、ライフタイムの限界がある。

 それ故に、過度に装飾品としては仕上げようとしていない。新たな挑戦となった初代モデルこそ18金ケースを採用したEditionモデルが用意されたが、その後、散発的にセラミックケースが用意されたものの、主力モデルはアルミとステンレス。そしてseries 6でチタン合金が追加された。

初代Apple Watch

初代Apple Watchにラインナップされた18KYGケースを持つEditionモデル。以降のシリーズにもEditionモデルは用意されるが、ゴールドケースは最初のみだった。

 ニーズを見据えながらケース素材を慎重に選んではいるが、本体の進化ロードマップとその進化速度に合わせ、所有感と買い替えサイクル(を意識したコスト感覚)のペースがアップル自身も掴めてきたのかもしれない。

 近年、Apple Watchは利便性に加えて”命と健康を守る”ことを主眼にユースケースをまとめ、センサーの追加やソフトウェア開発にフィードバックするというアプローチをとってきた。おそらく、来年になれば、この新しい外観に新しいセンサーによる新機能が追加されるのかもしれない。

 しかし、スマートフォンに集まる情報を素早く知る。使いこなす。その部分にもっとも大きな価値を感じているのであれば、series 7と新たな3年間を過ごすのも悪くない話だろう。

本田雅一
本田雅一(ほんだ・まさかず)
テクノロジージャーナリスト、オーディオ・ビジュアル評論家、商品企画・開発コンサルタント。1990年代初頭よりパソコン、IT、ネットワークサービスなどへの評論やコラムなどを執筆。現在はメーカーなどのアドバイザーを務めるほか、オーディオ・ビジュアル評論家としても活躍する。主な執筆先には、東洋経済オンラインなど。


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