カレンダー機構 第2回「永久カレンダー」

2019.05.23
GMT±パーペチュアル

特許のGMTと永久カレンダー機能を融合したユリス・ナルダン「GMT±パーペチュアル」(1999年初出)では、時針のタイムゾーン変更と連動して、永久カレンダーの先送りと逆戻しが可能。1時位置のビッグデイト、6時位置に西暦下2桁表示も独特。写真は2007年発表の後継モデル。

 さらに少々異色の永久カレンダー機構について紹介したいと思う。悠久の時のロマンに浸るというよりは、こちらは、現実的で実用性を第一とする機構だ。それは、ユリス・ナルダンが1999年に開発した「GMT±パーペチュアル」に搭載されている。この腕時計は、ボタンを押すだけで時針が前後にジャンプしてタイムゾーンの変更が容易にできるGMT機能に、西暦の末尾2桁・月・日付・曜日の4表示による永久カレンダーを組み合わせたものである。

 ふつうの永久カレンダーはその機構に逆戻しを想定していない。つねに現在から未来へと進むのみで、過去に戻るという発想はないからだ。ましてや、時差を超えて行き来する旅のシーンで永久カレンダーを使うことも考えていない。ところが使い勝手の良さを旨とするトラベルウォッチの「GMT±パーペチュアル」は、時間の逆戻しができるGMT機能に連動させて永久カレンダーのほうの逆戻しも可能にしたのである。永久カレンダーの逆戻しは機構の損傷を招くと恐れられていただけに、それは驚くべき快挙だった。さらに加えて永久カレンダーの各表示の設定を修正用プッシャーなどを使わず、リュウズのみですべて行えるのも画期的だ。ユリス・ナルダンの頭脳ルードヴィッヒ・エクスリン博士が考案したこのような秀逸な仕組みは、永久カレンダーにおいては世界初であり、なおかつ唯一のものだった。