複雑な構造物。ビッグ・バン ウニコのケースは60点以上ものパーツで構成されている。
模様彫りを廃したムーブメント
ブリッジに模様彫りがひとつも施されていない時計が190万円もすると聞くと、まずは唖然とするかもしれない。それでも、このムーブメントは美しい。それは、模様彫りがなくても見る価値のある要素をいくつも発見できることが理由だろう。今日では残念ながら、数多くのブランドが、ムーブメントのほぼ全域を覆い隠すほど大きなブリッジを採用している。この手法は、歯車に装飾を施す手間が省けるものの、時計愛好家にとっては内部機構を観察する機会が奪われることになる。ウブロはこの点、ありがたいことにすべてを「見せる」デザインにしてくれた。サークラージュ(円形装飾)を施したローターは、スケルトナイズされていることから、同じくスケルトナイズされた歯車への視界を遮らない。ブリッジも程よくスケルトナイズされており、他の歯車もよく観察することができる。歯車の非対称に肉抜きされた形状は、レース用バイクのリアホイールを想起させる。模様彫りこそ施されていないが、ブラスト加工されたマットグレーのブリッジにより、ウニコのムーブメントは鋳鉄製のエンジンと似た印象を与えている。これには、テンプやローターの巻き上げ車を載せ、ネジ留めされたブリッジがよく似合う。ローター中央のリング状のパーツには穴が開けられており、多孔式のブレーキディスクを思わせる。
だが、ウブロがレース用バイクを踏襲しているのはデザイン面だけではない。軽量化や摩擦軽減のために最新素材を投入することも類似した手法である。ウブロは青いシリコン製のアンクルやガンギ車を装備することで、摩擦と摩耗の軽減に成功した。シリコン製パーツにはさらに、ムーブメントの中で最も重要な機構のひとつである脱進機の注油の問題を軽減する役割がある。