ロレックス「GMTマスター Ⅱ」新作はガチの左利き向け!? その理由を解説

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2022.04.13

搭載する32系ムーブメントはものすごくいいかもしれない

 今回ロレックスは、搭載するCal.32系についても知られざる情報を開示してくれた。この自動巻ムーブメントは、自動巻き機構に酸化処理したアルミニウム製のリバーサーを搭載している(リバーサーについて知りたい人は、是非是非『クロノス日本版』100号をお読みください)。筆者の知る限りでいうと、ロレックスはCal.1560以降の自動巻きに、この慣性の小さく、しかも大きくて摩耗しにくいアルミ製の自動巻き機構を採用してきた。そしてその最新版であるCal.32系は、リバーサーを肉抜きしてさらに慣性を下げた、とはクロノス日本版で書いてきたとおりである。

本作も、今までのGMTマスターIIに同じムーブメントを搭載する。Cal.3285は、傑作31系をほぼ全面的に改良した、新世代の自動巻きである。高効率のクロナジーエスケープメントに、常磁性のブルー パラクロム・ヘアスプリング、ボールベアリングで保持する自動巻きローターや、慣性が小さく、そして摩耗しにくい酸化アルミニウム製の歯とセラミックス製の爪を持つリバーサーを備える。

 ロレックスの関係者曰く、32系のリバーサーに内蔵される爪は、なんとセラミックス製とのこと。リバーサーに内蔵される爪は、リバーサーの逆転を抑える非常に重要な部品だ。負荷が大きいため、摩耗しやすいという弱点がある。対してロレックスは、爪に硬いセラミックスを使うことで、リバーサーの弱点である爪の摩耗をほぼ完全に抑えてしまったのである。つまり、Cal.32系の自動巻きは、ロレックスの美点である、優れた巻き上げ効率が限りなく長く持続するわけだ。

 筆者は古典的な設計を持つCal.31系を称賛してきたし、ロレックスの関係者にもそう語ってきたが、セラミックス製の「爪」は、31系信奉者である筆者に宗旨変えを迫りそうだ。それぐらい、32系の採用した、アルミニウム製のリバーサー+セラミックの爪という組み合わせは優れている。


結論:左利きで、右腕に時計を着ける時計好きはこれ買うべし

 単なる仕様違いに思えた、GMTマスター Ⅱのレフティーモデル。しかし、これは真面目に左利き、つまり右腕に時計をつける人を考えたモデルだった。改めて述べるが、ひょっとしてこれは、左利きの人を考えて真面目に量産された、世界初のレフティーかもしれない。左利きの時計愛好家はぜひ手にすべきモデルだが、ひとつだけ問題がある。本作に限らず、ロレックスの「プロフェッショナルモデル」は入手が極めて難しいのだ。いわゆるロレックスバブルが、早く落ち着いてほしいと思うのは、筆者だけではないはずだ。


2022年 ロレックスの新作まとめ

https://www.webchronos.net/features/77648/
【93点】ロレックス/ オイスター パーペチュアル GMTマスター Ⅱ

https://www.webchronos.net/specification/39313/
大いなる王冠の下に ロレックス工場探訪記(前編)

https://www.webchronos.net/features/44587/