NAOYA HIDA & Co.の最新作は、初めて時・分・秒以外の機能を与えた「NH TYPE 3A」だ。18〜19世紀につくられた懐中時計を彷彿とさせるムーンフェイズを6時位置に配し、37mmという控えめなサイズの中にディティールを凝縮させた。
手巻き(Cal.3021LU)。18石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。SS(直径37mm、厚さ10.7mm)。5気圧防水。264万円(税込み)。
極限まで大型化されたムーンフェイズ
NAOYA HIDA & Co.は2021年の新作として「NH TYPE 3A」を発表した。同社は時計・宝飾業界での長い経験を積む飛田直哉氏が2018年に創業した、ごく少数の高級時計を手がける日本の新しい時計ブランドだ。スモールセコンドを持つ「NH TYPE 1」に始まり、センターセコンドを配した「NH TYPE 2」を製作。それぞれは幾重にも改良を重ねながらアルファベット順にモデル名が更新され、各10本前後の限られた本数を製作してきた。
今回発表された「NH TYPE 3A」は同社で3番目となるモデルであり、初めて時・分・秒以外の機能を搭載した。時分針+ムーンフェイズというシンプルな構造を採用し、18〜19世紀に製作された懐中時計を彷彿とさせるディティールを持っている。
それに加えてダイアル上に11個配されたローマンインデックスも手作業によって彫られている。これまで同様、彫った部分に合成漆(カシュー)を流し込み、微細なブラスト処理を施したダイアル表面とのコントラストが際立つ、独特な仕上がりだ。
多くの時計の3倍近い厚みを持つ洋銀製ダイアルの上で、一層目を引くブルースチールの針は、非常に丸みを帯びた造形である。針の製作はプレス加工が一般的だが、本作の針は立体感を持たせるために切削によって加工され、一般的なものに比べて2倍以上の厚さである。視認性を高めるため、分針の先端が曲げられていることにも注目だ。
37mmのケースに職人技を凝縮
直径35mm以下が一般的だったヴィンテージウォッチと比較すると、わずかに大型化された直径37mmのケースは、世界最高峰レベルの微細加工機を用いて製造されている。1930年代から60年代につくられた時計のデザインを取り入れたフォルムを持ち、曲面を描く新設計のベゼルを備えた。ソリッドなケースバックは、厚さを抑えるためスナップ式を採用する。
これまでにも同社の時計に用いられ、本作にも使用されているSUS904Lステンレススティールは、時計の外装において理想的な高い耐食性を持つ素材である。高価で加工が困難であるため、この素材を積極的に採用するメーカーは少ないのが現状だ。
数ミクロンの精度で切削され、ステップ構造のベゼルや掘り込まれたロゴなど、複雑な形状を作り上げることに成功した。
愛好家に響く巻き心地
本作に搭載されているムーブメントは、これまでのモデル同様ETA7750系をベースとしながら独自のカスタマイズを加えている。クロノグラフと自動巻き機構を完全に取り払い、新たな輪列受けやコハゼを組み込んだ。コハゼには後退式を採用し、ヴィンテージの高級機のような、確かなクリック感を持つ巻き心地を楽しめる。
また本作では、ETA7751に搭載されているムーンフェイズ機構を採用しているため、ディスクは59日間で1回転し、リュウズを1段引き出した位置で調整する。
アルカンターラのストラップを採用
クラシカルな外観を持つ時計本体に合わせられたストラップは、時計用のストラップを数多く手がけるフランスの革製品メーカー、アトリエ ジャン・ルソーのものを採用している。表は明るいブルーカラーのアルカンターラで、裏面はベージュカラーのカーフレザーだ。時計本体が持つ、柔らかな雰囲気と非常に相性の良い質感である。
「NH TYPE 3A」は、オーダーに応じて5点から10点のみが製作される予定で、予定販売数を超えた後は改良を加えた「NH TYPE 3B」に移行するため、入手困難な希少性の高いモデルである。
実機を触接見る機会は極めて少ないのが現状だが、興味のある方には一度目にしていただきたい逸品だ。美しい写真が投稿されている、同社のSNSをこまめにチェックするのも良いだろう。
Contact info: NAOYA HIDA & Co. naoyahidawatch.com
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