ブレーキレバーの突起部が秒クロノグラフ車の歯と
噛み合うことで、秒積算針の停止位置が正確に定義される。
ゼニスの設計チームは、クロノグラフを止めた時に、文字盤外周に100本配されたセコンドカウンターの1本、つまり1/10秒インデックスに秒積算針が常に重なって止まるように、有意義な機構を編み出した。秒クロノグラフ車を止めるのは従来型の古典的なブレーキレバーではなく、特殊な形状の突起部を備えたブレーキレバーである。この突起部が秒クロノグラフ車の歯と噛み合うことで、秒積算針の停止位置が正確に定義されるようになっているのだ。我々が行ったテストでも、スタート/ストップを数えきれないほど繰り返したが、エラーは一度も観察されず、赤いクロノグラフ針は毎回、100本ある1/10秒インデックスのいずれかを覆うようにぴったりと止まった。これは、構成部品ひとつひとつの加工品質と組み立て精度の高さも物語っている。
では、このメカニズムはどのように機能するのだろうか。動力は、通常のように四番車からではなく、より高速で回転するガンギ車から供給される。その一方で、ガンギ車はセンターの秒クロノグラフ車と3時位置にある60秒積算計を駆動する。この60秒積算計は、全体のエネルギー収支にとってはステップ式よりも有利なスイープ式で設計されている。動力は、小さなトランスミッションホイールを通じて2層構造のドライビングホイールに供給される。ドライビングホイールは、慣性を最小限に抑えるため、一体型のシリコン製で、通常のものよりも1/3ほど軽い。クロノグラフが作動していなくても、シリコン製ドライビングホイールと常に噛み合っているのは、クラッチホイールである。コラムホイールから接続するように指示が出されると、クラッチホイールは少し前方に動き、秒クロノグラフ車の歯と噛み合う。その結果、3時位置のクロノグラフ秒積算車が秒クロノグラフ車と直接接続され、秒クロノグラフ車も動き始める。水平クラッチが採用されているため、クロノグラフ針が引っかかることなくスムーズに始動するように、ブレーキレバーとフリクションスプリングが解除されるタイミングがわずかに遅れるように設計されている。厳密に定義されたタイミングでブレーキレバーが動き出し、噛み合いが発生する瞬間は、フリクションスプリングがまだ秒クロノグラフ車をブロックしている。この状態で遊びがなくなり、その結果、クロノグラフ針が逆回転しそうになって初めて、ブレーキレバーがフリクションスプリングも完全に解除する。
これはすべて瞬時に行われ、コラムホイールの恩恵によりタイミングが厳密に定義されているため、瞬間的に摩擦が高くなっても、振り角への影響が測定値に表れることはなかった。ストライキング 10 thのユーザーはこれらの結果、引っかかりなくただちに始動する秒積算針を文字盤上に見いだすことができる。この時、3時位置の60秒積算計と6時位置の60分積算計も同時に動き始める。スモールセコンドは9時位置に配されている。1969年にリリースされたオリジナルモデルを可能な限り忠実に再現するというデザイン上の理由から、ゼニスは今回もインダイアルを重ねて配置することにした。ただ、この措置は30秒から40秒までのストップタイムを読みづらくする原因となってしまっているので、60分積算計をもう少し小さくして、秒目盛りと接触しないように設計したほうが好ましかったように思う。これに対し、6時位置に配された日付表示の視認性はまったく問題ない。