ロレックスは、それと同じではないか。複雑機構や、復刻モデルや、バリエーションなど、いろいろあると、わかりづらい。わかりづらいのは、マニアにはうれしいが、ステータスシンボルとしての力は半減する。モデルを増やしすぎたいまのベンツが、かつてほどの威光を感じさせないのは、そういうことだ。
だからロレックスは複雑機構や、復刻モデルや、バリエーションをつくらない。そうしてシンプルに徹しているから、時計のことをよく知らないひとでも、ひと目で「ロレックスだ」とわかる。そこが最高のステータスシンボルになっている。そうなのではないか。
さて、ロレックスでシンプルといえば、モデル名がまさにそうだ。ロレックスのモデル名は「デイトジャスト」「デイデイト」をはじめ「エクスプローラー/EXPLORER」=「探検家」、「サブマリーナー/SUBMARINER」→「Submarine」=「潜水艦」、「デイトナ/DAYTONA」=デイトナ・インターナショナル・スピードウェイのこと、「シードゥエラー/SEA-DWELLER」→「Sea Dweller」=「海の住人」など、どれも驚くほど単純明快。徹底してシンプルだ。
で、これもおそらくは、同じなのだろう。「デイトジャスト」とか、「サブマリーナー」とか、そういうシンプルな名前だから、誰もが記憶ができる。誰もが記憶できて、誰もが「ロレックスだ」とわかるから、最高のステータスシンボルになる。複雑でわかりづらかったり、長くて覚えられなかったり、そういう名前では意味がないのだ。
と、まぁ、ロレックスは、機構も、デザインも、モデル名も、すべてがシンプルに徹している。そしてそんなブランドは、かつてのメルセデス・ベンツを除いたら、ほかにはまずない。
ちなみに、なぜベンツがそうではなくなったのかは、また別の話。複雑な事情なので、いつか機会があったらお話ししたい。
とまれ、ロレックスのシンプルさには誰も追いつけない。ロレックスはシンプルさに本当の凄さがある。それが、ロレックスが世界中を魅了し続けている大きな理由。ロレックスの最大の魅力なのだろう。
ライター、編集者。『LEON』『MADURO』などで男のライフスタイル全般について執筆。webマガジン『FORZA STYLE』にて時計連載や動画出演など多数。
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