【86点】ロレックス/チェリーニ タイム

2015.04.03

高精度と堅牢さで高い信頼性を誇るロレックス自社製キャリバー3132。

さらに、チェリーニ コレクションではすべての機種がゴールド製ケースでのラインナップである。テストウォッチのホワイトゴールド製ケースは控えめな印象がかえってエレガンスを演出している。一見、ホワイトゴールドはステンレススティールと間違われやすいが、チェリーニ タイムのような気品のあるウォッチなら、その心配はないだろう。
チェリーニ タイムでは、そこかしこにロレックスのかつてのモデルを彷彿とさせるデザイン的要素がちりばめられている。故に、オイスター パーペチュアル サブマリーナーがそうであるように、高度に洗練された1950年代の古典的名作を思わせる。しかも、直径39㎜のケースは、まさに今の時代にふさわしいサイズだろう。
しなやかに伸びたラグ、ポリッシュ仕上げが施されたラインの流麗なケース、ドーム型のベゼルとフルーテッドベゼルを組み合わせたスリムなダブルベゼル、ポリッシュ仕上げのドーム型ケースバック、フレア型リュウズ、フラットでスリムなバックル、そして、シャイニーブラックのレザーストラップなどが、ロレックスの伝統と歴史を感じさせる要素である。両刃の剣のような形の長短針とファセットのあるアプライドインデックスを備えたダイアルもクラシシズムの体現に寄与している。一方、長いアワーマーカーを中央で分割するようにデザインされたミニッツトラックや、12時、3時、6時、9時の細長いローマンインデックスが、このモデルに独自性を与えている。
針の長さはどれも申し分ない。これは、美観上の効果があるばかりか、視認性の向上にも貢献している。また、白いダイアルからはっきりと浮かび上がるので、時刻を素早く把握することができる。ただ、良好な視認性が確保されるのは、周囲が十分に明るい環境であることが条件となる。チェリーニのエレガントなデザインを優先させるために、このモデルではロレックスが蓄光塗料を放棄したためである。

手放すことで得られるメリット

このことは日付表示にも当てはまる。日付表示に関しては、あったほうがありがたかったかもしれない。だが、ダイアルの構成がシンメトリーで日付表示用の開口部がないことから、チェリーニ タイムが美しい時計に仕上がっていることは事実である。つまり、時計を選ぶ際、何を重視するかが問われるのである。ここで、デザインを最も重視する愛好家がいても、まったく不思議ではない。
日付表示を放棄したことで、チェリーニ タイムではよりシンプルな操作が実現した。これはメリットと言えよう。まず驚かされるのは、フォルムの美しいリュウズがねじ込み式の仕様になっていることだ。防水性50mの時計においてさえ、より高い安全性を確保すべく設計されているのである。扱いやすいフレア型リュウズは容易に緩めることができ、ストップセコンド機能の恩恵により時刻合わせは簡単だ。バックルもトラウザーズのベルトのように、簡単に扱うことができる。
チェリーニ タイムは細部に至るまで入念に仕上げられており、加工品質が極めて高い。ダイアルと針は非の打ちどころがなく、ケースのポリッシュ仕上げは隅々までクリーンに施されている。ポリッシュ仕上げの完璧さは、特にラグとバックルの内側に見て取ることができる。この部分は、磨きがやや雑になる傾向があり、多くの時計でフライス加工の痕跡が発見される場所である。ラグのバネ棒にカーブを持たせ、ストラップがケースの形状によりフィットするように工夫されているのはいっそう素晴らしい。
加えて、バネ棒はラグのやや先端寄りに配されているため、時計の装着感は良好である。ドーム型のケースバックは滑らかで肌触りが心地よいが、使い始めはストラップが硬く、そのために時計が手首の上で揺れ動いてしまう。ただ、数週間もすればストラップもなじみ、この問題は解決する。だが、シャイニーブラックのストラップの場合、表面のラッカーに伸縮性があまりないため、ひび割れやすいのがデメリットである。わずかなひび割れくらいではチェリーニ タイムの印象や外観が損なわれることはないが、完璧さを求める愛好家にとっては気になる点かもしれない。
ポリッシュ仕上げのドーム型ケースバックも小さな傷が目立つことが予想される。理論的には、レクタンギュラーケースのチェリーニ ロレックス プリンスのようにトランスパレントバックにもできたはずだが、ロレックスはあえて内部機構を見せる選択をしなかった。オイスター コレクション同様、新しいチェリーニ コレクションでも残念ながら、自動巻きムーブメントはきちんと装飾されているにもかかわらず、一般ユーザーには見ることはかなわないままである。

オイスター パーペチュアル エクスプローラーでも時を刻むロレックスの自社製キャリバー3132は、サンブラッシュ仕上げを施したローター、ペルラージュ模様を装飾した地板、ポリッシュ仕上げのネジ頭、面取りを施した一部のエッジなど、装飾も十分で、本来、身を隠す理由などまったくない。ロレックスでは常のごとく、微調整のしやすさと安定した精度は、軸方向のアガキを調整できる両持ちのバランスブリッジや、特許技術であるニオブとジルコニウムの合金で出来たブルーのパラクロム・ヘアスプリング、また、テンワに取り付けられたマイクロステラナットによって確保されている。