左がチーズを流しこんで作られたケースが特徴の100%スイス製時計「スイス マッド ウォッチ」。右はスマートフォンに異議申し立てをする意味で作られた「スイス アルプ ウォッチ」。2本で落札価格10万スイスフランの値がついた。
5月15日にジュネーブで行われたクリスティーズのオークションにおいて、H.モーザーが製造した「スイス マッド ウォッチ」(オンリーピース)と「スイス アルプ ウォッチ」が落札された。気になる落札価格は2本で10万スイスフラン。H.モーザーがこの売却によって得た収益は全て、スイス時計文化基金に寄付され、時計製造業における見習い職人の支援と、時計の美術工芸保全に使われるという。
スイス マッド ウォッチは、今年改定されたばかりの時計におけるスイスメイドの規定について同社が異議申し立てを行う意味で製造されたものだ。部品の60%がスイスで生産されたものであればスイスメイドを名乗ることが許されるという改定に不十分さを感じた同社は、文字盤からスイスメイドの表記を一切はずし、なおかつこの時計を製造したのだ。ストラップはスイスの牛皮製、ケースは複合材料ITR2に近隣の農場で精査れた〝チーズ〟を混ぜ込んで作られている。文字盤、ムーブメントが純然たるスイスメイドであることは言うまでもない。
2018年以降もクリスティーズを通して「スイス ウォッチ シリーズ」を毎年1本ずつ発表するというH.モーザー。彼らのアイロニカルな姿勢が旧態依然としたスイス時計業界にさらなる一石を投じることになるだろうか。期待して来年を待ちたい。
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