ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ2021 受賞モデル総覧

クロノグラフ賞（Chronograph Watch Prize）

ゼニス「クロノマスター スポーツ」

　2021年にリニューアルされたゼニスのフラッグシップモデル「クロノマスター」。「Cal.エル プリメロ3600」を搭載することによって、1/10秒の計測が可能となっている。この特徴を最大限に活かすべく、10秒で1周するセンターのクロノグラフ針に対応する目盛りは、幅広のブラックセラミックス製ベゼルにはっきりと刻まれ、計測結果を読み取りやすくしている。シースルーバックからは、この伝説的なムーブメントの細部をはっきりと確認することができる。

ダイバーズウォッチ賞（Diver's Watch Prize）

ルイ・ヴィトン「タンブール ストリート ダイバー スカイラインブルー」

　太鼓に着想を得たアイコニックなケースデザインが特徴の「タンブール」に登場したダイバーズモデル。ブラックPVDのステンレススティールケースと鮮やかなブルーを組み合わせたスタイリッシュなデザインは、その名の通り街中での着用にもマッチする。回転式のインナーベゼルは1時半位置のリューズによって操作可能であり、インナーベゼル上の“V”と長針の“V”を合わせることで“X”が現れるという遊び心も持ち合わせる。防水性を100mに抑えた結果、12.8mmという使いやすいサイズにまとめ上げられている。

ジュエリーウォッチ賞（Jewellery Watch Prize）

ショパール「フラワーパワー」

　その名の通り、花の持つ可憐さと生命力に満ちあふれた様を時計全体で表現したモデル。ピンクマザーオブパールのダイアルには12個のピンクサファイアがセットされ、ダイアルを取り囲むようにペアシェイプのダイヤモンドとピンクサファイア、ブリリアントカットダイヤモンド、ラウンドカットピンクサファイアからなる無数の花が咲き誇っている。ケースやブレスレットに用いられている素材は、フェアマインド認証を受けたエシカルホワイトゴールドだ。

工芸賞（Artistic Crafts Watch Prize）：文字盤等に芸術的な要素を持つモデル

MB&F「レガシー・マシン スプリットエスケープメント－MB&F x エディ・ジャケ “80日間世界一周”」

　ダイアルに描かれているのは、ジュール・ヴェルヌ作「八十日間世界一周」の世界観。この小さなキャンバスに物語の躍動感を与えているのは、エングレーバーであるエディ・ジャケだ。表面上は平らに見えるダイアルだが、搭載されるムーブメントの特性上、ダイアルの裏面は場所によって厚さが異なる。それらを慎重に確認しつつイラストのレイアウトを考案し、作品として落とし込むことには必然的に高い技術を要される。数多の表面処理を使い分けることによりダイナミックに仕上げられた今作は、まさに芸術作品と呼ぶにふさわしい。

小さな針賞（“Petite Aiguille” Watch Prize）：販売価格が3500〜1万スイスフランのモデル

チューダー「ブラックベイ セラミック」

　スイス公認クロノメーター基準を超える高精度や、1万5000ガウスもの超耐磁性の他、時計の性能を包括的に検査するマスタークロノメーター認定を受けたモデル。チューダーの実力を世に示したマイルストーンとして、発表と同時に大きな話題となったことは記憶に新しい。ケースはサンドブラストを基調としつつ、面取部にポリッシュを取り入れることで立体感を高めたブラックセラミック製。ケースに合わせ、ムーブメントもブラックに仕上げられている。

チャレンジ賞（Challenge Watch Prize）：販売価格が3500スイスフラン以下のモデル

シガデザイン「ブループラネット」

　ダイアル中央に配された大きな地球儀が目を引く、シガデザインの「ブループラネット」では、回転する地球儀そのものが針の役割を担っている。直径46mm、厚さ15mmと比較的大型であるものの、ケースがチタン製であるため、着け心地にも配慮されていることが分かる。これだけのユニークな構造を持ちながらも破格と言えるプライスも魅力だ。なお、中国のブランドがGPHGを受賞するのは今回が初めてであり、今作は快挙を果たした一本としても大きな意味を持つモデルとなるだろう。

リベレイション賞（Horological Revelation Prize）：設立から10年未満のブランドとそのモデル

ファーラン・マリ「ミスター・グレイ Ref.1041-A」

　2019年創業の新興ブランドであるファーラン・マリ。そんな同社が今年の8月に発売し、瞬く間に完売となったモデルが今作である。評価されたのは、1940年代頃のクロノグラフに範をとった端正なデザインだけでない。ケースバックの内側にまでペルラージュを施すほどの各部に施された入念な仕上げが、世界中の時計マニアの心をくすぐった。搭載されるムーブメントはセイコー製のメカクォーツ「Cal.VK64」。日常使いに適したハイクオリティなモデルである。

勇猛果敢賞（Audacity Prize）：驚くべきデザインや先駆的な機能を持つモデル

ルイ・ヴィトン「タンブール カルペ･ディエム」

　デザインのインパクトもさることながら、その独特の時刻表示方法にも驚かされる超複雑ムーブメントを搭載した1本。ケース2時位置の蛇をかたどったプッシュボタンを押下することで、ダイアル上の蛇の頭が動き時を表示し、尻尾が分を指し示す。スカルの顎が開くことで現れるのは、今作のテーマである“Carpe Diem”の文字。砂時計はパワーリザーブインジケータとして機能する。エナメルや彫金、そして高度な時計製造技術を駆使して誕生した、高い完成度を誇るオートマタである。

イノベーション賞（Innovation Prize）：革新的な機構を搭載したモデル

ベルナルド・レデラー「セントラル インパルス クロノメーター」

　ブレゲのナチュラル脱進機を改良した独自の脱進機を備える「セントラル インパルス クロノメーター」。香箱からガンギ車までの輪列をふたつ備え、その証拠に二つのインダイアルはどちらもスモールセコンドとして機能する。左右対称の輪列配置に加え、ルモントワール機構等見どころが満載なこのムーブメントは、ドーム型のサファイアクリスタルを用いたシースルーバックから鑑賞可能。ダイアルはシンプルながら、ブロック状のギヨシェと外周のサテン仕上げがモダンな印象をもたらしている。