【オメガ】ムーンウォッチで名を馳せるクロノグラフ、歴代モデルを紹介

FEATUREその他
2023.04.07

スピードマスターの特徴と魅力

シーマスターをベースに開発されたスピードマスターだが、シーマスターとの違いや特徴はどのようなところにあるのだろうか。詳しく見ていこう。

スピードマスターとシーマスター

スピードマスターはシーマスターをもとにつくられてはいるが、その名から分かるとおりそもそも使用に想定されたシーンや顧客が異なる。

「シーマスター」は海での活躍を前提としたスペックを備えている。プロダイバーなど海を仕事の場とするプロフェッショナルたちの命綱として、防水性能と視認性に優れた特徴をもっている。

一方「スピードマスター」は、レーシングウォッチとして開発された経緯から、速度の世界で闘うプロレーサーやパイロットの使用を想定。発売当時の広告でもスポーツカーの助手席でスピードマスターを手に計測しているような描写が採用されている。

ベゼルに搭載されたタキメーター

タキメーター

タキメーターは、自動車などの走行時速を測る機能。1kmを走行した時間を測ることで、その区間の平均時速を求めることができる。

タキメーターそのものはとりわけ珍しい機能ではなく、今となってはその機能をベゼルに搭載したモデルも少なくはない。しかし、タキメーター搭載ベゼルを世界で初めて備えたのはスピードマスターなのだ。

クロノグラフにくわえ、タキメーター搭載ベゼルなど、機能性に優れたスピードマスターはレーシングウォッチとしての高い実用性はもちろん、メカニカルな格好良さがビジュアル的な魅力にもつながっているのだろう。

豊富なシリーズとデザイン

スピードマスター38MM

レディース向けの「スピードマスター38mm」。18Kセドナ™ゴールド製ケースとクリーミーシルバーのダイアルとのコンビネーションが上品だ。ベゼルにダイヤモンドがないバリエーションもあり、小ぶりなサイズが好みの男性にも支持されている。

スピードマスターには、現在大きく分けて6つのシリーズが展開している。とくに有名なのは「ムーンウォッチ プロフェッショナル」だが、クラシカルさがプラスされた「ヘリテージ」やレディースにもフィットする「スピードマスター38mm」など、豊富なデザイン展開も魅力のひとつだ。

風防においては、スタンダードなサファイアクリスタルのほか、強化プラスチックであるヘサライトガラスの展開もある。ヘサライトガラスを用いたモデルでは、ナイロン製のファブリックストラップとブラッシュ仕上げのステンレススティールブレスレットから選択可能だ。


スピードマスター歴代モデル

スピードマスターは、現在第8世代まで登場している。1957年発表の初代から最新第8世代までの特徴を、歴史や背景を交えながら紹介しよう。

初代|1957年 CK2915

スピードマスターCK2915

ブロードアロー型の時針が特徴的な初代スピードマスター「CK2915」。そのデザインはレイルマスターに近しいものだった。

記念すべきスピードマスターのファーストモデルは「CK2915」。シーマスター300をベースに開発され、レイルマスターの兄弟機として誕生した。初代CK2915は、針の形が後継機と異なる。この当時は矢印型のブロードアローを採用し、現在よりも針の存在感が大きい。

第2世代|1959年 CK2998

スピードマスターCK2998

2代目「CK2998」で、すでに針の形状に変更があった。ラグの形状も初代よりもシャープに。

第2世代が登場したのは、2年後の1959年。CK2998から針の形はスタイリッシュなアルファ型へと変更された。くわえて、スピードマスターの特徴ともいえるタキメーター搭載ベゼルは、アルミからブラックへとマイナーチェンジした。

スピードマスターがアポロ11号とともに月面着陸したのは有名な話だが、第2世代のCK2998は1962年の世界初有人宇宙飛行「マーキュリー計画」にてウォルター・シラーとともにオメガ初の宇宙デビューを果たしている。

第3世代|1964年 Ref.105.003

スピードマスター105.003

NASAのテストで宇宙飛行での使用認定を受けた第3世代の「105.003」。テストを受けたオメガを含む3社の中で唯一合格したのがこのモデルであった。

第2世代で宇宙デビュー後、第3世代でNASAのテストに参加。ロンジンやロレックスをはじめとしたさまざまな時計が集められたが、テストを通過できたのはスピードマスター第3世代であった。

第3世代では、さらに針がマイナーチェンジされている。第2世代のアルファ針から白色のバトン針へと変更が加わった。

第4世代|1964年 Ref.105.012

スピードマスター105.012

初期のアポロ計画のミッションで着用されたのが、第4世代の「105.012」であった。のちに「一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍だ」の言葉で知られるニール・アームストロングも着用したという。

第4世代でついにNASAの公式装備品に採用され、月面着陸を果たした。ダイアルには「PROFESSIONAL」の表記が入り、リュウズガードを追加、プッシャーは幅を広く改良され、左右非対称のケースになるなど、さまざまな変更が加えられた。

第5世代|1969年 Ref.145.022

スピードマスター145.022

およそ20年にわたって製造された第5世代「145.022」。月に初めて着陸したモデルでもある。各世代の中で最も長く製造されたため、ムーンウォッチと言われて想像するのはこのモデルだろう。

クォーツショックを控えた1969年、スピードマスター第5世代は名機と称賛されたCal.321から861へとムーブメントを変更した。Cal.321はコラムホイール式で精密な制御が可能であったが造りが複雑。一方、新たに搭載されたCal.861は、造りがシンプルなカム式で安く増産できたのだ。クォーツショックで淘汰されないために、オメガは正しい選択をしたといえる。

アポロ11号による人類初の月面着陸は、1969年のことであった。つまり、この「145.022」がまさしく“ムーンウォッチ”なのである。 また、第5世代は、歴代スピードマスターの中でもっとも長く(1969〜88年)生産されたモデルでもある。そのため、第5世代内でサブリファレンスがいくつか存在するのも特徴だ。

第6世代|1997年 Ref. 3570.50

第5世代からおよそ30年ぶりの変更となる第6世代。変更されたのはムーブメントで、Cal.861からチューンナップしたCal.1861へと変えられた。

そのほかは大きな変更はないものの、小さな変更は多少ある。暗所での視認性向上のために用いられる夜光塗料が、トリチウムからルミノバに。この変更に合わせて、トリチウムの使用を表す6時位置の表記も「T SWISS MADE T」から「SWISS MADE」へとマイナーチェンジしている。

第7世代|2014年 311.30.42.30.01.005

スピードマスター311.30.42.30.01.005

第4世代から受け継ぎ続けているデザイン。第7世代まではストレートな3コマブレスレットが装着されていた。

リファレンス番号のフォーマット変更に伴い、2014年からは311.30.42.30.01.005が第7世代となる。末尾005は従来通りのソリッドバックにプレキシガラス風防、006はシースルーバックにサファイアクリスタル風防という、2つのバリエーションが存在した。

第8世代|2021年 310.30.42.50.01.001

スピードマスター ムーンウォッチ マスター クロノメーター

20年以上搭載し続けたCal.1861から、新たなCal.3861へと変更した第8世代。ダイアルやブレスレットもブラッシュアップされた。「スピードマスター ムーンウォッチ マスター クロノメーター」。手巻き(Cal.3861)。 26石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径42mm、厚さ13.18mm)。50m防水。93万5000円(税込み)。

現行モデルとなる第8世代。注目すべきはムーブメントの変更だ。新ムーブメントCal.3861により、ムーンウォッチもコーアクシャル エスケープメント機能が標準となった。コーアクシャルムーブメントは8〜10年とメンテナンス間隔が長い点がメリットとして挙げられる。

また、マスタークロノメーターを取得し、15000ガウスの耐磁性を盛り込むなど、精度への信頼度も高めた。

ムーブメントの変更以外にもデザイン変更点がいくつか挙げられる。ステップ・ダイアルにと変更したことにより、立体感が増して視認性が向上。ベゼルに施されたタキメーターの「70・90」にあるドットの位置も変わっている。また、ブレスレットにテーパードを効かせることで、装着感も高めている。


時代に合わせ進化を続ける歴代モデルたち

66年前に登場したスピードマスターは、時代背景によるアップデートはあれど、その姿を大きく変えることなく現在まで愛され続けてきた。これは、初代から完成された傑作といっても過言ではない。きっと、これからも進化し続け、オメガを代表し、世界中を魅了してくれるだろう。



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