ウォッチズ&ワンダーズ2022のA.ランゲ&ゾーネブースで注目を集めたのは、チタンケースの「オデュッセウス」だった。書くだけのネタは持っているが、限定わずか250本。こちらの深掘りは、6月3日に発売する『クロノス日本版』でやるとして、ウェブで取り上げたいのは、新しくなったグランド・ランゲ1だ。これは最も完成度の高いグランド・ランゲ1、と言ってよい。
19年目の「決定版」新しいグランド・ランゲ1はまるで「フラッハ」だ!!!
薄さが強調された2022年度版のグランド・ランゲ1。搭載するCal.L095.1は厚さ4.7mmもあるが、A.ランゲ&ゾーネはケースの厚みをわずか8.2mmに抑えた。地を荒らした文字盤に注目。手巻き。43石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。18KWG(直径41mm、厚さ8.2mm)。3気圧防水。589万6000円(税込み)。
2003年に発表されたグランド・ランゲ1は、その名の通り、大きなケースに特徴があった。サイズは普通のランゲ1より3.4mm大きな直径41.9mm。もっともこのモデルが搭載するムーブメントは、普通のランゲ1の地板を拡大しただけであり、デザインのバランスはやや損なわれた。明確な個性を帯びるようになったのは、2012年発表の第2世代からだろう。新しいCal.L095.1の採用により、ケースの厚さは11mmから8.8mmになり、文字盤のデザインもランゲ1とほぼ同じになった。
もっとも、手の入れ方は実に細かい。1時位置のアウトサイズデイトは約10%拡大され、横方向にも広げられた。またデイト枠の内側が「額縁状」に改められたことで、デイト表示の奥まった感じが改良された。さらにアウトサイズデイトの拡大に併せたのか、インデックスはわずかに長くなった。グランドというほど大きくはないが、A.ランゲ&ゾーネは、あくまで時計としてのバランスを優先したのだろう。あくまで筆者の私見だが、この会社が真剣に装着感を考えるようになったのは、このモデル以降ではないか。
この延長線上にあるのが、2022年の新しいグランド・ランゲ1だ。ケースサイズは従来にほぼ同じ41mm。搭載するムーブメントもCal.L095.1と変わりない。しかし、ケースの厚さが8.8mmから8.2mmとさらに薄くなった結果、装着感は一層良くなった。誤解を恐れずに言えば、これはランゲ1の「フラッハ」だ。ここに至ってグランド・ランゲ1は、ランゲ1とは明らかに異なる個性を身に着けた、と言ってよいのではないか。
薄型化へのひたすらマニアックな取り組み
グランド・ランゲ1が載せるCal.L095.1は、厚さが4.7mmもある。にもかかわらず8.8mmのケース厚を実現した前作には驚かされたが、2022年版はさらに0.6mmも薄くなった。普通はどう考えてもあり得ない。おなじみティノ・ボーべが説明してくれた。
「2012年に発表された第2世代は完成度が高かった。今回の挑戦は、8.8mmというケース厚を0.6mm薄くすることだった」。その手法は実にA.ランゲ&ゾーネらしい。「今回はインデックスの厚みを半分に減らしたほか、アウトサイズデイトの枠も薄くした」とボーベは語る。また、設計責任者のアントニー・デ・ハスは「風防と裏蓋側のガラスもわずかに厚みを減らした」と補足してくれた。
もっとも、ただ薄くしただけではない、というのが本作のポイントだ。時計が薄くなると、どうしても時計が平べったく見えてしまう。対してA.ランゲ&ゾーネは、文字盤の地を荒らすこと(おそらくはブラスト仕上げ)で、インダイアルとの対比を強調してみせた。筆者の見た限り、インダイアルの深さは従来とほぼ変わらない。にもかかわらず立体感が強調されたのは、表面を荒らしたグレーの文字盤のおかげだろう。また、ベゼルがわずかに薄くなった結果、風防と文字盤の距離が近くなったような印象を持つ。筆者は新しいグランド・ランゲ1のデザインが大変に好みだ。
あくまで推測だが、ひょっとして、A.ランゲ&ゾーネは風防と文字盤の距離が狭くなったために、文字盤の表面を荒らしたのかもしれない。距離が狭い時計の場合、文字盤が光りすぎる傾向があるからだ。
結論:ランゲ1をお持ちのあなたこそどうぞ
さらなる薄形化により、ランゲ1とは明確に違う個性を備えた新型グランド・ランゲ1。単に薄くするのではなく、一方で立体感を強調した手腕は見事というほかない。ひょっとしてこのモデルの魅力を最も理解できるのは、すでにランゲ1を持っているユーザーではないか。ご興味のある方は、店頭で腕に置いてみることをお勧めしたい。その装着感は、ランゲらしからぬほど軽快だ。
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