ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ(GPHG)2024の授賞式が11月13日(水)に開催。各部門における最高峰のウォッチメイキングを象徴する時計の数々が表彰された。ノミネート後、GPHGアカデミー会員に認められ、最終選考に進んだ各モデルの受賞理由について思いを馳せたい。
GPHGが今年の受賞作品を発表!
2024年11月13日(水)、ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ(GPHG)の授賞式が開催された。この式典では「金の針賞」をはじめ、各部門の受賞作品が発表されており、その部門は20にもおよぶ。
本記事で、各部門の受賞作品をまとめて紹介する。
最高位 金の針賞(AIGUILLE D’OR Grand Prix)
自動巻き(Cal.52640)。54石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約7日間。Ptケース(直径44.4mm、厚さ15mm)。5気圧防水。要価格問い合わせ。
4年に一度の閏年を判別するだけではなく、その例外として、100で割り切れる年は平年、400で割り切れる年は閏年とするというグレゴリオ暦までもを機械的にプログラムしたセキュラーカレンダー搭載モデルが本作だ。すなわち、400年周期での正確さを誇るのだ。また、約4500万年に1日しか誤差が生じない超高精度なダブルムーンフェイズを搭載していることも、特筆すべき点である。
メンズウォッチ賞
手巻き。1万8000振動/時。パワーリザーブ約60時間。Ptケース(直径39mm、厚さ13.38mm)。30m防水。13万4900スイスフラン(税別)。
ムーブメントは裏返しになっており、時刻を読みながら正面からその美しさと技術を鑑賞することができる「KV20i Reversed」。ムーブメントはテンプに直接衝撃を与えるふたつの脱進機ホイールを備えているため、特に注目に値すると言える。この革新的な構造により、スイスレバー脱進機よりも少ないエネルギーで効率が向上し、日常使用において、耐久性、安定性、長いパワーリザーブなど、注目すべき利点が得られるのだ。
メンズ コンプリケーション ウォッチ賞
手巻き。3万6000振動/時。パワーリザーブ約96時間。Tiケース(直径43.3mm、厚さ13.85mm)。30.99m防水。40万スイスフラン(税別)。
メンズ コンプリケーション ウォッチ賞として選ばれたのは、ドゥ・ベトゥーンの「DB Kind Of Grande Complication」である。丸みを帯びたケースの中には、ひとつのキャリバーで8つの異なる複雑機構 (永久カレンダー、球面ムーンフェイズ表示、逆行月齢と閏年、ブルーチタンの超軽量トゥールビヨン、ジャンピングセコンド、パワーリザーブ、および時と分の二重表示) が隠されている。各機能の表示は表裏のダイアルで確認可能だ。
レディースウォッチ賞
自動巻き。パワーリザーブ約36時間。18KWGケース(直径33mm)。30m防水。1465万2000円(税込み)。
ヴァン クリーフ&アーペルは、3つの作品が受賞を果たした。ひとつ目は「レディ ジュール ニュイ ウォッチ」。24時間かけて1回転するディスクによって、星々が空を巡り、時の流れを伝えるというロマンチックな1本である。日中はギヨシェ彫りを施したイエローゴールドの太陽がダイアルを照らし、夜にはダイヤモンドをセットした月が満天の星を見守るというのもユニーク。宇宙の広大さと魔法のような星空の美しさを表現するのは、ムラーノ アベンチュリンガラスの深い碧色である。
レディース コンプリケーション ウォッチ賞
自動巻き。パワーリザーブ約36時間。18KWGケース(直径38mm)。3気圧防水。2851万2000円(税込み)。
同じくヴァン クリーフ&アーペルより、「レディ アーペル ブリーズ デテ ウォッチ」がレディース コンプリケーション ウォッチ賞の最高峰に輝いた。蝶がマザー・オブ・パールダイアル上で優雅に遊ぶ様は、最高峰と呼ぶのにふさわしい。
タイムオンリー部門賞
自動巻き(Cal.HMC500)。26石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約74時間。SSケース(直径39mm、厚さ10.9mm)。120m防水。534万6000円(税込み)。
ケースとブレスレットが一体型となったフォルムや、スポーツウォッチでありながらもケース、ブレスレットを薄く設計し、かつハイレベルな仕上げを与えることでドレッシーな印象を与えたラグジュアリースポーツウォッチ。本作はグラン・フー・エナメルの“フュメ”ダイアルもアイコニックだ。打痕模様を打ち出したダイアルのベースに 3 色の顔料を使用したこのダイアルは、H.モーザーを特徴付ける要素のひとつである。ブランドやモデル名などといったロゴを持たないミニマルなダイアルは、グラデーションがかった意匠をいっそう引き立てていることが分かる。
アイコニック ウォッチ賞
自動巻き(Cal.1200P1)。25石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約44時間。18KYGケース(直径38mm、厚さ7.45mm)。50m防水。1179万2000円(税込み)。
「ピアジェ ポロ 79」のデザインは、1979年のオリジナルモデルのデザインをほぼ忠実に再現しおり、まさに“アイコニック”。ダイアルからケース、ブレスレットまでは、ゴドロン装飾とサテン仕上げの連続した組み合わせにより、完全に一体化したかのようなデザインを持つことが特徴である。外装の素材は18Kイエローゴールド。もちろん、必要十分な耐衝撃性と防水性を備えている。オリジナルモデルではクォーツムーブメントを搭載していたが、本作は自社製の薄型自動巻きムーブメントCal.1200P1を採用。巻き上げ効率を高めるためのゴールド製マイクロローターや、随所に施された仕上げをシースルーバックから鑑賞することが可能だ。
トゥールビヨン賞
手巻き(Cal.DR001)。19石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約80時間。18KYG(縦38.6×横35.5mm、厚さ9.2mm)。30m防水。世界限定20本。参考価格14万スイスフラン。
ダニエル・ロートブランド復活の第1作目として登場した「トゥールビヨン スースクリプション」。1989年に登場した同ブランドの初期の作品をベースに、現代的にリメイクした。ダブルエリプスケースと手巻き式トゥールビヨンムーブメントを採用。ケースは、わずかに改良を加えることで装着感が高められている。
カレンダー&アストロノミー ウォッチ賞
手巻き(Cal.LF126.02)。25石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約80時間。18KRGケース(直径40mm、厚さ12.9mm)。30気圧防水。ピンバックルモデル:1496万円(税込み)。フォールディングバックルモデル:1551万円(税込み)。
ブランド初のムーンフェイズ搭載モデルがカレンダー&アストロノミー ウォッチ賞を獲得。職人がアベンチュリンガラスに彫り上げた月と星は、さらにホワイトペイントとスーパールミノバを手作業で塗布されたうえで、高温焼成されている。月の表面のクレーター模様も手作業でエングレービングし、サブダイアルは美しい半透明のブルーに仕上げたエナメルで覆われた。2023年に「グランド・スポーツ トゥールビヨン パシュート」でジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ(GPHG)のトゥールビヨン賞を受賞したことも記憶に新しいブランドである。
MECHANICAL EXEPTION 賞
手巻き。1万8000振動/時。パワーリザーブ約240時間。Tiケース(直径46.3mm、厚さ17.85mm)。30m防水。世界限定60本。70万2650スイスフラン(税別)。
時計製造の歴史で初めて、すべてのワールドタイマー愛好家を悩ませてきたサマータイムの問題を解決したモデルが本作だ。コレクターは、変更された国または変更されなかった国 (現在、変更されるのは世界の約3分の、すなわち70カ国のみ) に合わせてワールドタイマーを設定する必要があったが、いずれにしても、世界の大部分は常に相違があった。「Récital 28 Prowess 1 」は、年間のどの時期であっても時計が常に正確であるため、ワールドタイマーに革命を起こしたと言える。
クロノグラフ賞
手巻き。1万8000振動/時。パワーリザーブ約45時間。Tiケース(直径42mm、厚さ11mm)。30m防水。世界限定10本。13万スイスフラン(税別)。
スイスのサントクロワにあるシルヴァン ピノーの工房でほぼ完全に手作業で作られたモノプッシャー クロノグラフ「Chronograph Monopoussoir Sylvain Pinaud x Massena Lab」。水平クラッチ、そして完全に統合されたコラムホイールクロノグラフを備えた手巻きムーブメントによって駆動している。チタン製ケースの側面にあるサファイアクリスタルのウィンドウ、そしてトランスパレント式のケースバックにより、ほぼすべての角度からダイアルとムーブメントを鑑賞することができる。
スポーツウォッチ賞
自動巻き。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径38mm、厚さ12.8mm)。600m防水。4,950スイスフラン(税別)。
マレーシア生まれのMINGが、スポーツウォッチ賞を受賞。本作は、回転ベゼルの機能をスーパールミノバ X1を塗布したサファイアクリスタル製ダイアルに移動するという、独創的なスタイルを持つモデルだ。4時位置の密閉されたリュウズは60クリックの単方向メカニズムを介してダイアル全体を回転させるという仕様になっている。多くのダイバーズウォッチのリュウズは防水性を保つためにねじ込み式となっているものだが、「Bluefin」の場合、4時位置のタイミングダイアルを設定するためのリュウズは、水中で使用するように設計されている。すなわち一方向にのみ回転し、二重ガスケットで覆われているため、引き出すことができない設計だ。
ジュエリーウォッチ賞
クォーツ。18KRG✕18KWG(直径16mm、厚さ9mm)。ユニークピース。78万スイスフラン(税別)。
ジュエリーウォッチ賞の最高峰にふさわしい、きらびやかなモデルがショパールの「ラグーナ ハイジュエリー シークレットウォッチ」だ。同ブランドの職人たちは、この傑作の中に、海のモザイクを細心の注意を払って再現した。ピンク、バイオレット、パステルブルーのサファイア(合計10カラット)、トパーズ(4.28カラット)、天然真珠(1.63カラット)、エメラルド(1.47カラット)、ダイヤモンド(1.28カラット)、パープル、デマントイド、マンダリンガーネットがセットされている。
Artistic Crafts Watch 賞
手巻き(Cal.Q474)。2万1600振動/時。パワーリザーブ約38時間。18KWGケース(直径41mm、厚さ11.65mm)。30m防水。世界限定7本。6045万6000円(税込み)。
ヴァンクリーフ&アーペルを魅了する自然の慈愛を表現した時計「レディ アーペル ジュール アンシャンテ ウォッチ」。作品の主役となったのは、朝陽の下で花をつむ妖精の姿だ。ケースバックにはダイアルと呼応するシーンが刻まれ、物語の続きをそっと教えてくれる。サファイア(94個/1.0カラット)、スペサルタイト(56個/0.32カラット)、ターコイズ(13個)、ダイヤモンド(308個/5.69カラット)をセッティングしており、手元で強い輝きを放つ。
小さな針賞 “Petite Aiguille” Watch
自動巻き。2万8800振動/時。パワーリザーブ約46時間。SSケース(直径39mm、厚さ10.3mm)。50m防水。9,905スイスフラン(税別)。
“伝統的に”、分は12時側のダイアルリング上にある大きな青焼きのスティール針で示されるが、「3 Salmon」を非常に特別なものにしているのは時間表示だ。上部のダイアルの下には、3つのセクションに分割されたプレートが配置され、時刻は3本の針で示されるのだ。各針は、ふたつのダイアルの間を異なる長さで走る。針のひとつがスケールの終わりに達すると、次に長いまたは短い針が次の時間スケールの始まりに表示される。現在の針が次の目盛りに移動する前に、2、6、10 の時間が別の目盛りで 2回表示される。シンプルだが、ユニークな逸品と言える。
チャレンジ ウォッチ賞
自動巻き(MIYOTA9015+自社製レトログラードモジュール)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約40時間。SSケース(直径42.6mm、厚さ11.8mm)。日常生活防水。44万円(税込み)。
日本人の片山次朗が創業した大塚ローテックが、見事チャレンジ ウォッチ賞を受賞した。本作は扇型に表示されるアナログメーターが、一度見たら忘れられないアイコニックな意匠となっている。レトログラード式の時分針を同軸に配置しており、スケールの終着点まで針が行き着くと、ゼロ地点に瞬時にフライバックする様子を確認できる。なお、本作はMIYOTA製ムーブメントに自社製モジュールを搭載し、瞬時に帰零する時分針、中央には秒ディスク、中央右に日付表示を実現している。
エコ イノベーション賞
自動巻き(Cal.LUC96.09L)。29石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。C.O.S.C.認定クロノメーター。ルーセントスティール™ケース(直径39mm、厚さ8.92mm)。30m防水。300万3000円(税込み)。
この「L.U.C カリテ フルリエ」モデルは、ショパールが 2022年に財団の唯一の管理者になって以来、同ラベルを授与された最初の時計となる。また、L.U.C カリテ フルリエ ファミリーで初めて、ショパール独自の特性を持つ合金で、少なくとも80%のリサイクル率で生産される「ルーセント スティール™」が素材として用いられている。
Audacity賞
手巻き。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。18KYGケース(縦34mm、横38mm、厚さ7mm)。30m防水。7万265スイスフラン(税別)。
年産わずか12本だけという時計ブランド、BerneronがAudacity賞を獲得した。受賞した「ミラージュ」シリーズは、外観ではなく、ムーブメントから非対称性を引き出した、類稀な形状を持つ時計である。機構を自由に動かせるように設計されたこのムーブメント (大きなバレル、ダイレクトスモールセコンド、懐中時計スタイルのテンワ) には対称性がまったくなく、不完全でありながら意図的なハーモニーが生まれている。
“Horological Revelation” 賞
手巻き。1万8000振動/時。パワーリザーブ約48時間。Ptケース(直径39mm、厚さ12mm)。30m防水。世界限定36本。15万9000スイスフラン(税別)。
「サブスクリプション」シリーズで印象的なデビューを果たしたフランスの若き独立系時計職人レミー・クールは、伝統を継承しノウハウを伝承するという同じ精神で、初の量産時計シリーズである「トゥールビヨン アトリエ」を製作した。ダイアルの中心となるトゥールビヨンは、手作業で面取りされ、磨かれた単一のブリッジによって支えられている。直径13.2mmのトゥールビヨンキャリッジには、3本の磨かれたスポークがあり、ヘアスプリングには手作業で丹念に形成された巻き上げヒゲが採用されている。
クロノメトリー賞
手巻き。2万1600振動/時。パワーリザーブ約40時間。C.O.S.C.認定クロノメーター。SSケース(直径44mm、厚さ12mm)。30m防水。世界限定8本。15万8000スイスフラン(税別)。
フランスのブザンソン天文台、ドイツのグラスヒュッテ天文台、スイスのジュネーブにある「天文台クロノメトリック」で検査と認定を受けた、まさに“トリプル”認定クロノメーターが本作だ。このモデルが搭載する、「セントラル インパルス クロノメーター」の際立った特徴のひとつは、10秒ごとにルモントワールのリズムに従う分針の動き。分針の動きは、それぞれ10秒を6つのステップに分割された独自スケールで表示され、1分で回転する。分針の中央にある小さなポインターが、ルモントワールのリズムと完璧に同期した10秒間隔の読み取りをガイドする。
Special Jury賞
ジャン・ピエール・ハグマン氏は、名だたるウォッチメーカーに複雑時計のケースを製作していた、当代きってのサプライヤーだ。スターキャリバーも、トノウ カーヴェックスも、彼がいなければ実現しなかっただろう。そのレジェンドにケースを作ってほしいと熱望したレジェップ・レジェピは、引退したハグマンを口説き落とし、招聘に成功したのだという。2019年より、工房ごとアクリヴィアに加わっている。