新鮮さを失わず、時代遅れになることなく、70年代のコンセプトが持つ魅力を
現代に再現してみせた点で、オメガは大成功したと言えるだろう。
新鮮さを失わず、時代遅れになることなく、70年代のコンセプトが持つ魅力を現代に再現してみせた点で、オメガは大成功したと言えるだろう。復刻モデルでは、細部に至るまでこだわりを感じさせる。例えば、リュウズとベゼルの刻み目だ。凸部にはポリッシュをかけ、凹部はヘアラインで仕上げてある。また、アプライドインデックスなど、数々の精巧なディテールも、今日では不可欠とされる高級感を醸し出すのに貢献している。レトロなデザインは、良質であればこそ、今の時代が求める期待にもきちんと応えられるのである。
プロプロフの内部機構には、先端的な技術が駆使されている。2007年初頭に発表されたオメガ初の自社製ベースムーブメントに、改良型のコーアクシャル脱進機を搭載した自動巻きキャリバー8500である。8500では、コーアクシャル脱進機の周囲が新たに設計し直された。動力の伝達がより効率的に行われるように、ガンギ車を以前の2層構造から3層構造に改良し、それに合わせて脱進機まわりのスペースを再設計したのである。テンプは、片側が固定されたテンプ受けではなく、両持ちのブリッジで支えられているので、耐衝撃性が向上するばかりか、縦アガキの調整もより正確に行うことが可能になった。これは、ヒゲゼンマイと同様に、精度にも有益だ。緩急調整は緩急針ではなく、テンプのバランスウェイトで行うため、ヒゲゼンマイは自由に呼吸することができる。1時間に2万5200振動(3.5 Hz)というテンプの振動数も珍しい。ニヴァショック耐震軸受けは、ホゾが特に細くなっている天真のセンタリング性が向上するように改良され、姿勢が変わった時のテンプの誤差が最小限に抑えられるようになっている。約60時間という長いパワーリザーブも好印象だ。切り替え車によって両方向に巻き上げるローターは、軸部にスライドベアリングが採用されており、直列に接続されたツインバレルを巻き上げる。39個の受け石には、摩擦を最低限に抑える役割がある。キャリバー8500を構成するのは、合計202点もの部品だ。
装飾も、モダンな設計のムーブメントにふさわしい。テンワには黒のクロムメッキが施され、ふたつの香箱と何本かのネジはブラックDLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティングされている。また、外側へスパイラル状に広がるコート・ド・ジュネーブは、オメガが独自に開発した模様彫りである。 キャリバー8500は、堅牢さもさることながら、精度に主眼を置いて設計されており、スイスクロノメーター検定協会(C.O.S.C.)から公式クロノメーター証書が発行されている。そのため、我々は大きな期待をもって歩度測定器でのテストに臨んだが、プロプロフは期待以上の結果を出してくれた。姿勢差による最大日差は3秒と実に優秀で、計算上の平均日差もプラス1.5秒/日と非常に小さかった。また、垂直姿勢でも振り落ちは見られなかった。これには、検討を重ねて改良を施したテンプの耐震軸受けも貢献していると考えて間違いないだろう。 ほぼ完璧だった精度に対して、コストパフォーマンスはどうだろうか。87万1500円で手に入るのは、極めて高い防水性能や見事に再現された70年代調のデザイン、高い加工精度、そして精巧なエクステンションシステムだけではない。新生プロプロフには、高精度で秀逸な設計のハイクラス・マニュファクチュールキャリバーが搭載されているのだ。高額であるのは事実だが、その正当性には十分うなずける。
プロプロフは、そのサイズと勇猛な外貌から、決してシーンを選ばず身に着けられる時計ではない。しかし、装着時にやや気になる点があるのを除けば、説得力は十分だ。相も変わらずアルカイックな風貌を備えつつ、ハイテク(サファイアクリスタルを張ったダイバーベゼル)と高精度の内部機構(最新鋭のコーアクシャルムーブメント)で身を固めた深海からの怪物は、水中が苦手という人さえも味方に付けてしまうことだろう。
技術仕様
シーマスター プロプロフ 1200M
製造者: | オメガS.A. |
Ref.: | 224.30.55.21.01.001 |
機能: | 時、分、秒、日付、セーフティボタンでロックする回転式ベゼル、ヘリウムエスケープバルブ |
ムーブメント: | オメガ8500、自動巻き、クロノメーター、2万5200振動/時、39石、ツインバレル、耐震軸受(ニヴァショック使用)、グリュシデュール製テンプ、バランスウェイト付きフリースプラングテンプ、コーアクシャル脱進機、パワーリザーブ約60時間、直径29mm、厚さ5.5mm |
ケース: | SS製、両面無反射コーティングを施した厚さ4.9mmのサファイアクリスタル、ネジ留め式裏蓋、ねじ込み式リュウズ、1200m防水 |
ストラップとバックル: | ミラネーゼブレスおよびエクステンションシステム(26mm)と微調整可能なスライド式エクステンション(22mm)を備えたSS製フォールディングバックル |
サイズ: | 55×48mm、厚さ17.5mm、総重量279g |
価格: | 87万1500円 |
*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。
精度安定試験 (日差 秒/日、振り角)
文字盤上 | +1 |
文字盤下 | +2 |
3時上 | +1 |
3時下 | 0 |
3時左 | +3 |
3時右 | +2 |
最大日差: | 3 |
平均日差: | +1.5 |
平均振り角: | |
水平姿勢 | 275° |
垂直姿勢 | 276° |
評価
ストラップとバックル(最大10pt.) | 10pt. |
操作性(5pt.) | 4pt. |
ケース(10pt.) | 10pt. |
デザイン(15pt.) | 14pt. |
視認性(5pt.) | 5pt. |
装着性(10pt.) | 6pt. |
ムーブメント(20pt.) | 18pt. |
精度安定性(10pt.) | 10pt. |
コストパフォーマンス(15pt.) | 13pt. |
合計 | 90pt. |