GERALD GENTA
SUCCESS PERPETUAL “Skeleton”
1989年初出。ジェラルド・ジェンタ創業20周年を記念して作られたモデル。「ゴールド&ゴールド」コレクションの意匠を踏まえながら、より立体感を増している。立体的なケースを持つサクセスは、以降ミニッツリピーターや、ミニッツリピーター・トゥールビヨンなどのバリエーションも増やしていった。自動巻き。18KYG(直径35mm)。個人蔵。
ジェラルド・ジェンタの最高傑作は何か。異論があることを承知で言うと、1989年発表の「サクセス・パーペチュアル」だろう。基本的なデザインは、八角形のケースを持つ「ゴールド&ゴールド」シリーズに依っている。しかしケースをより立体的に改め、加えて風防に八角形のファセットを与えた点が大きく異なる。
60年代後半以降、ジェラルド・ジェンタは薄型時計のデザインで成功を収めた。続いて彼が取り組んだのは、薄型時計の立体化である。ベゼルとケースを分けるのではなく、一体化させ、そこに立体感を加える。ジェンタはゴールド&ゴールドにブランパン風の(段を与えた)ベゼルを加えることで、薄型化と相反する課題、立体感に対してひとつの解答を与えた。しかしサクセスでは、ケースサイドやベゼルを太らせることで、いっそう立体感を強調してみせた。薄型時計の限界に挑んだ造形、と言えるかもしれない。
自身の言とは逆に、ジェンタは常にコストを念頭に置いて時計のデザインを行ってきた。「ラグを延ばすと製造コストが増す」と漏らした彼が、他社向けにこれほど立体的な意匠を試みた例はない。しかし当時のジェラルド・ジェンタSAは貴金属ケースの時計以外を決して作らなかった。加工しやすい貴金属ならば、造形の可能性は大きく広がるだろう。
確かにサクセスは大きな成功を収めた。この時計に使われたモチーフを、以降のジェンタが幾度となく転用したことからも、それは理解できる。2001年発表のジェラルド・チャールズ「カレ」も、そう言って差し支えなければ、サクセスの焼き直しである。
薄型時計で名声を得たジェラルド・ジェンタ。そのキャリアの頂点がサクセス・パーペチュアルであるのは間違いないが、以降のジェンタがこの時計を超えられなかったことも、また事実なのである。