総評
新商品の発売が1年を通して都度都度、が現在の主流になりつつあることから、ウォッチズ&ワンダーズに参加したブランドはどれも慎重かつ保守的であったか、あるいは惰性で現在の成功を積み重ねていたかのどちらかであったと考えられる。その結果、全体として目立った製品は少なかった。
メーカーには慎重な姿勢も見られたが、ほっとするような楽観的な姿勢も見受けられた。前週にクレディ・スイスが破綻し、世界中でさまざまな問題が発生したにもかかわらず、ウォッチズ&ワンダーズでは、業界関係者のセンチメント分析は堅調で、ほとんどの人が驚きを隠せなかった。あるブランドの幹部は、小売店からの受注が好調であること、顧客からの関心も高いことを示し、来年に向けて楽観的な見方を示したのだ。
今回のフェアに際して悲観論はほとんど見受けられなかった。しかし、重要なブランドの高位に位置するひと握りの人たちは、6カ月後の状況について静かに考えているようでもあった。皮肉なことに、このような思慮深い人物が経営するブランドは、通常、不況を乗り切るのに最も適した立場にある。
2023年のW&Wは、独立系ブランドの増加により出展者数が大幅に拡大した。しかし、新規参入者のほとんどは、出展者数を増やすことには貢献したが、質を高めることはできなかった。
ウルベルクやヴティライネン、F.P.ジュルヌといった定評のある独立系時計メーカーは、長い間フェアに参加せず、独自に出展するか他の場所で出展することにしたため、W&Wにおける独立系ブランドの展示数は着実に減少していることが分かる。その結果、この1週間で新作を発表した興味深い独立系メーカーの大半は、W&Wの会場の外にあったのだ。
SJXのプロフィール
SJXことスー・ジャーシャンは、watchesbysjx.comの創設者。1985年、シンガポールに生まれる。12歳で時計に興味を持ち、ウェブサイトなどに寄稿。現在最も影響力のある時計ジャーナリストのひとりである。
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