TORIC CHRONOMÈTRE
原点回帰を果たしたニューベーシック
トリック クロノメーター
約20年ぶりの復活を果たした、トリックのベーシックモデル。傑作自動巻きのCal.PF331を、厚さ9.5mmの薄いケースに載せている。自社製のケースや文字盤を持つにもかかわらず、価格はよく抑えられている。自動巻き。18KWGケース。径40.8mm。30m防水。184万円。
約20年ぶりの復活を果たした、トリックのベーシックモデル。傑作自動巻きのCal.PF331を、厚さ9.5mmの薄いケースに載せている。自社製のケースや文字盤を持つにもかかわらず、価格はよく抑えられている。自動巻き。18KWGケース。径40.8mm。30m防水。184万円。
ミシェル・パルミジャーニが狙った通り、ケースに間延び感を与えないモルタージュ装飾は、ケースの厚い複雑時計にはうってつけだった。1996年以降、トリックコレクションがハイコンプリケーションを中心にバリエーションを増やしていった理由である。しかし2017年にパルミジャーニは、ベーシックな3針の「トリック クロノメーター」を加え、トリックコレクションの再構築を決めた。
ミシェル・パルミジャーニは、既存のコレクションを活性化させ、基本的なモデルを加えたかったと説明する。ではなぜ、ヒット作のトンダではなく、昔懐かしいトリックを選んだのか? それは「コレクションとして、きちんとキープできていないと考えたから」。
同社CCOを務める、スティーブ・アムシュテュッツは次のように補足する。「トンダとトリックは同じラウンドケースですが、性格はまったく違います。トンダはモダンでアーバン、対してトリックには、修復師としてのパルミジャーニの経験と美意識が投影されています。よりクラシカルなテイストを持つコレクションと言えるでしょう」
パルミジャーニの経験が、とアムシュテュッツが述べた通り、トリック クロノメーターの開発指揮を執ったのは、再び表舞台に立ったパルミジャーニ本人だった。新規の開発にあたって彼が注力したのが、ケースサイドとラグの形状である。「同じように見えて、細かく改良は加えています。2017年のモデルは5世代目ですね」。もちろん、ケースや文字盤、そしてムーブメントの仕上げも、第1作に比べてさらに質を高めている。
1996年以降、内外装の自製化を進めてきたパルミジャーニ。新しいトリック クロノメーターには、時計メーカーとしてのパルミジャーニ・フルリエの成熟がいかんなく反映されている。
(左)パルミジャーニ・フルリエの文字盤は、すべて関連会社のカドランス・エ・アビヤージュで製造される。わずかに荒らした下地と、薄いメッキが大きな特徴だ。最近の文字盤のような分かりやすさはないが、わずかに荒れたテクスチャーが、高いクォリティを示す。(右)ベゼルに施されたモルタージュ装飾。スタンピングでない証拠に、それぞれの溝にはわずかに切削痕が残っている。消すことは容易だが、あえて残す点がパルミジャーニらしい。
パルミジャーニが言うところの“5代目のケース”。直径は大きくなったが、ラグを大きく曲げて装着感を改善している。またベゼルを薄く仕立てたのも現代風である。
(左)搭載するのは、クロノメーター仕様のCal.PF331。片方向巻き上げのオーソドックスな自動巻きだが、仕上げと感触は今なお第一級だ。なお本作は、プロトタイプのため緩急針付きだが、製品版ではフリースプラング式のテンプを採用する。(右)トリックの大きな特徴が、ミドルケースにロウ付けされたラグ。ミドルケースとラグの一体成形が当たり前となる中、パルミジャーニは頑なに古典的な手法を採用する。製造は関連会社のレ・アルティザン・ボワティエ(旧ブルーノ・アフォルテ)。2000年からサンド・ファミリー財団の系列企業となり、パルミジャーニ・フルリエの製造拠点となっている。