ゴールに選ぶべきものは何か?
時として人は、いつも着けていられる時計を欲しくなるものだ。これは読者諸氏にも経験があるかと思う。どんなシーンにも合う時計が欲しい。変に人目を引かず、それでいて個性がしっかりしているものがいい。ほかのさまざまな時計を吟味しても、心の中に取りあえずリストアップしたものを忘れさせ、次々と現れる魅力的なものを見ても、最終的に記憶にとどまるだけの存在が望ましい。ロレックスのオイスター パーペチュアルは、そういう〝上がり時計〟のひとつではないだろうか。 |
搭載ムーブメントは、評価の高い自社既存の自動巻きをアップデイトした自社キャリバー3132。頑強さと精密さを誇る。 |
〝上がり時計〟に求められる要素
緩やかなカーブを描くラグと、風防を取り巻く幅広のベゼルも、調和が取れている。ベゼル上面とケース側面には鏡面仕上げが施され、ラグ上面のヘアライン仕上げと見事な調和を成す。サファイアクリスタル製の平らな風防は、ロレックスのほとんどのモデルに共通しているように、ケースの上に突き出たように設計されているものの、その縁は斜めに面取りされている。そのため、少し横から見ると、サファイアクリスタル製風防がやや屈折して見えるのも特徴のひとつだ。
反射防止加工が施されていないフラットなサファイアクリスタル製風防は、視認性の面からは良好とまでは言えないが、暗がりでは時分針と3時および6時、そして9時位置のインデックスに施された夜光塗料が役立ってくれる。また、日付表示が備わっていないため、ダイアルはすっきり整ってはいるものの、なんとなく寂しいと感じる人もいるかもしれない。そんな人には、大きな日付表示がもはやアイコンとなっているデイトジャストがいいだろう。サイズは直径36㎜と41㎜(デイトジャストⅡ)の2種類で、日付表示と典型的なサイクロップレンズを備えているが、価格がだいぶ異なるのも事実だ。
時計収集遍歴で、充実感をもって帰着する、いわゆる〝上がり時計〟には、外観のディテール同様に、使用感も大事な要素である。オイスター パーペチュアルは、日付表示がないだけに、使い方はとりわけ簡単だ。ねじ込み式のリュウズは一段引き式で、緩めて引き出したら、すぐに時刻設定ができるのが助かるところである。その場合、ストップセコンド仕様なのでテンプの停止とともに針の動きも止まって、秒単位で正確な時刻に合わせることができる。
リュウズのヘッドにかたどられた王冠マークの下の1本のラインは、トゥインロック式であることを示す印だ。100m防水というのは、スポーティーかつエレガントな時計としては十分で、上がり時計としては望ましい性能である。
ケースの裏蓋はねじ込み式で、その内側にはキャリバー3132が鎮座している。ケース径34㎜と36㎜の既存モデルに搭載されている先行キャリバー3130と異なるのは、耐震軸受けにパラフレックス ショック・アブソーバを採用していることだ。そして、このキャリバー3130は、サブマリーナーとデイトジャストに搭載されていることで知られている、日付表示付きのキャリバー3135がベースになっている。ロレックスが自社開発キャリバーである3132を新型のオイスター パーペチュアルに搭載したのは、よい選択であろう。この自動巻きムーブメントは、時計師の間でも名機と誉れ高い。頑丈で長持ち、考え抜かれた構造で、精度の追い込みをかなり正確に行うことができるという。自動巻き機構の切り替え車は赤くアルマイト加工が施され、磨耗を最小限に抑えられる。テンプ受けにはよくある片持ちではなく、両持ち式を採用。テンプを両側からしっかりと支え、かつビス留めされている。テンワにはマイクロステラナットが備えられ、エンドカーブ付きのヘアスプリングとともにあらゆる姿勢においても、正確さを導き出していく。このモデルに使われている独自のブルー パラクロム・ヘアスプリングは、ニオブとジルコニウムの合金で、磁気の影響を受けにくいのが特徴だ。衝撃に対しても、通常のヘアスプリングより10倍も優れている。また、衝撃に対しては、ロレックスが独自に開発した耐震軸受けのパラフレックス ショック・アブソーバの働きも大きい。