加工品質の高さに感心させられる
装着性も秀逸である。これには、フラットなケースと150gに満たない程よい重量に加え、接触面が滑らかなケースバックとフォールディングバックル、そして、しなやかなステンレススティール製ブレスレットが寄与している。新型のグライドロッククラスプは、従来のバックルよりも堅牢で、ブレスレットを小刻みに長さ調節できるのが特徴である。スポーツの後や気温の高い日には、少し余裕を持たせるために素早く延長することができるので、以前よく見られたように、ステンレススティール製ブレスレットを緩ませた状態で着用する必要がなくなった。バックルは、セーフティーロックと、その下にある指の爪で簡単に持ち上げられるレバーによって、不用意に開かないように設計されている。それでも、操作の簡単なリュウズやベゼルと同じように、バックルも扱いやすい。また、時計全体に共通することだが、加工品質の高さにも感心させられる。ブレスレットとバックルの側面にはポリッシュ仕上げが、上面にはサテン仕上げが施されている。
欲を言えば、トランスパレントバックであれば、なお望ましかっただろう。1989年以来、サブマリーナー デイトの内部で時を刻んできた自社製キャリバー3135は、どちらかと言えば実用機として設計されたものの、一部スケルトナイズされたローターとローターブリッジ上面のサンブラッシュ模様、ブリッジのペルラージュ模様、ヘアライン仕上げのスティールパーツ、面取りされ、研磨されたエッジ、そして、ポリッシュ仕上げのネジ頭など、見どころが満載だからである。赤いアルマイト処理を施した、摩擦を抑える効果のあるアルミニウム製のリバーサー(切り替え車)と、2008年からサブマリーナー デイトにも搭載されるようになったブルーのパラクロム・ヘアスプリングにより、色合いも豊かになった。
ニオブとジルコニウムの合金に酸化被膜処理を施した新素材のヒゲゼンマイは、磁場の影響をまったく受けないばかりか、耐衝撃性も従来のヒゲゼンマイに比べて格段に高くなっている。いずれにしても、パラクロム・ヘアスプリングが搭載される前から、キャリバー3135は最も優秀な自動巻きムーブメントのひとつに数えられてきた。こうした高い評価の理由は、耐久性を重視して設計された堅固な構造によるもので、その恩恵により微調整も非常に高い精度で行うことができる。テンプは、片側で支えるこれまでのバランスブリッジに代わり、頑丈な両持ちのバランスブリッジで両側からしっかりと固定されており、軸方向への遊びは2本のネジによって調整することが可能だ。さらに、ブレゲ式エンドカーブや、テンワの内側にマイクロステラナットを取り付けたフリースプラング方式の緩急調整により、テンプの規則正しい振動が約束されている。