BREITLING Navitimer 01 (46mm)
1952年のデビュー以来、パイロットウォッチのアイコンとして
君臨してきたブライトリングのナビタイマーが、
より大きくなって新登場。
今までのモデルが小さく見えるほどの
直径46mmのケースサイズは、
いかなる説得力をもって我々に語り掛けてくるのだろうか。
ニック・シェルツェル、NASA: 写真 Photographs by Nik Schölzel, NASA
市川章子: 翻訳 Translation by Akiko Ichikawa
+point
・アイコン的存在を破綻なく拡張
・品質と価格のバランスが良い
・優れた設計の自社開発ムーブメントを搭載
-point
・プッシュボタンが固い
・防水性がもの足りない
大いなる空のパイオニア
かつて、航空業界には技術的進歩の過渡期があった。1952年、ブライトリングがナビタイマーをパイロット用の機器として発表した時、航空機は初のジェットエンジン搭載機がすでに実用化され始めていたが、まだプロペラ機が主流だった。それがジェット機の時代に入ると、飛行速度が非常に高くなり、ヨーロッパとアメリカの間は近くなっていった。1947年、アメリカの実験機だったベルX‐1が試験飛行で音速を突破。同じ研究を進めていたダグラス社は、1953年にD‐558‐Ⅱスカイロケットで、有人飛行として初めて音速の2倍の速度に達した。
ナビタイマーに当時要求されていたのは、ナビゲーションのための航法計算尺を、腕時計に同化させるという離れ業だ。それによって、パイロットは燃料の消費や偏流角、飛行速度を空中で計算可能になる。その頃は、腕時計よりもっと大型の計算盤を携帯するのが普通であった。それが腕時計になると、いちいち手に取らなくても常に腕上にあるわけで、操縦捍のハンドリングは明らかに楽になる。AOPA(国際オーナーパイロット協会)のオフィシャルウォッチとして認定され、文字盤にそのロゴのプリントを許可されたのも、なんら不思議ではないのだ。
堂々たるサイズで登場
とはいえ、目盛りに添えられた数字はかなり小さなサイズだったのが短所ではあった。初代ナビタイマーはケース径40㎜と、当時としては十分な大きさだったが、それでも字は小さい。それが初の自社製ムーブメントを搭載した2011年発表のナビタイマー 01では直径43㎜になり、今回テストに取り上げた2014年発表のモデルでは直径46㎜ものサイズになっている。
43㎜でも、もはや誰も小さいとは感じていなかっただろう。しかし時代は変化するものである。より大きなものが出ると、以前は大きく思えたサイズがやけに小さく見えるものだ。その上、目盛りが大きくなって視認性を損なっていない。
このモデルをひと目見ると、そのサイズに驚かされるが、これが腕に載せてみると、さほど巨大には見えない。編集部で着用テストを受け持った者は手首が細めなのだが、それでも突飛な印象はなかった。ちなみに、これがナビタイマーの最大サイズではない。ナビタイマーGMT、ナビタイマー1461、ナビタイマーQPは、さらに2㎜大きい。各モデルを比べると、今回のモデルのディテールが新たなサイズの中でいかに巧みに扱われているかが分かる。新型ではプッシュボタンもより大きく、ケースも厚みを増していて、ストラップも幅広くすることで、全体のプロポーションが整えられている。加えて、サイズアップした腕時計によくある問題点が見られないのだ。ムーブメントを拡大せずに製品化すると、文字盤上でサブダイアルと日付表示が中央に寄り集まってしまうものだが、新型ナビタイマー 01では調和が乱されていない。
さて、パイロットウォッチの最重要項目といえば、やはり素早く読み取りができることだ。それに関しても、もちろんこのサイズが決め手になっている。もっとも、文字盤上には目盛りや差し色を入れた積算計がひしめいていて、使う段になると、いつでもお手軽というわけではない。銀地のサブダイアルにある銀色の針は、十分に浮かせていないため、サブダイアルに同化しがちなのだ。夜光ポイントも発光が甘い。逆に積算計はコントラストを良くするために、夜光塗料なしでやりくりすべきだろう。一方、長短針を見るとき、夜間はインデックスの端についた夜光ポイントと、12時位置のダブルドットが目印になる。しかし暗がりの中で、はっきりと分かりやすいほどの光ではない。興味深いことに、このナビタイマーより小さなサイズのコスモノートには文字盤のインデックスにアラビア数字を使用したものがあるのに対し、43㎜より大型のモデルはバーインデックスのみで構成されている。夜光塗料の塗布された大きなアラビア数字がないだけに、暗がりでは文字盤はより暗っぽく見えてしまう。