ドゥ・ベトゥーン「DB28 Kind of Blue 天の川」紺青の空に浮かぶ立体ムーンフェイズと燦然たる銀河

2021.01.28

斬新な機構と青焼きしたブルーチタンで知られるドゥ・ベトゥーン。2020年は、同社を代表する「DB28 Kind of Blue」に極めて魅力的な限定モデルを追加した。それがレーザーを手作業で当てて天の川を彫り込んだ「DB28 Kind of Blue 天の川」だ。青いチタン製の内外装を、鮮やかに浮かび上がる球体ムーンフェイズと24Kゴールドの天の川がいっそう強調する。

DB28 Kind of Blue 天の川

DB28 Kind of Blue 天の川
最もドゥ・ベトゥーンらしい、と称される「DB28 Kind of Blue」の限定版。内外装のほとんどは青焼きしたグレード5チタン製。加えて、受けには24Kゴールドで天の川が施されている。6時位置には、同社の象徴とも言える球体ムーンフェイズが備わる。手巻き(Cal.DB2115V4)。39石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約144時間。Ti(直径42.6mm、厚さ9.3mm)。3気圧防水。世界限定10本。1656万円。
前田和尚:写真 Photographs by Kazunao Maeda
広田雅将(本誌):文 Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)

DE BETHUNE

 目利きの時計商であるデヴィッド・ザネッタと、THAなどを創業したデニス・フラジョレが設立したドゥ・ベトゥーン。「21世紀の時計作り」をモットーに掲げた同社は、122年調整不要な球体ムーンフェイズや、シリコン製のテンワ、自社製のヒゲゼンマイに、高効率のドゥ・ベトゥーン脱進機など、際立ってユニークな機構を開発してきた。 加えて、ドゥ・ベトゥーンは外装面でも革新的だった。球体ムーンフェイズの素材には、パラジウムと青焼きしたスティールを採用。さらに針には金やステンレススティールだけでなく、シリコンやサファイアといった、極めて扱いづらい素材を選ぶようになった。

ムーブメントの一部に24Kゴールドで表現した「天の川」が見られる。天の川はマイクロレーザーで彫られるが、その位置決めは手作業による。そのため、同じ天の川を持つ個体は存在しない。普通は位置決めも自動で行うが、あえて手作業で行うのはドゥ・ベトゥーンならでは。その仕上げは傑出している。

 内外装共に、他にはない時計作りを志向するドゥ・ベトゥーン。その象徴が、今やブランドのシグネチャーとなった青焼きのチタンである。チタンを加熱すれば、スティールに同じく青変することは広く知られている。しかし、熱伝導率が低いチタンは、どう加熱しても簡単に色ムラを起こしてしまう。立体的なケースであればなおさらだ。対してドゥ・ベトゥーンは、新しい手法を開発し、2006年に青焼きしたチタンを完成させた。

 その素材を、内外装に惜しみなく採用したのが「DB28Kind of Blue」である。写真が示す通り、ケースはもちろん、ムーブメントの地板や受けも青焼きしたチタン製。PVDでは決して表現できない鮮やかなブルーは、この時計がドゥ・ベトゥーン製であることを言わずと証明する。今年は、そのモデルのムーブメントに彫金を施した限定版の「天の川」を追加した。ムーブメントの中心に見えるのは、マイクロレーザーで彫られた後、24Kゴールドを流し込んだ天の川。ドゥ・ベトゥーンらしく、天の川の様子が見事に再現されている。

6時位置に見えるのは、やはりドゥ・ベトゥーンのシグネチャーである122年調整不要な球体ムーンフェイズ。深い色を与えるため、あえて青焼きしたスティールを採用する。テンワは青焼きしたチタンに、ホワイトゴールドの錘を加えたもの。脱進機はシリコン製である。

 他社がドゥ・ベトゥーンを模倣できない理由は、同社がほぼ時計を内製するためだ。例えば、青焼きのチタン。完全に鏡面に磨かないと青焼きを施せないと同社は説明する。外注だと品質を維持するのは難しいが、ドゥ・ベトゥーンでは、チタンを鏡面に磨くのも、摂氏70度に熱するのも社内で行われる。

 なおドゥ・ベトゥーンでは、約30名の従業員が、年に150本の時計を製作している。ザネッタ時代の年産は500本程度。しかし、現在の経営陣は、質を追求するために生産本数を大きく絞り、併せて価格も大幅に引き下げた。にもかかわらず質がむしろ向上しているのは、創業者のフラジョレが今なおすべてのプロダクトを見ているためだ。価格は確かに安くない。しかし、その手間と生産本数を考えれば、むしろお買い得だろう。

ドゥ・ベトゥーンのユニークさを体現するのが、大きく湾曲したフローティングラグである。バネで支えられたV状のラグは、軽いチタンケースと相まって、極めて優れた装着感をもたらす。もちろん、ラグは青焼きしたグレード5チタン製。PVD処理を施したように見えるが、青焼きでなければこれほど鮮やかな色にはならない。色ムラのなさに注目。

 世界中に熱狂的なファンを持ちながらも、長らく日本の愛好家には知られていなかったドゥ・ベトゥーン。しかし、日本への再上陸を果たした現在、最も数がそろう市場は日本となった。もし、あなたが他にはない時計を探しているならば、ドゥ・ベトゥーンは必見だ。シグネチャーカラーである鮮やかなブルーと、ユニークな機構は、時計好きを魅了せずにはいられない魅力に満ちている。


Contact info: サイプレストレーディング TEL:06-6459-4140


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