2023年、スマートウォッチの業界地図。各ブランドの現状整理と来年の展望予想

大きな存在になってきたファーウェイ

 Fitbitのコンセプトに近い、しかしより大きな市場での適応を目指して開発を進めているメーカーがある。ファーウェイだ。

ファーエイ GT Pro

スマートフォンでは日本市場でほとんど聞かなくなってしまったファーウェイだが、スマートウォッチは引き続き展開されている。同社のスマートウォッチの特徴は長いバッテリー持続時間で、Watch GT Pro 3では通常使用で2週間、24時間心拍数モニタリングやGPSを使用してのワークアウトなどを使用するヘビーユースでも8日間バッテリーが持つ。

 米政府とのいざこざから、中国外におけるスマートフォンの競争力を削がれたファーウェイだが、デジタルデバイスの領域ではアップルにも匹敵する強力な総合力を備えていた。

 過去形になっているのは、独自に半導体を設計、生産する能力を米政府に大幅に制限されているからだが、スマートウォッチという限られたジャンルであれば、まだその総合力を発揮できる。

 ファーウェイのスマートウォッチ「Watch GT」シリーズは独自チップに独自開発のOSを搭載し、アプリもサービスも独自に提供。Apple Watchのような多彩なアプリには対応しないものの、概ねほとんどの用途に使えるだろう機能を最初から搭載している。

 機能は固定されがちだが、その代わりバッテリー持続時間は極めて長く、製品によっては2週間、常時点灯モードを使っても1週間程度という長さを誇る。

ファーエイ GT Pro

 ファーウェイの製品群は、薄く軽量で大きなディスプレイを備え、ビジネスパースン向けの高品位なドレスウォッチから、カジュアルかつ安価な求めやすいフィットネス向けウォッチ、さらに安価なフィットネスバンドまでを、ひとつのプラットフォームとアプリに収めている。

 こうしたことができるのは、中国で圧倒的な出荷数を誇っているからだ。ファーウェイは中国向けに大量のスマートウォッチを販売するとともに、それらから集まったデータを解析することで、フィットネスやヘルスケア、睡眠などのデータに至るまでユーザーにデータを可視化したりアドバイスしたりする機能を、連動するアプリに組み込んだ。

 加えて長足の進歩を遂げているのが、HUAWEI Healthと名付けられたアプリとアプリ連動の健康コンテンツや生活改善アドバイスのサービス。中国でのシェアの高さを生かし、より多くの人から身体活動や睡眠データを収集することで、的確な分析が可能になってきているからだ。

 ファーウェイ自身、今後はさらにウェアラブルデバイスのバリエーションを広げていくという。価格レンジも数1000円から5万円前後まで、幅広いラインナップを持って大きく出荷数をスケールしている。今後は高級モデルへの投資を加速しそうだ。

 その存在感は、ファッション系の腕時計ブランドも無視できないものになっていくと予想する。


Apple Watchは“第三章”へと向かう

 一方でこのジャンルを常にリードしているアップルは、Apple Watch Ultraでそのブランドに磨きをかける試みを22年に行い、そして市場での評判を見る限り、その試みは成功している。

Apple Watch Ultra

Apple Watchは2022年、Series 8のほかに、より過酷な環境でのスポーツ使用を意図したApple Watch Ultraを発表した。

 Apple Watchがもはや、スマートウォッチのハードウェアとして標準とも言える存在になったのは、Golden Concept(※iPhone/アップルウォッチ向けのケース、アクセサリーを手掛けるメーカー)に代表されるように“Apple Watchのためのラグジュアリーなケースとストラップ”がファッションジャンルとして成立していることからも明らかだろう。

 Apple WatchはSeries 7でディスプレイサイズが拡大されたものの、その外形はSeries 4から変更されていない。また搭載メモリ量や若干の動作速度の違いこそあれ、Series 4以降は搭載するセンサーの種類などを除けば、基本的なスマートウォッチとしての価値には大きな違いがないよう、電子機器としてが極めてステイブルなプラットフォームになっている(もちろんUltraは例外だが)。

 だがしかし、Apple Watch Ultraの登場はスタンダードのApple Watchが次のステップへと向かうためのステップを予感させる。初代からSeries 3までの3世代でアップルはスマートウォッチについて学び、大幅に改良したコンセプトを5世代にわたって改良してきた。

Apple Watch

今年も新作が発表されたApple Watch。しかし、バッテリー持続時間には相変わらず、今回紹介したどのスマートウォッチよりも短い。

 その間、Apple Watchは健康と生命を護る機能を強化し続け、スポーツとの関わりを深め、使いやすさにも磨きをかけてきた。しかし大幅に強化した睡眠記録などの用途では、バッテリー持続時間に不満はある。急速充電モードを追加するなどで使いやすさを高めているとはいえ、本質的な解決策とはいえない。

 このような背景を考えれば、アップルは新たなApple Watch SEを投入することで“第二章”に区切りをつけ、第三章へと歩を進めるのではないだろうか。登場は例年通り秋が予想される。


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