最上級のクロノメーター
ロレックスは2015年に自社の精度基準として、〝ロレックス高精度クロノメーター〟を発表。キャリバー3131も認定されているが、これは自社内で独自の試験に合格したもののみに与えられる称号だ。スイスの公的機関であるC.O.S.C.がムーブメントの状態で試験を行うのに対して、ロレックスではケーシングされた状態で行い、日差はプラス2秒/日からマイナス2秒/日ほどとされている。野心的に目標を高く掲げている通り、編集部の歩度測定器でもなかなかの結果が出た。テストウォッチはロレックスが目標とするごく狭い許容値には収まらなかったものの、各ポジションでの姿勢差は公式クロノメーターの範囲内だった。そして着用テストでの最大姿勢差は2秒。このことは我々編集部のみならず、ロレックスにとっても最も重要な点だ。つまりこの腕時計は、実際に日常的に使用したときにロレックス高精度クロノメーターの基準に迫るというわけなのだ。このエアキングも国際保証書により5年間の保証が付いている。編集部がこのテストウォッチをそれだけ長く借りられないのが残念だ。
直径40mmのケースに自社製ムーブメントであるCal.3131を搭載し、デザインの各要素は歴史的なパイロットウォッチからインスピレーションを得て構成。それでいて、現代的な新しい表情に仕上がっている。
ところでキャリバー3131とキャリバー3135の違いはどこにあるのだろうか。キャリバー3131は3135には組み込まれているカレンダー機構がない。したがってこのモデルには日付表示がないのだ。今一度、文字盤に注目してみよう。その構成を見ると、ロレックスが航空業界の伝統を引き継いでいることが分かる。発光素材を使用し、目印となる逆三角形を12時位置に配置した力強いコントラストは、典型的なパイロットウォッチに由来するものだ。文字盤を取り巻くミニッツスケールの間には、5分刻みでアラビア数字が続いていき、そこに3、6、9が配されている。このアワーインデックスを強調したデザインは、ヒストリカルピースや現行のエクスプローラーにも見られるスタイルだ。しかしエクスプローラーやGMTマスターⅡ、サブマリーナーなどのロレックスのプロフェッショナルウォッチは、現代に順応したデザインへとまとめ上げられているが、伝統的要素にのっとっているのがこの時計がエアキングたるゆえんだ。
暗がりでライトブルーに光るクロマライト ディスプレイは、3本の針のほかは12時位置の逆三角形のインデックスのみに施されている。加えてイエローの王冠、グリーンの秒針とROLEXの文字、そして特徴的な〝Air-King〟のフォントが忘れ難い印象を残す。
独特のクラスプが付いたフォールディング式オイスターブレスレットも、ケースと同様にロレックスのほかのモデルでもおなじみのものだ。オイスタークラスプは、クラスプの外側からロックできるようになっている。クラスプ外側の端を上に向けて開けるとロックが解除されて、その下に折り畳まれているパーツを広げることができる。クラスプの裏側はエクステンション仕様になっていて、ブレスレットの長さを簡単に5㎜延長することが可能だ。クラスプにはひとつひとつがしっかりした塊のコマが連なる。コマの上面はきめ細やかにサテンがかけられ、側面は鏡面仕上げになっているので、ケースとよく調和している。
ロレックスへの扉を開けるモデル
このように、ロレックスの代表モデルの各要素を取り入れ、かつ最新技術も導入した今回のエアキングは、埃をかぶったいにしえのモデルの焼き直しなどではなく、まさに現代に見合ったものだ。59万円という価格も、とても魅力的に感じるに違いない。このエアキングをロレックスの最初の1本として扉を開けるならば、そこから同社の奥深い世界へと誘われるだろう。