薄型時計を得意とするブルガリが、再び新境地を切り開いた。今回披露された世界最薄の機械式時計「オクト フィニッシモ ウルトラ」が、さらなる薄さへの挑戦を実現し、2022年、世界記録を打ち出したのだ。
驚くべき世界記録を樹立した、8本目のオクト フィニッシモ
ブルガリは、8角形を模った独自のデザインが魅力のオクト フィニッシモ コレクションに加わる、8本目のモデル「オクト フィニッシモ ウルトラ」を発表した。
自動巻き(Cal.BVL180)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。Tiケース(直径40mm、厚さ1.80mm)。10m防水。世界限定10本。予価5221万7000円(税込み)。
まず、特筆すべきは厚さ1.80mmという驚くべき数値だろう。ちなみに、500円玉はオクトフィニッシモ ウルトラの厚みと同じく1.80mmなので、手元の500円玉でその薄さを体感していただきたい。
ムーブメントだけでなく、ケースバックから風防のサファイアクリスタルの上部に至るまで、時計の外装全体がさらに薄くなっている。機械式時計の世界最薄記録を再び塗り替えたこととなり、ブルガリは現代のオートオルロジュリーの新境地を切り開いたと言えるだろう。
ブルガリのウォッチ部門のマネージング・ディレクターのアントワーヌ・パンは、このプロジェクトを次のように振り返る。
「『できるだろうか?』3年前にこう質問をされるや否や、我々のチームはこう答えました。『どうやって進めましょうか?』と。挑戦する力はブルガリのDNAに宿っています。“ウルトラ”という言葉には、限界を超え、思い切った手段で取り組むという思いが込められており、私たちはこの考えを社内で大切にしています」
ブルガリが長年にわたり培ってきた専門技術をもとに生まれた本作は、常識を超えた挑戦だったと言えるだろう。世界最薄でありながら、堅牢性も備えた機械式時計を作るという目標を追い求める推進力となっているのは、職人たちの熟練技術と再構築することができる創造性を備えた情熱が必要不可欠である。
そしてブルガリのプロダクト クリエイション エグゼクティブ ディレクターのファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニは次のように述べた。
「ムーブメントのデザインだけでなく、ケースやケースバック、ブレスレット、フォールディングバックルにおいても常識を覆すことが求められた8度目の記録への挑戦は、最も困難なものでした。この薄さを実現するためには、考え方を見直すだけでなく、さまざまなスキルを駆使し、複数の素材を用いて工夫を重ね、多くの新たな制約に適応していかなければならないのです。こういった意味でオクト フィニッシモ ウルトラは、超小型化に代表されるように、可能性に満ちたフィールドから生まれた、紛れもない最高の複雑機構なのです」
コレクションのすべてのデザインコードを継承しつつも、洗練されたエレガントなデザインからさらに一歩踏み出すこと、それがこのプロジェクトに携わる研究開発チームが設定した追加要素であり制約だった。こうして受け継がれてきたコードは特に、象徴的なサンドブラスト仕上げのチタンを用いたモノクロームのスタイルや径40mmの8角形ケース、ケースと同じ薄さの一体型プレスレットで表現されている。
詳細が伏せられているデジタルエコシステム
ラチェットホイールに施されたQRコードをスキャンすると、限定10本の各ウォッチの真正性と唯一無二性を保証する、NFT専用アートワークを添えられて届けられる。また、それぞれのオーナーは専用のデジタルユニバースにアクセスすることができ、こうした意味でオクト フィニッシモ ウルトラは超小型化から非物質化への移行を映し出すコレクションとなった。
なお、このデジタルエコシステムの全体像は、最初のオクト フィニッシモ ウルトラが市場に登場したときに公開される予定だ。物理的な世界で圧倒的な製衡を収めた本機と、そのメカニカルな独創力の結集が見られるのではないだろうか。
8件の特許出願
この薄さを実現するためには、ゼロからすべてを作り直し、革新的な解決策を見出す必要があったことは明らかである。ジュウ渓谷とヌーシャテルにあるブルガリの技術チームと、ラ・ショー・ド・フォンに位置する革新的なムーブメント開発のスペシャリストチームによる3年におよぶ研究開発が必要だったという。
8件にもおよぶ特許が出願されたオクト フィニッシモ ウルトラは、あらゆる面に革新的な試みが組み込まれているのだ。
①ケースバックをメインプレートとして使用し、そこに170個の部品から成るCal.BVL180を組み込んだ構造になっている。
②ブレスレットのリンクのボリュームも全面的に見直し、1.80mm厚のケースの薄さと連なるようにフィットしつつも、従来機のブレスレットの2分の1の薄さを実現している。
③さらに、フォールディングバックルも新しいパラメーターに従って設計がし直されている。
④直径40mm、厚さ1.80mmの時計に求められた全体の剛性を満たすため、高密度、高硬度、高耐久性を叶える、炭素とタングステンを組み合わせたタングステンカーバイドを用いたミドルケース、ベゼル、チタンラグ、ケースバック/メインプレートを開発している。
⑤表面全体を活かすために、時・分ダイアル、50時間のパワーリザーブを備える大型の香箱、エスケープに工夫を加えベゼルの開口部の円形形状をシンプルにした。
⑥手首に装着した状態でもリュウズを操作しやすいように、巻き上げと時刻合わせのふたつのリュウズを水平に配置した。
⑦前例のない薄さを実現するために同じ手法を駆使し、すべての機能を同一の水平面上に配置している。
⑧歯車列を乱すことなく時刻合わせを行うことができるディファレンシャルギア機構を搭載している。
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