ラグジュアリースポーツウォッチの雄、「ロイヤル オーク」。今回はそこから派生したコレクションにして、2023年に30周年を迎えた「ロイヤル オーク オフショア」、通称“ビースト”に焦点を絞る。ラバーコーティングベゼルやグラデーション文字盤、特殊加工を施したストラップ……。幅広いニーズに応えるべく多様化を遂げた、“ビースト”の最新形がこれだ。
ミニマルなバーインデックスによる3針デザイン。スモークブルーのラバーコーティングベゼルとSSケースとのコンビネーションが誠実な印象を与える。自動巻き(Cal.4302)。32石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径43mm、厚さ14.4mm)。100m防水。396万円(税込み)。
ニット/17万6000円、ボーディ。(問)アルファPR Tel.03-5413-3546。眼鏡/12万8700円、ゲルノット・リンドナー。(問)グローブスペックス エージェント Tel.03-5459-8326
公式ページ:https://www.audemarspiguet.com/com/ja/watch-collection/royal-oak-offshore/15605SK.OO.A350CA.01.html
星光彦:スタイリング Styling by Mitsuhiko Hoshi
竹井温(&ʼs management):ヘア&メイク Hair & Make by T azuru Takei(&ʼs management)
Hayate Ogasawara(VELBED.):モデル Modeled by Hayate Ogasawara(VELBED.)
長谷川剛:文 Text by Tsuyoshi Hasegawa
加瀬友重:編集 Edited by Tomoshige Kase
多様化する“ビースト”
オーデマ ピゲの代表作として知られる「ロイヤル オーク」。1972年初出の革命的なパッケージを持つ同モデルは“最も高価なスティールウォッチ”と称され、ラグジュアリースポーツウォッチなるカテゴリーを創出した。そこから派生した「ロイヤル オーク オフショア」もまた、93年のデビュー時には大いに注目を浴びた。直径42mmのケースは当時かなりの大型であり、同じく大きなプッシュボタンやガードを備えていた。
原初となるロイヤル オークのデザインコードに比較してマッシブにアレンジされたこのスタイルは、“ビースト(野獣)”の異名を取った。そのエクストリームなルックスは当然ながら賛否両論を引き起こす。だが、このロイヤル オーク オフショアの登場がひとつの契機となり、エクストリームスポーツウォッチを楽しむ層が徐々に顕在化していったのだ。アーノルド・シュワルツェネッガーが映画「エンド・オブ・デイズ」の劇中で着用したことや、世界的なラッパー、ジェイ・Zのデビュー10周年を祝ったモデルのリリースなども追い風となり、厚手の八角形デザインを武器とする“ビースト”は、幅広い層の関心を引き寄せた。その後もロイヤル オーク オフショアは我が道を歩み続ける。98年にはチタン製、2004年にはカーボン製、08年にはセラミックス製モデルを打ち出すなど、大胆かつ意欲的にラインナップを広げていった。
このコレクションが順調に成熟していった期間、時計を身に着ける側の事情もまた、大きく変化したと言える。ビジネス用の腕時計といえば、以前はエレガントな薄型ドレスウォッチが定番だった。しかしながら近年は、軽い仕立てのジャケットに迫力あるスポーツウォッチを合わせるビジネスパーソンも増えてきている。そう、ドレスコードの緩和により多様化したスタイルに応える懐の深さも、ロイヤル オーク オフショアの見逃せない魅力なのである。
回転式のインナーベゼルで潜水時間を計測できる、300m防水仕様のダイバーズ。ブラックセラミックスの太枠ベゼルによる精悍さと、スモークディープレッドのメガタペストリー文字盤によるリッチな色味を兼備。自動巻き(Cal.4308)。32石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。18KWGケース(直径42mm、厚さ14.3mm)。300m防水。日本限定100本。984万5000円(税込み)。
公式ページ:https://www.audemarspiguet.com/com/ja/watch-collection/royal-oak-offshore/15720CN.OO.A002CA.02.html
ジャケット/23万1000円、ジェームスグロース。(問)グリニッジ ショールーム Tel.03-5774-1662。ニット/6万1600円、ジョン スメドレー。(問)リーミルズエージェンシー Tel.03-5784-1238
次世代の時計ファンから注目を集める新作が「ロイヤル オーク オフショア オートマティック」の43mmモデルだ。大径ケースを持ちつつ、ロイヤル オークの系譜であることを確かに感じさせる意匠は、幅広いオケージョンに対応してくれる。折目正しいスーツをまとったウィークデイから、上質なカシミヤのセーターで寛ぐ休日まで。つまり、昨今のトレンドとされる“クワイエットラグジュアリー”なスタイルにうってつけの1本なのだ。控えめなスモークブルーの色味は、若々しさと同時に穏やかで品格ある雰囲気を演出してくれる。
単に存在感を発揮するだけではなく、コーディネートに大人らしい色気をもたらしてくれるのもロイヤル オーク オフショアの魅力だ。例えば、レザーのライダーズジャケットを羽織ったラフな装い。合わせる腕時計はラギッドなミリタリーウォッチやパイロットウォッチが、これまでの常道だったと言えよう。だが新時代のウェルドレッサーには、新しいチョイスを提案したい。渋味のあるディープレッドの文字盤とホワイトゴールドケースを持つ、「ロイヤル オーク オフショア ダイバー」を合わせる。ワイルドさの中にリッチなテイストを忍ばせた、大人のカジュアルスタイルが完成するはずだ。
ご存じの通りロイヤル オークオフショアは、男性好みの大型ケースをまとってデビューした。しかし初出の3年後となる96年には、ふたつのレディースモデルが登場し、早い段階で一定の人気を獲得する。女性もまた“ワイルドスタイル”に潜在的な憧れを持っているという事実を、本シリーズが明らかにしたのである。以来レディースモデルも、折に触れて充実化が図られてきた。そして今を生きる女性に最適な要素を込めた新作が「ロイヤル オーク オフショア オートマティック」の37mmモデルだ。艶やかなグランドタペストリー文字盤はジュエリーのごとく輝き、グレーラバーストラップにはモザイク調の繊細な仕上げが施される。装いに華やかさを添えてくれるラグジュアリーピースだ。
気品と力強さを同時に求める人におすすめしたい1本。18Kピンクゴールドケースにグレーラバーコーティングを施したベゼルを配し、スタイリッシュかつ華やかな雰囲気をたたえる。自動巻き(Cal.5900)。29石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。18KPGケース(直径37mm、厚さ12.1mm)。50m防水。682万円(税込み)。
公式ページ:https://www.audemarspiguet.com/com/ja/watch-collection/royal-oak-offshore/77605OK.OO.A101CA.01.html
当初“ビースト”と呼ばれ、そのエクストリームな佇まいで人々の耳目を集めたロイヤル オーク オフショア。だが現在は、時代が追いつくかたちでラグジュアリースポーツウォッチの最先端に位置しているように思う。それは、比類のない機械精度や造形美をベースとし、多様化するニーズにマッチする個性を、色使いやディテールを駆使して具現化しているからだ。だからこそ、感度の高い人々から継続的な人気を得ているのである。単なる高級時計の枠を超え、マルチアイテムとしての牙まで備えた新たなる“ビースト”。この先も勢いを増していくに違いない。
時計作りの奥深い世界が楽しめる体験型施設へ
東京・原宿にある「AP LAB Tokyo」は、ゲームを通じてウォッチメイキングの世界や歴史が学べる体験型エデュテインメント施設。ゲームコーナーのほか、実際の時計職人による仕上げ工程など、リアルなものづくり体験が味わえるワークショップを併設。楽しみながら機械式時計への理解が深められる、唯一無二のテーマパークだ。
AP LAB Tokyo
〒150-0001
東京都渋谷区神宮前5-10-9
103-6633-7000
営業時間/11:00〜19:00
定休日/毎週火曜日
入場料/無料(予約優先)
下記専用サイトから予約可能
https://aplb.ch/g58k