サファイアクリスタル製風防とフォージドカーボンベゼルを備えたG-SHOCKマッドマスターは、いかなる性能を発揮するのか? それはアルプスでのキャニオニングで雄弁に物語る。
マルクス・クリューガー:写真 Photographs by Marcus Krüger
岡本美枝:翻訳 Translation by Yoshie Okamoto
Edited by Kouki Doi (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2023年3月号掲載記事]
ショック・イン・ザ・キャニオン
ウェットスーツとヘルメットを着用して山を登ると、特に2022年のような暑い夏には大量の汗をかく。だが、オーストリアとイタリアにまたがる、アルプス山脈東部のチロル地方にあるシュトゥイベンファルの滝を下るには、まず山を登らなければならない。軍歴を持つ我々のガイドは、足取りも軽やかである。GWG - 2000- 1A3JFという物々しい名のG-SHOCK マッドマスターに高度計が搭載されているのはありがたい。スタート地点にたどり着くには、標高120mまで歩かなければならなかった。
低い地点で少し涼を取った後、第1の滝を目指す。この滝の落差はおよそ20mである。濡れて滑りやすい岩肌を90度の角度で後ろ向きにラペリング(=懸垂下降/ロープを使って高所から下降する方法)するには、恐怖心を克服しなければならない。時計が岩肌にぶつかるのは避けられないだろう。しばらくすると岩から離れ、ロープにぶら下がって降りていく。
川底に到着し、束の間の漂流を楽しむ。だが、マッドマスターの温度計が水温を正しく表示できるほど長くは水に浸かっていなかった。ウェットスーツの上から着用して、時には水中、時には上空にいる状況で正しい温度を計測するには数値が混在しすぎているのだ。G-SHOCKのデジタルコンパスはここでも不要で、渓流に沿って次の滝を目指す。今回は30mほどラペリングで降りなければならないが、第1の滝を経験した後なのでそれほど苦ではなく、カメラに向かってポーズを取る余裕すらあった。
川底に着き、時計をじっくりと見てみる。大きな数字や特徴的な針、54.4mmのケース径という堂々たるサイズ。そして、蓄光塗料により暗闇でも視認性は良好だ。文字盤の左側にある黄色い針が指す目盛りを見れば現在のモードを確認でき、6時側のデジタルディスプレイには日付、セカンドタイムゾーン、高度、ストップウォッチ、タイマー、アラームなどの情報を表示させることができる。暗所では、ボタンを押すとLEDライトがデジタルディスプレイを明るく照らしてくれる。
浅瀬に飛び込む
渓谷の縁を少し登ると、高さ約8mの滝が姿を現す。下方の川には十分な深さがあるはずだが、岩に近づきすぎないよう大きくステップを踏み、両足を前に伸ばして水面で減速し、深く潜りすぎないように注意しなければならない。ここでもまた恐怖心が試される。高い場所から飛び降りるという行為に対し、人類は進化上、恐れを抱くものなのだ。恐怖という思考のスイッチを切って早く前に進めば進むほど楽になるのは、こうした理由による。
宙を舞い、しぶきを上げて水中に飛び込み、再び浮かび上がるまでの時間は永遠のように感じられた。浮上する時に張り出した岩に頭をぶつけたが、ヘルメットを着用していたおかげで大事に至らずに済んだ。
マッドマスターもしっかりと保護されている。メタルベゼルを備えた樹脂製ケースは、鍛造カーボンファイバー製の補強材(フォージドカーボン)で守られ、アグレッシブな印象を与えると同時に時計を包み込む構造だ。さらに、衝撃を吸収するシリコン製の緩衝素材がムーブメントを防護する。サファイアクリスタル製の風防は傷に強く、20気圧の防水性も申し分ない。価格は9万9000円とG-SHOCKの中ではハイエンドモデルだが、それだけにクォリティも高い。
頼もしい相棒と急流を下る
その後しばらくは泳ぎながら穏やかに進み、滑りやすい石が並ぶ水路を流れに乗って滑り降りた。時折、仰向けになり、ガイドの手を借りながら後方宙返りで次の急流を下る。ガイドに助けを乞うキャニオニング初心者が何名かおり、皆が撮影スポットで写真を撮るので、タイムリミットが迫っていた。
マッドマスターにとって時間厳守はまったく問題ではない。電波を受信して時刻を合わせるため、極めて正確な時刻を表示することができる。ユーザー自身が時刻合わせを行う必要はなく、サマータイムの切り替えも正しく行ってくれる。また、タフソーラー駆動システムを搭載し、電力不足に陥ることがないのも、目に見えないが重要な利点のひとつである。
一方、我々はぴったりとしたウェットスーツの中で全身の毛穴から汗が流れ出た状態だが、時刻通りにセッションを終えるため、水量の少ない最後の区間を駆け足で進む。偵察任務を遂行する戦闘潜水員になった気分だ。チェッカープレート模様が施され、黄色いレタリングを配したオリーブカラーの合成樹脂製ストラップは、マッドマスターのミリタリールックによく似合う。耐久性の点では、G-SHOCKよりも筆者の方に断然、改善の余地がありそうだ。
難所もあったものの、初のキャニオニングを楽しく乗り切ることができた。一方でマッドマスターには傷ひとつ付かなかった。非常に頑丈で、内蔵のタフソーラー駆動システムで充電することができ、デジタルコンパスや高度計など、基本的なナビゲーション機能をすべて備えたマッドマスターは、今回のようなキャニオニングだけでなく、あらゆるアウトドアシーンで携行したい相棒である。
タフソーラー。フル充電時約25カ月駆動(パワーセービング状態)。SS×樹脂(直径54.4mm、厚さ16.1mm)。20気圧防水。9万9000円(税込み)。
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