カシオ「オシアナス マンタ」の新挑戦。蓄積された技術がもたらした"輝き"

FEATUREその他
2021.12.17

最新マンタのディテールに見る正統進化

「OCW-S6000」は新たなベゼルのデザインを起点として、ケースはもちろん、ダイアルのディテールにも進化をもたらした。とりわけ、サファイアクリスタルベゼルとの統一感を持たせるために熟考したのがダイアルの表現だ。外周のファセットカットはもちろん、ベゼルの内周まで丁寧に磨き上げることで、サファイアクリスタルは実に上品な輝きを放っている。そのため、ダイアルをマットな質感に塗装してしまうとアンバランスな表情になり、腕時計のフェイスが小さく感じられてしまうのだという。

(左)オシアナスでは初めて採用される台形の時分針。天面には縦方向の引き目加工が施され、光が当たると漆黒の文字盤上でより高い視認性を実現する。
(右)インデックスの天面には横方向の引き目加工を施し、こちらも光が当たることで高い視認性を確保。センターには蓄光塗料も塗布され、暗闇での判読性にも優れる。

 そこで「OCW-S6000」では、蒔絵技法を用いたモデル「OCW-S5000ME」で使われた漆黒の塗料を応用し、光の反射によって輝くミラーダイアルを組み合わせた。もちろん、漆黒のダイアルでは駆動の要となる光を通さない。インダイアルのわずかな面積で光を取り込むインダイアルソーラーの技術が確立されているからこそ実現した表現である。

 また、サファイアクリスタルベゼルとダイアルの境界には、ケースから伸びた薄い円筒状のリブがあるのだが、この部分を金属色のままにしてパーツを組み上げてしまうと、ダイアルとベゼルが分断されるような見え方になってしまい、やはりフェイスが小さく感じられてしまうという。そのため、リブの部分にのみブルーIP処理を施し、ダイアルとベゼルに連続性を持たせるための工程を加えたのも、サファイアクリスタルの輝きを最大限に活かそうとする思いからだ。

(左)輝きのあるサファイアクリスタルとの統一感を図り、漆黒のミラーダイアルを組み合わせている。インダイアルは蒸着によってブルーに彩られ、コントラストをつけて視認性を高めるとともに、ここから光を取り込む、駆動の要にもなっている。
(右)ベゼルとダイアルの境界にある細いリブもブルーIPで着色。これによりフェイスに連続性が生まれ、ゆとりが感じられるデザインに仕上がっている。

 こうした煌めきを生み出すクリエイションを生かしつつ、一方では視認性を確保するために、インデックスや時分針といったディテールにも注力。インデックスは金属特有の輝きを生かしつつも、さらに天面に横方向の引き目加工を施すことで、光が当たったときにしっかりと判読できるようにしている。また、このモデルで使われている時分針は、オシアナスでは初となる形状。従来モデルでは山カットと呼ばれる逆V字型の針を用いているが、「OCW-S6000」の針は天面を追加した台形で、天面には縦方向の引き目加工を施しているため、こちらもインデックスと同様に光が当たることで輝き、視認性を高める構造になっている。

「OCW-S6000」のサファイアクリスタルベゼルの煌めきを生かすために採用されたのが、光が当たると反射する漆黒のミラーダイアル(右)。この実現には「OCW-S5000ME」のダイアル(左)で使われた塗装技術を応用。サファイアクリスタルと組み合わせることにより、時計に艶やかでエレガントな表情が生まれている。


マンタ史上最薄記録更新のノウハウ

 シャープな面と曲面を組み合わせたスポーティーエレガンスなデザインをテーマに掲げ、その要となる薄さの記録を更新し続けてきたオシアナス マンタ。それは最新モデルの「OCW-S6000」でさらに塗り替えられることとなり、前作から実に0.8mmも薄い、8.7mmをマークした。これを実現するうえでのポイントになったのが風防だ。

 前作「S5000」シリーズが誕生するうえでの重要なファクターが、片面高密度実装技術によるモジュールの薄型化である。この技術を最大限にアピールすべく、カシオでは誰もが驚くような薄型のオシアナス マンタを企画。一方で、オシアナスは風防にデュアルカーブガラスを用いており、その緩やかな曲面がブランドのエレガンスを象徴するエレメントのひとつになっており、これらを生かしながら完成したS5000は、ケース厚7.5mmにデュアルカーブガラスの厚さ2mm分を加えた、トータルわずか9.5mm厚のモデルとなった。

オシアナス マンタの特徴でもあるデュアルカーブガラスを用いてエレガントな佇まいに仕上げた「OCW-S5000」。片面高密度実装を取り入れた薄型モジュールの利点をアピールするべく薄型デザインが推し進められ、ケース厚7.5mm、風防と合わせて9.5mmのスリムなプロポーションに仕上げられた。

 しかしながら、デュアルカーブガラスを用いると、その緩やかな形状に連続性を持たせるようにベゼルにも曲線を取り入れる必要があり、結果、時計のデザインに制約が生まれてしまう。そこで「OCW-S6000」で採用したのが、サファイアクリスタルベゼルの天面と面位置を揃えたフラットガラスだ。ケースとベゼルを合わせたサイズはS5000よりも厚いが、ガラスが盛り上がっていないため、その厚みは8.7mmに抑えられ、結果、オシアナス マンタの薄型記録を更新したのである。

一方、「OCW-S6000」ではベゼルのデザインを重視しつつもスリムなプロポーションを実現するべく、フラットガラスを採用。写真の通り、真横から見るとベゼルからガラスが浮き上がっていないことが分かるだろう。これにより厚さは8.7mmに抑えられ、オシアナス マンタ最薄の記録を更新した。

 フラットガラスはこれまでにも、蒔絵や切子を取り入れたモデルでは使われていた。つまり、時計全体を薄く見せようとするモデルにおいては、ベゼルがラグに向かって下がっていくような形状を取り入れたほうが有効だが、ベゼルのデザインを強調しつつ時計自体も薄くする場合はフラットガラスを用いるといった使い分けがなされているという。

 サファイアクリスタルベゼルという新たなチャレンジをクリアしつつ、2007年の誕生以来、蓄積されてきた数々の技術を応用することで、オシアナス マンタ“らしさ”やエッジの効いたデザインを具現化し、さらには薄型の記録までも塗り替えた「OCW-S6000」。オシアナス マンタの革新性を明示した姿であり、次なる進化への大きな布石でもある。

OCW-S6000-1AJF

OCW-S6000-1AJF
24面のファセットカットを施したサファイアクリスタルベゼルには蒸着やスパッタリング処理を複雑に施し、透明感のあるブルーを表現。これに合わせてダイアルにはミラー仕上げを、ケースやブレスレットにもチタンカーバイトによって上品なシルバーの輝きを持たせた。タフソーラー。フル充電時約18カ月(パワーセーブ時)。Tiケース(直径42.5mm)。10気圧防水。27万5000円(税込み)。
OCW-S6000B-1AJF

OCW-S6000B-1AJF
ファセットカットを施したサファイアクリスタルベゼルの意匠はそのままに、ケースとブレスレットにDLC加工を施して精悍な表情に仕上げた限定モデル。時分針と12時のインデックス、リュウズにはピンクゴールドカラーのエレガントなアクセントを添えている。タフソーラー。フル充電時約18カ月(パワーセーブ時)。Tiケース(直径42.5mm)。10気圧防水。世界限定700本。30万8000円(税込み)。


Contact info: カシオ計算機お客様相談室 Tel.03-5334-4869
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