強化された耐温度性能
EZM7は、温度による悪影響を受けにくい。特殊な自社製オイルの恩恵により、マイナス45℃からプラス80℃まで、安定した機能が確保されるからだ。通常のオイルに比べると、卓越した性能である。どの時計も、出荷前にこの温度範囲でテストされている。とは言うものの、火災の消火活動時には防護服の表面が極度な高温にさらされることが多い。そのため、伸長可能なエクステンションを装備しているEZM7といえども、やはり防護服の下に着用したほうが良いだろう。
温度変化が激しい環境でも、ジン独自のドライ・テクノロジーによって風防が曇ることはない。湿気がケース内にほとんど浸入しないからだ。これを実現する第1のドライ・テクノロジーが、“EDRパッキン”(超透過抑制パッキン)である。EDRパッキンによって空気の透過が75%も低減し、同時にケース内への湿気の浸入も抑制される。第2のドライ・テクノロジーはプロテクトガスである。プロテクトガスが充填されることで、出荷時のケース内部は湿気がまったく存在しない環境になっている。第3のドライ・テクノロジーは硫酸銅を封入したドライカプセルで、ケース内に残留した湿気を吸収する。ケース側面には点検用の表示窓があり、カプセルにまだ湿気の吸収能力が残っている場合はライトブルーだが、飽和状態になるとネイビーブルーに変色する。後者の場合はカプセルを交換しなければならない。ドライカプセルは風防が曇るのを防ぐために有効であるばかりではなく、ムーブメントを腐食から守り、オイル劣化の進行を遅らせるのにも効果的である。また、EDRパッキンは従来のパッキンよりも化学薬品に対する耐久性が高い。消防隊にとって、これが大きな利点となることは自明の理である。
機械式時計の場合、磁力の影響によりヒゲゼンマイが磁気を帯びてくると、精度が悪化することが多い。EZM7はその対応策として、8万A/mの耐磁性能を備えている。軟磁性材料で出来た外被をまとうことで、EZM7は磁力から身を守っているのだ。外被は、軟磁性材料で出来た文字盤、ムーブメントを支えるホルダーリング、そして、裏蓋で構成されている。
これらの技術が結集して、EZM7は市場で最も頑丈な時計となった。ベースになったのは耐磁性を備えたパイロットウォッチ、モデル857で、セカンドタイムゾーンと特殊結合方式の回転ベゼルを装備し、EZM7と同じケースに同じムーブメントが搭載されている。ケースは極めてクリーンな作り込みで、表面はテギメント加工とマット仕上げによって本来のステンレススティールの色合いよりも暗色で、どちらかといえばチタンのような質感を持つ。