多機能モデルが備える多くの操作部
今作はGPS衛星電波受信機能が備わっており、受信できる環境にあれば時刻修正は必要ではない。これはタイムゾーンの異なる地域に移動しても同様で、その地点の時刻に自動で修正してくれる。またリュウズを一段引いて操作することで、手動でタイムゾーンを切り替えることができる。
この操作感は、わずかなクリック感があって分かりやすい。タイムゾーンを細かく切り替えられる点が特徴で、15分単位の時差のあるタイムゾーンも簡単に切り替えができるし、時分針がそれに応じて移動してくれるので読み間違いもない。ただし、電波の受信感度はそれなりで、筆者自宅の窓際に数時間置くだけでは受信しなかった。そのため、屋外で頻繁に使用するか、積極的に手動で電波受信を行って時刻修正を行うことを基本とすべきだろう。なお、今作は電波受信せずとも保証精度は平均月差±5秒であるので、十分な実用精度と感じる人も多いだろう。
また、光発電らしい機能も備わる。2時位置のボタンを押し込むことで時分針が動いて現在の発電量が0~6の7段階で表示される。これを用いて発電量を調べてみた。作業環境が管理された明るいオフィスでは2、明るい窓際で5~6であった。また、発電量表示と同時にサブダイアルには充電量が表示される。これを確認しながら充電量を管理するのが良いだろう。今作は満充電状態から約2年間稼働可能である。
説明書によると、時計停止状態から充電完了まで晴天の下で約30時間必要だ。よって、1年間分の駆動時間を得るためにはその半分の約15時間充電できればよい。つまり、晴天の下で4時間×4日使用すれば1年間動かせる計算となる。なお、明るいオフィスでは1日分の充電に7時間必要であり、ダイアルに光が当たらない時間を考えると充電不足となる可能性が高い。よって、屋外での使用や窓際に置くような積極的な充電が必要となりそうだ。
さらに、ダイバーズウォッチらしい機能も備えている。2時位置と4時位置のボタンを同時押しすると時分針が12時0分位置にカウントダウンするように移動した後、現在時刻に再び移動する。この状態がダイブモードで、衛星電波受信、パワーセーブモードへの遷移が行われなくなり、ダイブモードオフ以外のボタン操作も効かなくなる。
多機能時計であるが故に、安全性向上のためのこの機能が用意されている点は配慮が行き届いている。この状態で回転式ベゼルと組み合わせて潜水時間を測定するのであるが、ムーブメント側で任意の針位置を実現できるのだから時分針で潜水時間を表示してやる方が親切だと思うのはダイビング未経験者ゆえの発言だろうか。
その他の操作部として回転式ベゼルを備えるが、この完成度がやや物足りない。ベゼルのタッチが軽いのは好みの問題として、遊びが少しあるのが気になった。また、ベゼルを軽くタップするとカチカチと遊びによる音が鳴るあたりは、15万円を超える時計であることを考えると好ましくない。
ダイアルの視認性の高さは高評価
ブルーのダイアルに大きく真っ白な時分針はコントラストが高くて視認性が高い。また、強い日差しを受けても視認性は悪化しなかった。この視認性の高さは今作の重要な特徴で、アウトドア全般、特に強い日差しや照り返しのある海辺での使用に適している。
インデックスと針の蓄光は発光量が大きく、少し陽が当たると強く光ってくれる。デイト窓が特徴的で、9時位置のインデックスと同じ形状に窓を切っているので、デザインのバランスが良い。大きなインデックスを上手く使っている。
また、ダイアルの表情も悪くない。ソーラセルが配置されているはずだが、それを感じさせない質感で、サンレイ仕上げによる反射が表情を生んでいる。また、メタリックな質感で枠が与えられ、アクセントになっている。
デザイン面で残念なのは分針がやや短いと感じることと、針デザインが直線的でディティールに乏しいこと、ダイアルの立体感も物足りなさがあることだ。このように述べながら評価が厳しすぎるとも感じるが、昨今は針やダイアルの質感向上がキーワードであるので改善を期待したい。
装着感と視認性、耐衝撃性能といった実用性に優れた現場主義的な1本
今作は、多機能かつ高性能素材をケースに用いた大型モデルで、スペック面やボリューム感に注目が集まりやすいだろうと予想される。今回のインプレッションで実際に着用してみて、軽量なチタンの採用とケース形状などから、着用感の向上に着目した開発が為されたことがよく分かった。また、高い視認性は晴天下でも悪化しないことから、アウトドア、特にマリンスポーツなどにマッチすると言える。
では、マリンスポーツで使う際の心配事はないだろうか? 防水性はISO規格に準拠した200m防水であるのは安心材料として十分だ。ただし、水中でのボタン操作とリュウズ操作はご法度である。では衝撃はどうだろうか?
シチズンは時計の信頼性を高める技術として「Perfex」を開発しており、今作はこれを採用している。これは「衝撃検知機能」「針自動補正機能」「JIS1種耐磁」の3つで構成された技術だ。ではここで時計が衝撃を受けたとしよう。対策がない場合は重い針に大きな衝撃荷重が加わり、針ズレが発生してしまう可能性がある。
Perfexの衝撃検知機能では衝撃を検知すると針を固定するトルクを瞬時に発揮して針ズレを防止する。これは例えるならば自動車のシートベルトのプリテンショナーのような機能である。このような“耐衝撃姿勢”を取っても針ズレが起きるような大きな衝撃を受けた際には、ムーブメントが保持する時刻へ修正する針自動補正機能によって正しい針位置に戻す。これらふたつの組み合わせによって、衝撃を受けても常に正しいポジションに針がくるようにしているのだ。
残りのひとつ、JIS1種耐磁は直流磁界4800A/mに耐えられる水準であり、日常生活では磁界を発生する機器に時計を5cmまで近づけても機能を保持するレベルである。機械式時計や一般的なクォーツ時計であれば、ムーブメントを耐磁シールドで包むことで実現可能だが、GPS電波受信機能を持つムーブメントの場合は難易度が上がる。耐磁シールドによって電波受信が妨げられる可能性が高いからだ。この相反する要求を実現している点は、シチズンの実用性を高めるための技術開発が生きていると言える。
ここまでの検討で、今作がマリンスポーツの現場でタフに使うのに耐えうる性能を持っているのが分かった。そのスタイリングも大型で存在感があるためTシャツに今作を組み合わせるだけでも様になることもコーディネートの上では加点要素だ。軽快なスタイルで海に出掛けたくなる夏に向けて検討してみるのも面白い1本である。
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