GMTウォッチの基本を押さえた、ノンストレスな操作感
次に、リュウズを操作してみよう。反時計回りに回転させ、ねじ込みを解除する。解除の感触は、引っ掛かりもなくスムーズだ。ねじ込む際も、最初の掛かりが掴みやすく、難なくねじ込むことができる。これは、雄ネジを持つチューブが太いこと、リュウズ自体の径も大きく、指で摘まみやすいことが関係しているだろう。
ねじ込みを解除した状態では、主ゼンマイを巻き上げることができる。自動巻きムーブメントは、シャリシャリといった巻上げの感触を持つものが多いが、今作ではトットットットッという、ケニッシ製ムーブメントらしいクリック感のある巻き応えだ。
1段引くと、時針の単独調整ができる。時針は1時間単位でジャンプし、時計回りで進み、反時計回りで戻すことが可能だ。日付を変更したい場合は、そのまま夜中の12時を過ぎるまで時針を送る必要がある。一般的な3針ムーブメントのようなクイックチェンジはないが、その代わりに日付を進めるだけではなく戻すこともできる。
例えば海外に行く際、日付を跨いで時差がマイナスの地域に行く場合には、時針を時差分戻すだけで、それに伴って日付も修正される。1段引きでは秒針停止しないため、時差修正後に改めて秒単位の調整を行う必要はない。
2段引きは、時刻調整のポジション。秒針が停止し、時分針とGMT針を一斉に動かすことができる。適度な重さを持って針が動くため、狙ったところにピタリと合わせることが可能だ。リュウズ1回転に対し、分針の移動量は1周と少しといったところだろうか。
ボリュームを感じさせない装着感と高い視認性
それでは実際に腕に着用してみる。40mm径のケースは、腕周り約17cmの筆者の手首にちょうど良いサイズ感だ。先端を切り落としたラグをはじめとした凝縮感のあるデザインによって、コンパクトな印象を受ける。
ボリュームのあるケースも、程よい硬さを持ったラバーストラップのおかげでしっかりと支えられ、腕を振っても手首で暴れるような感触はない。ラバーストラップの裏面、肌と直接触れる面はフラットになっている。着け始めてすぐは問題なくとも、動き回って汗をかいた際にはべたつきを感じるようになった。夏場は少し緩めに着けるべきだろう。通気性を高めるための溝が施されていると、より快適に着用できるのではないだろうか。
ちなみにこのストラップは、ラバー製でありながらもスムーズにループから剣先を抜き差しできる。素材の特性に依存するとはいえ、摩擦が大きくストレスを感じるようなラバーストラップも多い中、今作のストラップは好感の持てる着脱感であった。
手首に乗せ、色々な角度から眺めたときであっても、視認性は良好だ。控えめなサンレイ仕上げのダイアルは過度にギラつくようなことはなく、インデックスや針と高いコントラストを生み出している。
ひとつ残念だと思ったのは、12時位置に輝くロゴである。プリントでない分、高級感があるのだが、光の具合によってはキラキラと反射し過ぎてしまい、何と書いてあるのかが読み取れなくなるばかりか、見ていると目がチカチカしてしまう。
暗所での視認性も必要十分だ。3時位置を除くインデックスと時分針がそれぞれ光る。時分針は夜光の長さに違いを持たされているため、それぞれを見分けることに苦労はしない。GMT針に夜光は塗布されていないため、暗所ではローカルタイムのみが読み取り可能だ。
今作の特徴として、さまざまシーンとの適合性が高いことを挙げておきたい。落ち着きのあるクラシックなデザインは、ビジネスシーンにもふさわしく、100mの防水性を備えたケースと堅牢なムーブメントは、ちょっとしたアウトドアレジャーであればものともしない。更に汎用性を一層高めているのが、豊富に用意された純正ストラップの数々と、20mmというポピュラーなラグ幅だ。
オールシーンで活躍する万能クラシックウォッチ
GMTウォッチは主に2カ所、もしくは回転ベゼル等を組み合わせて3カ所以上の異なるタイムゾーンの時刻を同時に表示するものであり、その真価が発揮される場面のひとつが、海外への渡航だろう。そしてそのような場合には、携帯する荷物を最小限に抑えた方が身動きを取りやすいだろうし、そのために選び抜かれたものにはある程度の汎用性が求められる。
かしこまったスーツにもカジュアルな服装にも違和感なく溶け込むデザインと、急な悪天候でも気に掛ける必要のない防水性能。フリーダム 60 GMTは、それらを十分に兼ね備えた、まさに旅するためのクラシックウォッチと言えるだろう。
加えて、ケースサイドに輝くノルケインプレートは、記念日や信念、目標を刻み、常に共にすることで自分自身を昂らせる、ノルケインを象徴する意匠のひとつだ。時計に好きな文言を刻印できるサービス自体はそれほど珍しくない。しかし、その多くは余白の広いケースバックに施され、着用時には隠れてしまう。
ケースサイドに取り付けられるノルケインプレートには、そこに刻んだメッセージを片時も忘れさせまいとする意志が込められていると感じる。人生はしばしば旅に例えられる。自身の過去である記念すべきレコードや、未来である達成したい目標を刻むことで、今作は人生という長旅を共に歩むパートナーにも成り得るのだ。
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