バランスの良い文字盤、見栄えの良い仕上げ
ケースのデザインも全体によくなじむプロポーションで、仕上げも非常に細やか。角という角はすべて慎重に研磨されて鋭いところはなく、鏡面とサテンの調和を崩すことなく仕上がっている。ケースは恰幅よく、直径は42mmある。しかし文字盤を取り巻くベゼル内だけを測ると34mm。このおかげで、これだけの大きな時計でもそれほど圧迫感を与えず、手首が細い人にも違和感なく映える。そして無反射コーティング加工のサファイアガラスの下には、分と秒の目盛りが入ったリングが置かれ、文字盤の内側はさらに縮められている。結局、実質的な文字盤直径は28mm。ケース径が42mmとは思えないバランスの良さは見事だ。
文字盤はギョーシェ彫りで仕上げられていて、堂々たる印象。大型日付表示の位置取りも完璧だ。文字盤を薄目を開けたような状態で見たとしても、見づらいと感じない構図の妙がある。ことに評価すべきはふたつの積算計がスモールセコンドよりはっきり浮き上がって見えるように設計され、ミニッツカウンターにぎりぎり最大限の面積を持たせた点だろう。
しかしそれに対し、ミニッツカウンターの針は明らかに短いサイズなのが気になる。センターのクロノグラフ針も同じく短めで、円の端まで届いていない。長さが合っていないのは外周リングも同様で、秒の目盛りは分の目盛りよりかなり短い。また、針合わせと日付修正はリュウズで行うが、ストップセコンド仕様になっていないのは惜しいところ。これでは秒単位で正確な針合わせは難しい。
FPキャリバー6885ベースの、VCキャリバー1137
FPキャリバー6885は、ピラーホイール使用のクロノグラフキャリバーとして名高い11 1/2リーニュの1185がベースになっている。そこへ深夜瞬時に日付表示の切り替わるカレンダー機構が組み込まれた。旧バージョンのオーヴァーシーズがそうであったように、以前の日付表示は桁を区切らずに表示する方式が長らく採用されていた。今回の新バージョンの日付表示には、古典的なリング状のデイホイールと数字の入らない白い部分のある十字形のホイールが使われている。
これは技術上の特徴を強調するポイントだ。技術上の特性は耐磁気システムにも表れている。このモデルにはスリーピース(文字盤側、裏側、サイド)の軟質スチールのインナーケースを採用し、ムーブメントは2万5000アンペアまでの耐磁性を誇る。
テストウォッチでも極めてよい精度が確認された。文字盤を上にした平置き状態では、振り角は注目すべき高い安定性を見せた。これこそがFPキャリバーの典型的特性なのである。特筆すべきは、クロノグラフ作動時にはさらに良好な結果が出たことだ。電動式検査器のデータは平常時で日差+5秒以内、クロノグラフ作動時は+1秒だった。着用テストでは日差は+6秒前後になった。