BIG BANG ALL WHITE
完成度を大きく高めた、ビッグ・バンの定番
2006年の「オールブラック」以降、色でも新しい提案を続けるウブロ。ほとんどの外装を白に変えたのが本モデルだ。なお08年以降、外装部品の加工精度は向上。ビッグ・バンの完成度は大きく高まった。サイズを問わない優れた装着感は、ビッグ・バンの大きな美点。Ref.301.SE.230.RW。自動巻き(Cal.HUB 4100)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。セラミックス×グラスファイバー×SS(直径44mm)。10気圧防水。144万円。
初作のデザインを今に引き継ぐ、ビッグ・バン。一見、第1作と2010年製の本作はまるで同じだが、全体の印象はまるで異なる。
印象を変えたのが、完成度である。いくつかポイントを挙げてみたい。多くのウブロは、ベゼルとケースの間に、グラスファイバー製(発表当初はケブラーと謳っていた)「オレイユリング」を挟み込んでいる。これはデザイン要素として設けられたものだが、同時にリュウズとケースサイドの保護も兼ねているものだ。製法はラバーに同じで、グラスファイバーを金型で挟んで成形していく。かつては金型のつなぎ目(テーパードライン)が残っていたが、今は改善された。また2008年ごろからケースの加工精度が上がった。ケースが63もの部品で構成されると考えれば、加工精度の向上は、時計の印象を大きく変えるだろう。また加工精度の向上を受けてか、鏡面仕上げの質も格段に良くなった。
ベゼルの仕上げにも変化が見られる。切削が難しかったのか、かつてのベゼルは角にわずかな凹凸を残していた。しかし、今や凹凸はほとんど見られない。また2010年からは、風防に施す無反射コーティングを改良。以前はわずかに青みがかっていたが、今や完全にクリアだ。いずれもわずかな進化だが、こうした積み重ねが、時計の印象を大きく変えたと言えるだろう。改良を重ねたビッグ・バンは、高級時計を分かっている人にもお勧めできる内実を備えている。しかもウブロは、質の向上を生産本数の増加(7年間で約5倍)に並行して成し遂げたのである。時計業界では希有な例と言えるのではないか。
今や高級時計市場に大きな影響を与える存在となった、ビッグ・バン。では、ジャン-クロード・ビバーはいかにしてこの時計を創り上げ、そこに何を盛り込もうとしたのか。彼自身に、語ってもらうことにしよう。
(右上)加工精度の向上を端的に示すのが、セラミックス製のホワイトベゼル。ビスの上面が鏡面仕上げとなったほか、ベゼルの角も精密に加工されるようになった。またベゼルの上面にサテン仕上げを施すことで、「セラミックウォッチ」にありがちなツヤを抑えている。
(中)ケースの側面。やはり造形は従来に同じだが、影の映り込みが異なる。旧作に比較すると、影の歪みははるかに小さい。ケースの加工精度が大幅に向上したことを端的に示すポイントだ。
(左下)斜めから見たケース。オレイユリングとケースの噛み合わせも大きく改善されたほか、オレイユリングのテーパードラインもほとんど目立たない。かつてはデザイン先行の印象が強かったビッグ・バン。しかしサプライヤーの能力が向上したのか、高級時計らしい品格を備えるに至った。なおラバーストラップは、形状こそブロックパターンとなったが、素材は1980年の初作に同じ。当時100万スイスフランを投じて開発されたオリジナルのラバーストラップは、今なおその製法が公開されていない。
(右下)ラ・ジュー・ペレ製のCal.HUB 4100。ブリッジはフルカバードに改められた。ケースバックのサテン仕上げも精密だ。