文字盤の塗装
加工品質の高さは、ケース、ブレスレット、針など、この時計の他のパーツにも当てはまる。ただ、文字盤に関しては、針の穴を開けた後で塗装されることから、この部分に凹みができてしまっており、賛否の分かれるところだろう。サブダイアルを縁取るシルバーカラーのリングには、以前よりも精緻なサテン仕上げが施されているが、この点を除き、先代モデルの意匠が全体的に受け継がれている。しかし、ディテールはより洗練され、詳細に観察しなければ分からないような細やかな改善も行われている。
自社製ヘアスプリングを搭載した自社製ムーブメント
新しいデイトナでは、ムーブメントにもあまり手が加えられていない。2000年に導入された自社製キャリバー4130は、ロレックスが独自に開発したニオブとジルコニウムの合金で製造されたパラクロム・ヘアスプリングが初めて搭載されたムーブメントである。パラクロム・ヘアスプリングは耐磁性に優れ、耐衝撃性も従来のヘアスプリングに比べて格段に高くなっている。2005年、ロレックスはパラクロム・ヘアスプリングをさらに改良した。表面に酸化皮膜を施すことで、外的影響に対する保護性がより強化され、独特なブルーカラーが生まれた。デイトナでは、2007年あたりの供給分からブルーのパラクロム・ヘアスプリングが搭載されている。
近代的な垂直クラッチも変わらず搭載されており、クロノグラフ秒針が正確に始動することを約束してくれる。また、コラムホイールによってプッシュボタンの操作感は心地よく、ロレックス特有のバランスコックは安定した精度に貢献する。ユーザーにとってうれしいのはやはり、約72時間のパワーリザーブだろう。
ロレックスの他のムーブメント同様、キャリバー4130もスイス公認クロノメーター検査協会(C.O.S.C.)からクロノメーターとして認定されている。だが、2015年にロレックスが独自に採用した新規格は、クロノメーターに求められる精度基準よりもはるかに厳しいものである。時計は組み立てられた状態で、防水性、巻き上げ効率、パワーリザーブがテストされる。特に厳しいのは平均日差で、+−2秒/日以内でなければ検査に通らない。
今回の着用テストでデイトナは、こうした厳しい基準をたやすくクリアしてみせた。就寝時に時計を外すか、着用したままかにもよるが、日差はマイナス0・5秒/日から0秒/日の範囲内で、歩度測定機で行ったテストでも、平均日差は平常時でマイナス0・2秒/日、クロノグラフ作動時で0秒と極めて小さく、最大姿勢差もわずか3秒だった。この結果を見れば、ロレックス独自の基準が精度向上に貢献しているのは明白だろう。