今回レビューするのはロレックスの「オイスター パーペチュアル GMTマスター Ⅱ」、赤青ベゼルが特徴の通称“ペプシ”モデル。文句のつけようがないほどに圧倒的な完成度を誇るが、相変わらず入手困難であることは残念だ。
Text by Masayuki Hirota(Chronos-Japan)
2022年12月21日公開記事
“良すぎる”時計、ロレックス
以前、著名な自動車評論家と話をしたことがある。彼は、メルセデスには乗らない、なぜなら良すぎるからだと語った。
時計の評論家も似たようなもので、ロレックスを買う人は多くない。買うと、時計に対する興味を失いかねないからだ。実際、僕の友人のYも、ロレックスのサブマリーナを買って以降、時計の世界から姿を消してしまった。とはいえ、ロレックスは避けては通れない道だ。久々に着けたロレックスは、さすがに凄かった。それこそ、時計に対する興味を失いかねないほどに。
借りた個体は「オイスター パーペチュアル GMTマスター Ⅱ」、通称“ペプシ”だ。ベゼルはセラミックス製の赤黒になり、中身も最新のキャリバー3285に進化した。また、ジュビリーブレスレットからは左右のガタがなくなった。時計としては比類なし、オシマイとしたいけど、それでは記事にならないので続けたい。
自動巻き(Cal.3285)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径40mm)。100m防水。127万2700円(税込み)。
外装は圧倒的、ただし……
2000年以降、ロレックスは外装メーカーを買収し、一貫したマニュファクチュールとなった。1番大きなポイントは、ブレスレットメーカーであるゲイ・フレアーの買収だ。さまざまなメーカーにブレスレットを提供していた同社を加えることで、ロレックスのブレスレットは明らかに良くなった。
筆者はロレックスを買うとき、必ず3連のオイスターブレスを選んでいた。プラ風防のモデルならさておき、頭の重くなったサファイア風防のモデルに付けるなら、ジュビリーブレスレットはいささか頼りなかったからだ。しかし、オイスター パーペチュアル GMTマスター Ⅱの新しいジュビリーブレスレットは、ジュビリーらしい適度なしなやかさと、左右の剛性を両立していた。これはアリだ。
ロレックスと他社との違いは、フラッシュフィット(弓管)とケースの噛み合いだ。ロレックスは明らかにしていないが、現在同社は、フラッシュフィットとケースをひとつひとつ計測し、最適なマッチングで噛み合うようにしている。フラッシュフィットとケースの隙間が完全に詰まっている理由(そして、ブレスレットの交換がかなり難しい理由)であり、他社がロレックスに追いつけない理由だ。ちなみに同社は、この精密な噛み合わせを「コンシールドアタッチメントシステム」と名付けている。
時計全体は、今のロレックスらしく重量級。しかし、時計部分とブレスレット部分のバランスが良いため、着けていて疲れにくい。ここ20年のロレックスは、ヘッドを重くし、対してブレスを重くしというイタチごっこを続けてきたが、本作のバランスは法外に良かった。あくまで私見だが、ヘッドの軽い「オイスター パーペチュアル デイトジャスト」などは、さらに良いだろう。
バックルもよくできている。厚みは6mm、プレートの長さは40mm強(いずれも実測値)とコンパクトなため、デスクワークの邪魔にもなりにくいし、細腕の人でもバックルが飛び出ることはない。普通、バックルを短くするとヘッドに負けてしまうが、そこはロレックス。バックルを頑丈に作ることで、短いながらもきちんとホールドしている。
しかしながら、バックルを固定するボールは最近はやりのセラミックス製ではないし、エクステンションリンク(イージーリンク)も5mmのシンプルなモノしか付いていない。ロレックスのことだから考えたうえでの選択なのだろうが、時計の重量を考えると、より細かいエクステンションは期待したい。