選考委員による選定モデルの詳細

菅原 茂(70歳) 時計ジャーナリスト
「もはやレアなメカか?」

以前はダイアルのビジュアル演出として流行ったが、負荷のかかる反復機構の正確性や耐久性などの問題もあるせいか、今や見るべきはハイブランドの一部モデルのみ。よって評価は難しく、今回はランクなし。

  • ハリー・ウィンストン/HW オーシャン・バイレトログラード オートマティック
  • ブルガリ/オクト フィニッシモ パーペチュアル カレンダー
  • ブレゲ/トラディション レトログラード デイト 7597
  • ヴァシュロン・コンスタンタン/オーヴァーシーズ・ムーンフェイズ・レトログラード・デイト
  • A.ランゲ&ゾーネ/ランゲ1・パーペチュアルカレンダー
  • ウブロ/MP-13 トゥールビヨン バイ-アクシス レトログラード

篠田哲生(46) ウォッチディレクター
「〝必然の逆行〟だから美しい」

時計のダイアルは、基本、円運動の動きで構成される。だからこそ、針が逆行するレトログラード針は、素敵なアクセントとなる。しかし安易にデザインとして取り入れる時計は好まない。スペース確保のためだったり、過去へのオマージュだったり、あるいは世界観を表現するものだったりと、どこかに必然性があると、より魅力的になる。

  1. シャネル/ムッシュー ドゥ シャネル
  2. ハリー・ウィンストン/HW オーシャン・バイレトログラード オートマティック
  3. ジェラルド ジェンタ/アリーナ バイレトログラード プレイングフットボール ミッキーマウスディズニー(完売)
  4. ウブロ/MP-13 トゥールビヨン バイ-アクシス レトログラード
  5. A.ランゲ&ゾーネ/ランゲ1・パーペチュアルカレンダー
  6. ブレゲ/トラディション レトログラード デイト 7597
  7. ジャガー・ルクルト/レベルソ・トリビュート・クロノグラフ
  8. ヴァシュロン・コンスタンタン/オーヴァーシーズ・ムーンフェイズ・レトログラード・デイト
  9. レゼルボワール/GTツアー レーシング
  10. セイコー プレザージュ/Craftsmanship Series SARD019

並木浩一(63歳) 桐蔭横浜大学教授・時計ジャーナリスト
「見た目の派手さこそが『機能』なのでは」

表示系の複雑機構なのだけれど、意味はそこにはないのがレトログラード。バレエ「ドン・キホーテ」のグラン・パ・ド・ドゥのような、ドラマとは無関係に圧巻で壮麗な“必要以上の見せ場”が楽しい。順位はナシです。

  • ブレゲ/トラディション レトログラード デイト 7597
  • ヴァシュロン・コンスタンタン/パトリモニー・レトログラード・デイ/デイト
  • パテック フィリップ/ミニット・リピーター、トゥールビヨン、レトログラード日付表示針付き永久カレンダー Ref. 5316/50P
  • シャネル/ムッシュー ドゥ シャネル
  • ヴァン クリーフ&アーペル/ピエール アーペル ユール ディシ エ ユール ダイヨール ウォッチ
  • ハリー・ウィンストン/プロジェクト Z16
  • ウブロ/MP-13 トゥールビヨン バイ-アクシス レトログラード
  • ブルガリ/オクト フィニッシモ カーボンゴールド パーペチュアルカレンダー
  • A.ランゲ&ゾーネ/ランゲ1・パーペチュアルカレンダー
  • ブランパン/ヴィルレ フライング トゥールビヨン ジャンピングアワー レトログラード ミニッツ

髙木教雄(60歳) ライター
「トリッキーな機構で、より個性を主張する10作」

レトログラードは、個人的に好きな機構のひとつ。動きの面白さに加え、一般的なインダイアルよりも省スペース化がかない、ダイアルが整理できるという点においても優れている。比較的仕組みが簡単で、この機構を得意とするモジュールメーカーも複数存在するため、搭載例は多い。だからこそ、より個性的、あるいはレトログラードであることに意味がある10作を選んだ。

  1. ジャガー・ルクルト/レベルソ・トリビュート・クロノグラフ
  2. ヴァン クリーフ&アーペル/ピエール アーペル ユール ディシ エ ユール ダイヨール ウォッチ
  3. フランク ミュラー/ロングアイランド イレギュラー レトログラード アワー
  4. シャネル/ムッシュー ドゥ シャネル
  5. ヴァシュロン・コンスタンタン/パトリモニー・レトログラード・デイ/デイト
  6. ブレゲ/トラディション レトログラード デイト 7597
  7. ブランパン/ヴィルレ ウルトラスリム
  8. ハリー・ウィンストン/HW オーシャン・バイレトログラード オートマティック
  9. パルミジャーニ・フルリエ/トリック パーペチュアルカレンダー レトログラード
  10. ピエール ドゥロッシュ/TNT ロイヤルレトロ

名畑政治(64歳) 時計ライター
「意外やレトログラード花盛り」

最初、「レトログラードを10本とは結構、無茶だな」と思ったが、実際に探したら、これまでの取材で手に取ったモデルが多いことに驚いた。中でもフランク ミュラー、クロノスイス、ポール・ゲルバーなどは本人にその開発の経緯を伺ったので、とりわけ印象深い。例によって、すべて同列、順位なし。

  • フランク ミュラー/トノウ カーベックス イレギュラー レトログラード アワー
  • クロノスイス/デルフィス サファイア
  • モーリス・ラクロア/マスターピース ムーンフェイズ レトログラード Ref.MP6608-SS001-410-1
  • ジェラルド・ジェンタ/アリーナ レトログラード スマイル ミッキーマウス ディズニー(完売)
  • ジャンイヴ/SECTORA II AUTOMATIC
  • ヴァシュロン・コンスタンタン/パトリモニー・レトログラード・デイ/デイト Ref.4000U/000R-B110
  • ポール・ゲルバー/レトロツイン REF. 15 5(完売)
  • セイコー プレザージュ/Craftsmanship Series SARD017
  • ブランパン/ヴィルレ ラージデイト レトログレード デイ
  • ハリー・ウィンストン/ザリウム バリエーション

広田雅将(50歳)『クロノス日本版』編集長兼アートソルジャー
「実用性を選ぶか、遊び心を優先するか?」

かつては、腕時計での採用は難しいとされたレトログラード。しかし、要素解析などの普及により、十分なノウハウがなくとも、レトログラードの採用例が増えてきた。ここで選んだのは、実用性と遊び心を両立させようとした試み。1位は、文句なしに「ポン デ ザムルー」だ。

  1. ヴァン クリーフ&アーペル/レディ アーペル ポン デ ザムルー ウォッチ
  2. ヴァシュロン・コンスタンタン/パトリモニー・レトログラード・デイ/デイト
  3. シャネル/ムッシュー ドゥ シャネル
  4. 大塚ローテック/6号
  5. ピエール ドゥロッシュ/TNT ロイヤルレトロ
  6. ブルガリ/オクト フィニッシモ パーペチュアル カレンダー
  7. モーリス・ラクロア/マスターピース トリプル レトログラード
  8. フランク ミュラー/トノウ カーベックス イレギュラー レトログラード アワー
  9. ウブロ/MP-13 トゥールビヨン バイ-アクシス レトログラード
  10. セイコー プレザージュ/Craftsmanship Series SARD017


ランキングの集計ルール
●選考委員は、各号のテーマに沿った腕時計を10本選び、順位をつける。
●選考委員ひとりあたりの所持ポイントを110点とし、これを1位20点、2位18点…… 10位2点として選考モデルに振り分ける。
●選考された時計が順位無しの場合は、所持ポイントを10等分して、各モデルに11点を与える(選考本数が10本に満たない場合でも、1モデルあたり11点とする)。
●獲得点数が同点となった場合は、選考者数の多いモデル、その中で選考順位の高いモデルの順で優位とする。
●最低有効得票数を2票とする。
※ウブロはディストリビューターの都合により、得票があった場合でも順位に含まれません。


ハリー・ウィンストン 瞠目の機械美に挑む複雑機構物語

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A.ランゲ&ゾーネのアイコンウォッチ「ランゲ1」、その進化と変遷をモデルと共にたどる

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