カシオG-SHOCKは永遠に不滅です! 初代モデル、デザインを永久に保護する「立体商標」を獲得

2023.07.18

「きのこの山」「カーネルサンダース」「ヤクルトの容器」「ペコちゃん人形」に「スーパーカブ」。共通するのは、見ただけで何かわかること、そして「立体商標登録」で、そのカタチが保護されていることだ。いわば「アイコンのお墨付き」である立体商標登録。そこに新しく加わったのが、カシオのG-SHOCK初号機である。

DW-5000C

1983年4月に販売が開始されたG-SHOCKの初代モデル「DW-5000C」。
広田雅将(クロノス日本版):写真・文
Photographs & Text by Masayuki Hirota (Chronos Japan Edition)


デザイン保護の切り札「立体商標登録」

 多くのメーカーは、新しく製品を作ると「意匠登録」を行う。こういうデザインができました、つきましては他社が真似できないように登録します、というものだ。しかし、その造形が広く認知されると、意匠権よりもはるかに強い権利を得られるようになる。それが1997年に始まった「立体商標」だ。名前が示す通り、これは立体的な形状そのものに、商品やサービスを識別させる機能があるものとして、商標登録を認める制度である。

これが立体商標を得た初代G-SHOCKの造形。カタチだけで認識されることが必要なため、ロゴと時計部分は隠されている。

 意匠登録で得られる意匠権は有限だが(最長で25年)、立体商標は、10年ごとに更新さえすれば、半永久的に権利を持つことができる。つまり、立体商標を得ると、他社は模倣品を作れなくなるわけだ。少なくとも、他社への抑止力としては、格段に強力なのである。2023年6月26日、カシオは初代G-SHOCKのデザインで、この立体商標を登録した(第6711392号)。日本の時計メーカーとしては初の快挙であり、ロゴがない形状自体の登録も、時計全体のデザインとしては日本初となる。


誰もが欲しい立体商標。しかし登録は難しい

 メーカーにはとてもありがたい立体商標制度。しかし、独占排他権である立体商標は、登録へのハードルが極端に厳しいことで知られている。2022年に国内で登録された商標は約18万件。そのうち、立体商標登録は約200件しかなく、文字のないものに限れば50件、さらに使用による識別能力が適用されたものは3件しかない。

 事実、今までに立体商標を得たデザインには、冒頭で挙げた「きのこの山」「カーネルサンダース」「ヤクルトの容器」「ペコちゃん人形」「スーパーカブ」に加えて「バーキン」「カップヌードルのカップ」「キョロちゃん」「キューピー人形」「コカ・コーラの瓶」と、誰でもわかるものしかない。つまり、ちょっと知られている程度では、容易に立体商標は得られないのだ。看板として使用されるものなら基準は広いようだが、商品が立体商標を得るのはかなり難しい。

DW-5000C

立体商標登録を得た初代G-SHOCK「DW-5000C」。1983年4月発売。このモデルを皮切りに以降、カシオは延べ1億4000万本ものG-SHOCKを製造するようになった。

 カシオが、初代G-SHOCKを立体商標に登録しようと考えたのは2020年秋のこと。21年4月には出願され、23年の6月26日にめでたく登録となった。経緯を説明してくれたのは、このプロジェクトを推進した開発本部 知的財産統轄部 知財渉外部 部長の松村聖子さんと、同部 商標意匠室 室長の米倉雅子さんだ。

「40年前に発表されたG-SHOCKの初号機はマスターピースです。知的財産とブランド価値を守るため、私たちはG-SHOCKの40周年に向けて立体商標登録を進めました」(松村聖子さん)。

初代G-SHOCKの立体登録を進めたのが、開発本部 知的財産統轄部 知財渉外部 部長の松村聖子さん(左)と、同部 商標意匠室 室長の米倉雅子さん(右)。「G-SHOCKの40周年に登録が間に合ってほっとしました」(米倉さん)。

 もっとも、時計で立体商標を得るのはかなり難しかった、と松村さんは語る。耐久消費財であるうえ、時計の本体ケースとバンドを組み合わせた造形は、今までに例がなく、差別化するのが困難だったからだ。カシオは明かさないが、一度審査にかけたものの、特許庁からは登録を拒否されたという。登録への鍵は認知度の高さ、と考えたカシオの知的財産統轄部は、さまざまな手段で、G-SHOCKの高い認知度を確認していった。

 まず行ったのは、アンケートだった。日本全国の約1100人の16歳以上の男女に、ロゴを隠したG-SHOCKの造形を見せて、それが何かを答えてもらったという。対象者の約6割が、カタチを見ただけでG-SHOCKと答えたというから、かなりの認知度だ。

初代G-SHOCKのデザインは、今なおG-SHOCKの基本であり続ける。トレイに並ぶのは、現行品の一部。「MR-G」のような高価格帯への進出も、立体登録を促した。

 同時にカシオは、広く知られているという証拠も集めた。40年分の雑誌や新聞、メディアの記事などを、段ボール数箱分集めて、特許庁に提出したというから念が入っている。ここまで手をかけた理由は、何をもって高い認知度とするか、という基準が具体的に示されていないため。しかし、消費者アンケートの結果や、十分な証拠資料を提出することで、初代G-SHOCKのデザインは登録の運びとなった。


誰もが認めるアイコンとなった初代G-SHOCK

 カシオが初代G-SHOCKのデザインで立体商標を得た理由のひとつは、間違いなく模倣品対策だ。少なくとも、この登録により、他社は似たデザインの時計や、交換部品(社外品のアウターベゼルなど)を作れなくなる。もうひとつの理由が、ブランド戦略である。

 近年カシオは、マスターピース戦略と称して、G-SHOCKの2000系と、今回、立体商標を得た5000系を前面に打ち出すようになった。高価格帯への進出を考えると、今まで以上の手段で、そのデザインを保護するのは当然だろう。

誕生以来、この40年でG-SHOCKのクォリティも機能も大きく進化したが、初代G-SHOCKのデザインは普遍だ。これはファーストモデルの意匠を色濃く受け継ぐ「GW-5000U-1JF」である。メタルケースとスクリューバックには耐摩耗性を高めるDLC処理を施すほか、マルチバンド6、タフソーラーなどを搭載する。ステンレススティール×樹脂(縦48.9×横42.8mm、厚さ13.5 mm)。20気圧防水。4万4000円(税込み)。

 そのデザイン性と高い認知度で立体商標を得た初代G-SHOCK。1983年の発表から40年を経て、このモデルは、誰もが知るアイコンとして、日本に認められたのである。これは快挙だ。


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